あなたは朝、
いつも通り目覚まし時計の音で起こされます。
3LDKの19階のマンションのカーテン越しに
朝の陽ざしが刺し込んでいます。
寝起きのホットコーヒーを飲みながら、
ラベンダーの鉢を見つめています。
あれから花が増え、株分けをして2鉢になりました。
いつも通りネクタイを締め、仕事に出る用意をしています。
そのラベンダーの鉢は、あなたに取って大切なものです。
時間のねじれを超えて、愛おしい彼女に会える可能性を
秘めた花なのです。
勿論、そんな確証など、どこにもありません。
あなたが勝手に、そう思っているだけです。
今、自分が生活している世界と同じように、
彼女が生きている世界が、間違いなく存在している。
それが、現在なのか、過去なのか、未来なのか分かりません。
人に話せば間違いなく、狂ったと思われるでしょう。
話す必要もなく、信じてもらう必要もありません。
全てが自分の問題です。
問題は、
その別々の世界で、彼女とあなたが深く愛し合ってしまったことです。
あの森の、あの木の下で、偶然に彼女と出会ったことが
全ての始まりです。
愛してしまったのです。互いに!
純粋に愛し合ってしまいました。
「純愛」に別の世界とか、時間のずれなど関係ありません。
愛に理屈などないのです。
あなたは、彼女を純粋に心から愛してしまったのです。
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その彼女は、
自分の腹部の内臓に敏感で極度に感じる女性でした。
あの森で一人でそれをやっていたところに、あなたが
現れ、それを手伝ったのが始まりでした。
あなたが彼女に言われて、
木の棒を拾った時から、二人の時間が流れ始めたのです。
あなたは彼女の腹部の内臓の感触によって、自己に目覚め、
真の喜びを知り、彼女から滲みだす、優しさや、美しさに
純愛を見つけたのです。
ところが、時間のねじれは二人の愛を妨げて続け、
いくら愛おしくても、自由に会うことが出来ません。
それはあなたに取って耐えがたい苦痛でした。
愛する気持ちが強ければ強いほど、
その苦しみも、悲しみも、切なさも大きいものでした。
二人を強く結び付けている要因にはもう一つあります。
それは二人に共通する、腹部の内臓への思いです。
あなたは彼女の腹部の内臓を感じてしまい、
今まで知らなかった世界に足を踏み入れてしまったのです。
その神秘的な世界で、あなたは覚醒し、
どんなにあがいても、もがいても、
二度と、そこから戻る事が出来なくなってしまいました。
何故なら、それがあなた自身の本能であり、そこから生まれる
強い性への欲望だからです。
人間の本能を脳内で、消すことは不可能です。
彼女の内臓を直に感じて、あなたの本能は目覚めたのです。
あからさまに、
さらけ出され、引き出され、神秘的な力で動けなくされ、
脳内に粘りつかれ、甘~い感触で酔わされ、優しく、柔らかく、
強烈に、がんじがらめされて育てられたのです。短時間で!
彼女の腹部を強烈に責めたはずが、その内臓の感触は一瞬にして
あなたの脳細胞の1つ残らずに猛攻を掛け、二度と戻れない
あなたにしてしまいました。
あなたの本能が彼女の全てを愛してしまったのです。
彼女を愛する気持ちは勿論それだけではありません。
彼女の優しく、慈愛溢れる性格や、可愛さや、美しさが
あなたを虜にしてしまったのです。
彼女が持っている内臓の魅力は、あなたにとって
耐えがたい魅力であり、性への本能を呼び起こす
強烈で我慢できない衝撃的なものでした。
人間の腹部には、男女問わず消化器官としての
臓器が当然あります。
それは人間が生きていくための主に栄養摂取の
役割を果たす大切な臓器です。
ですが、そんな医学的な問題ではないのです。
彼女の内臓も、単なる人間の臓器です。単なる内臓!
分かり切ったことです。
ですが、そんな次元の問題ではないのです。
そんな単純なレベルのことではないのです。
彼女の内臓の感触が生み出す神秘的な力は、
それに感じるあなたの脳を激しく刺激し、
未だかつて体験したことのない、
強烈な興奮を呼び起こすものです。
それは説明など到底できるものではありません。
あなたは、悟っています。
彼女ほど、その魅力を持っている女性など
存在するはずがないことをです。
ですから、彼女をどんなにしても、
探し出し一緒にその喜びを分かち合いたいのです。
あなたにとって一番大切な人!
それは、彼女です。
ですが、
あなたは、彼女の名前すら知らない。
一言 「好きだ!」とも言っていない。
あの森で、あの木の下で、二人で過ごした、
おそらく、ほんの一時の時間かもしれません。
ですが、それが、あなたに取って人生の全てなのです。
あれから、2年が過ぎました。
あなたの世界の時間で!
あの木の下で、彼女と過ごした時間が鮮明に頭の中に
浮かび上がってきます。
あなたは彼女の下腹部を足で踏みつぶし、
彼女の内臓をめちゃめちゃに責めました。
あの時、
まだ納まらない荒い息の中で、
彼女は俺の胸の中で小さな声で言いました。
「私は幸せです」
「あなたに会えて良かった」
「いつまでも離さないでください」
愛おしさと、可愛さで、
あなたの胸に熱い物が込み上げてきました。
「じ~ん」と燃える炎の玉が突き上げて来たのです。
あなたは涙をこらえながら、何度も首を縦に振って、
笑顔で彼女に優しく話しました。
「ああ! 離すもんか!」
「ず~っと 一緒だよ!」
「絶対に離さないから!」
「例え君がどこにいても、必ず会いに行くからね!」
「例え、時間を超えてでも!」
彼女は幸せそうに、、、
「本当! 嬉しい!」
「じゃあ 指切りして!」
そう言って小さな左小指を出しました。
あなたも左小指を出し、指を重ねて指切りをしました。
「約束」
指切りで彼女と約束をしたのです。
絶体はなさないと!
どこに居ても必ず見つけて、会いに行くと!
時間を超えてでも!
彼女の嬉しそうな顔が浮かんできます。
幸せだと言って涙を流し抱きついてきた、
その愛おしい彼女の姿が浮かんできます。
ああ~ 我慢が出来ない!
あの輝く瞳に涙を浮かべた、
愛らしい彼女の顔が浮かんできます。
あれからもう2年が過ぎ、彼女に会いたくて、会いたくて、
休み毎に、又、時間を作っては、
あらゆるところへ車を走らせ、必死で
あの森を探し求め、彼女を探し続けて来ました。
ネットで検索し、地図やガイドブックを塗りつぶし、
行先で人に聞き、自分の足で色んな場所を歩き回りました。
それでも、あの神社や森は見つからないのです。
ラベンダーを枯らさず大切に育てながら、
片時も彼女のことを、忘れたことはありません。
ですが、自分ではどうにもならない、
理解しがたい時間のねじれが、二人の間に壁を作り、
その愛に大きな試練と苦しみを与え続けているのです。
打ちひしがれそうになりながらも、必死で彼女を探し求め
又、一方で自分の世界を懸命に生きてきたのです。
絶体に彼女をあきらめない! あきらめられない!
俺には彼女以外にはいない!
愛おしい! 愛している!
彼女と一緒になるために、自分を磨こう!
社会的にも立派になろう!
経済的にも地位も人格的にも全て自分を高めて、
人に尊敬される立派な人間になろう!
そして、
彼女にふさわしい人間になって、必ず一緒になる!
彼女にいつの日か必ず辿り着いて、
この思いを、この愛を告白したい!
この2年間、あなたは、がむしゃらに勉強をし、仕事をし、
全てのことに前向きに取り組んできました。
必死で頑張ってきたのです。
必ずいつかは彼女に辿り着くことを信じて!
そして、この2年間の努力が実を結び
今、あなたは驚くほどの成功を成し遂げました。
世間でいう成功者です。
誰からも、若き成功者と認められているでしょう。
地位や名誉やお金も手に入れました。
起業を成し遂げ数店舗の美術関係の店も出し
その若きオーナーとして活躍しています。
以前のあなたとは、まるで別人です。
ただ、
彼女にふさわしい人間になろうと、自分を磨き
頑張って来ただけです。その結果、
大きな運にも恵まれて、努力の結果が今のあなたを作り上げました。
ですが、あなたには分かっています。
彼女は今の俺の社会的な立場など決して問題にしていない!
そんなものどうでもいいに決まっている。
彼女にとって一般世間の価値など無意味です。
言われなくても彼女の心はあなたには読めます。
彼女はただ、
二人で強く愛し合い、腹部に寄せる思いを共有し、
その喜びを分かち合い、育てていきたいだけ。
彼女はそんな人だ!
だが、例えそだとしても、俺の心は社会的に立派になって、
そんな自分で彼女に会いたいだけなのだ!
ああ~ 彼女に会いたい!
この腕に彼女を抱きしめて、そして彼女の腹部を
思いっきり感じたい! その喜びを二人で共有したい。
神様!
俺に取って一番大切なもの!
それは彼女以外にはありません。
何とか彼女に会わせてください!
それが自分に取って、最高の幸せなのです!
そのために必死で頑張ってきました。
彼女が俺を頑張らせてくれました!
愛しい彼女の姿が、どんな時でも頭の中に浮かんできます。
そして、彼女の腹部のあの強烈なまでの感触が思い出されて、
増々、興奮するのです。
それは、日を追うごとに強くなり、
大きく成長していくのです。
あなたは、机の引き出しからピンクのハンカチを取り出します。
そのハンカチからは彼女の生の匂いが漂って来ます。
不思議なことに、2年経っても、湿っぽく汗を含んでいます。
あの時の、彼女の汗がそのままハンカチに残っているのです。
赤い点も色褪せません。赤いままです。
あの森のままの状態です。
ハンカチは時間が経たないのです。
時間がそのまま止まっているのです。
理由など考えるつもりはもうとうありません。
考えても、そんなの分かるはずないし、
実際がそうなのだから仕方ありません。
ピンクのハンカチから彼女の体の甘~い匂いが
あの時と同じように漂ってきます。
彼女がピンクのハンカチで時間をかけて丁寧に、
全身の汗を拭きとって
あなたに持ち帰らせた、そのままの状態なのです。
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人には話せないことですが、あなたはそのハンカチに
顔を埋め、その匂いを嗅いで出勤するのが日課なのです。
ピンクのハンカチには彼女の
顔やうなじ首筋、肩や二の腕、胸の全て、ブラの内側、
背中、腹部の広範囲、下腹部の大量の汗が染み込んでいます。
その生々しい甘~い匂いが、時を超えて強烈にあなたを刺激し
極度に興奮させます。
又、それが、あなたの生活での、全ての原動力と
なっているのです。
あの時、彼女は今の俺のことを予想して、わざと自分の
体臭を持ち帰らせたのだろうか?
考えても分かるはずないな、、、、!
よし! 行くか!
あなたはピンクのハンカチをスーツの内ポケットに
入れます。
この2年間で初めてのことです。
いつもなら、机の引き出しに大切に戻すのですが、
何故か今日に限っては身に着けます。
そうしたかったのです。彼女と一緒に居たかった!
あなたは原宿の店舗に向かっています。
3店舗目の出店準備です。
まだ店舗としては形が整っていません。
2交代制のパートを雇うため、
今日は面接を行うことになっています。
1店舗、2店舗は池袋、新宿で経営はまずまず順調です。
実際に自分で店舗を出すのは原宿店が初めてです。
1、2店舗については、以前オーナーがいたのですが、
あなたがそこでバイト的に働いていた時、その働きぶりを見て、
気に入られたのか、
全ての経営権と店の所有権を譲られ、オーナーは
余生を夫婦でのんびりと暮らすとのことで、
うまくやってね~って
ハワイに移住してしまったのです。
もう帰りません。
あなたは、えーーー!と思いましたが、実質2つの店を簡単に
もらい受けた形になりました。
勿論、必死で頑張って経営を維持し、更に発展させてきました。
何から何まで全て自分でやり、その苦労は大変なものでした。
勉強も必死でやりました。
そんな中でも彼女のことを片時も忘れたことはありません。
彼女に会うことだけを願って頑張ってきたのです。
あなたは、今日の面接のことを考えながら、
横断歩道の赤信号待ちをしています。
信号が青に変わり、あなたは歩き始めました。
信号は「青」です。
その時です。
キューーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
と言う車のブレーキ音が近づいてきます。
あ~
タ タ タ
ドン!
あなたは横断歩道の中央に飛ばされ倒れました。
飛ばされた衝撃で左側頭部を地面で打ち付け、
意識がもうろうとしています。
救急車の音が聞こえます。だれか白いヘルメットをかぶった
人が上から話しかけているようです。
「分かりますか?」
「どこか痛みますか?」
「話せますか?」
あなたは、何が起きたのか分からないまま、
目の前が、ぼ~っと白くかすんできて、
体が谷の底に落ちていくようでした。
だんだん意識が遠くへ遠くへ吸い込まれていきました。
ゴメンよ!
僕は君との約束を果たせなかった、、、、、
でも、
一言だけ君に言いたかった!
夢と幻想の森