あなたは原宿の美術店の面接に先を急いでいます。
原宿は、あなたに取って3店舗目ですが、
全てはこれからという段階です。

何といっても人材は重要なポイントです。
あなたは、面接のことで頭がいっぱいです。

 

どんな人なんだろう?
お客様に笑顔で応えてくれる人だったらいいのに。。。
明るい性格の人がいいな、、、、
美術品に興味がある人なのだろうか?
絵が好きだったらいいのにな~、、、、、
あなたの店は絵が中心です。

時間を気にしながら、少し、いら付きながら、
信号待ちをしています。

原宿の横断歩道の信号が青になりました。

 

よし! 行こう!

待たせるわけにはいかない!

先を急ぎます。

と、その時、ブレーキ音が聞こえました。

同時に後から、ドン!と何かに突き飛ばされた気がして、
その勢いで、前方に飛ばされる錯覚を覚えました。

単なる錯覚です。
ですが、一瞬、
目の前に、木々や岩が見えたように思いました。

??

なんだ今の、、、?
気のせいか、、、、!
ちょっぴり疲れ気味だもんな~、、、

ふう~ 何やってんだ俺!

急いでいるせいで、
足がふらつき、つまづきそうになったのか、、、。

さあ、急ごう!
そのまま、
横断歩道を足早に渡り切り、店へ向かって急ぎます。

 

え~っと、、、、今日の面接の人の名前は、、、、?

名前、、、、なまえは、、、、なんだっけ?

上着の左内ポケットから手帳を出して確認します。
確認したのはいいのですが、

あれ!  名刺入れがないや!

確かにスーツの左内ポケットに、入れたはずなのに、、、、

ない、、、、、ポケットを全て探しますが、
ありません。

ないや! なんで?

・・・

あ! さっきの横断歩道で、、、、、つまづきかけた時に
落としたのかもしれない、、、、きっとそうだ!
名刺がないとまずいな、、、、、!

そう思って、
あなたは、先ほどの横断歩道へ引き返します。
歩道を渡り切る手前の歩道の上に、
黒の名刺入れが落ちているのを発見しました。

 

あ、 あれだ!
あった!  俺の名刺入れ!

路上の名刺入れに手を伸ばして拾おうとすると、

はあ~?  なにこれ?

ハンカチ

名刺入れのすぐ横に、
ピンクのハンカチがくっ付く様に並んで落ちています。

信号が赤になり、自動車の往来が始ました。
あなたは、慌てて、名刺入れとハンカチを拾いました。
自然にそうなってしまったのです。
名刺入れとピンクのハンカチを、とにかく左内ポケットに入れ、

原宿店の面接へと急ぎました。

面接は終わり、採用することで決まりました。




あなたは、3LDKのマンションに帰ってきました。

あ~ 今日も1日頑張ったな、、、、

面接の後、原宿店のオープンまでの準備を進め、
その後、直ぐに池袋店と新宿店を周り、
ホテルを3件営業で周り、更に仕入れ先も回りました。

その日、ホテルの大きな受注が決まりました。
前から話をしていたビッグサイズの絵画でした。

やったぞ!
でも、これから納品までが大変だ!
頑張らなくっちゃ、、、、!

原宿店の面接の人も、感じのよさそうな人だし、
直ぐにでも来てもらおう。
色々勉強もしてもらわなくちゃな!

19階のマンションの窓越しに東京の街明かりが見えます。




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今日は少し疲れたかな~、、、、
遠くの街明かりを見ながら思います、
あの一つ一つの明かりの下で、
みんな色々な人生を送っているんだろうな~
楽しい人生なんだろうか? そうでないかもしれないな。

でも、
俺はラッキーな方かもしれない、、、、

この3年間、必死で頑張ってきたし、店も3店舗持つことが
できたし、きっと幸せなんだろうな~

でも、俺って今、なんでこんなに頑張ってるのだろう、、、、?
店を大きくしていくため?


・・・

でも、なぜ?
大きくしてどうなるのだろう?
お金がいっぱい貯まるから、、、、、、?

ふ~ん、、、、、お金か~

お金の大切さは十分に分かっているつもりだ!
お金がないと生活していけないし、
好きなこともできないし、欲しい物も買えないし、
店だってやっていけないし、将来の不安だってある。

それに、このマンションだって、服だって、
食べ物だって、何もかもが全てはお金がないと手に入らない。

だから俺は、お金を稼ぐために頑張っているのだろう。多分。


ただ、思うに、

金欠生活のバイトのあの頃と、今と何が違ってるのだろうか。
今は、多くの知り合いや新しい友人も出来た。
以前とは比較にならない程に多いだろう、、、、
でも、心を許せる友人は結局、昔の悪友たちだけだ。
女性関係も、その気になれば色々と、、楽しいのかもしれない。

悪友からも良く言われることは、
彼女を作れば楽しいし、考え方も変わるかもしれないし、
今の俺ただったら比較的簡単に出来るそうなので、
作れと言うのです。
そして、その彼女の友達を何人か紹介しろと言うのです。
ですが、どうしても、そんな気になれないのです。
全くその気がない!

 

理由は、仕事が忙し過ぎてでしょうが、でも
何かが違うような気がするのです。

一生懸命に仕事に取り組むのは、お金を稼ぐためですが、
何かスッキリしない、自分でも分からない、
別のことが、あるような気がするのです。

 
自分が、
いつも何かを追い求めている様な気がしているのです。
何かを。。。。。いつからだろう?

それが一体、何なのか?、どこなのか? 誰なのか?

いくら考えても分からないのです。

分からない?

分からないけど、、、、、、、、探している。

それは、きっと俺にとって、大切なもの。

大切にしたいもの。忘れてはいけないもの。

でも、それが何なのか分からない。。。。。。

・・・

窓辺のカーテンの下のラベンダー2鉢にコップで水をやります。
水はやり過ぎると良くないのは知っています。

あなたには、どうしても分からないことがありました。
何故、自分がそのラベンダーを育てているのかです。


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不思議だな~ 、、、、 なんでだろう?

自分では理解できないことです。
友達の話によると、このマンションに引っ越す前から
大切に育てていたというのです。

俺、
花なんて興味あったけ? ないような、あるような、、、

友達の話では、人間は自分では理解できないことを、
習慣的にやるそうです。
友達の場合は、スロットで負けると分かっていても
週に何度か必ずやるそうです。
損すると分かってて、
何でやるのか自分でも理解できないと、
言っていました。

なるほど、そんなものかと納得したのですが、
どうもスッキリしません。

 

他にも不思議なことがあるのです。
あなたの机の引き出しの中にある、地図やガイドブックや
神社の案内ブックが、赤鉛筆で塗り潰されていることです。

俺、以前にどこか知らないけど、
行きたいところがあって、その場所を探していたんだろうか?
いくら考えても分かりません。
覚えがないのです。
ただ、どこかの場所を探していたことは間違いないのです。
どこだろう?
あれだけ赤印が付いてても、探し切れなかった場所とは。。。
ガイドブックに挟まれている落ち葉から、
どこかの山なのかもしれない?

分からない。理解できないことです。

 

友達の言う、スロットとは違う気がするような、、、
理解できないことです。


あっ!

そうだ、、、 あのピンクのハンカチ! 忘れてた!
スーツの左内ポケットに名刺入れと一緒に入れたっけ、、、

クローゼットのスーツの内ポケットに手を入れ、
ハンカチを取り出し、机に向かいます。

ピンクのハンカチか~

女物だ、、、、
女のハンカチを拾ってしまった。

俺って、どうかしてる?
何でそんなもの拾ったのだろう?
名刺入れと並んであったとしても、何も拾うことないじゃん!
何も考えずに、つい拾ってしまった。
理解できない! これもスロットの原理か~

あれ? このハンカチ、湿っぽいや、、、
少し、顔を近づけてみます。
何だか汗の匂いが、、、、、?、、、、します。

バカ! 俺、何やってるのよ、、、、、?

急に椅子を立ち上がり、窓辺に行きます。
ラベンダーの花がキレイ! そう思いました。
そうか、
俺はこのラベンダーの花で、心が癒されている。
だから、今まで大切に育てて来たのか、、、、!
きっとそうなんだ、、、、!

 

花で心が癒される!
だったら絵画と同じじゃないか、、、、、
絵画でも花を描いている作品がいっぱいある!
巨匠の描いた花の作品は、花の魅力を伝えようとしている。
描かれた花の魅力で人の心を魅了しているのだ。
色んな事が頭の中を過っていきます。


 

あなたは、部屋の明かりを絞り、
ゆっくりと室内を歩き続けます。
何故か落ち着きません。そわそわ、、、、、
気になるのです。

 

気になるものがあるのです。

あなたの机の上にあるものです。
心がどうしても、
そこへと行ってしまうのです。
何故なのか分かりません。
ピンクのハンカチが気になって仕方がありません。

女物のハンカチ、、、、、汗の匂い、、、、

俺って何考えてる?
バカバカしい、、、、俺はどうかしてる!
自分を戒めますが、押さえ切れません!

あのピンクのハンカチは湿っぽい、、、、、
きっと女の汗が染み込んでいるのだろう。
汗で汚れた女のハンカチなんて、、、汚らしい!
直ぐ処分しよう! よし!


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机の横にあるゴミ箱に捨てるつもりで、歩いていきます。
ハンカチを掴みます。

何故か、捨てることが出来ません。
自分でもビックリするのですが、
ハンカチに顔をくっ付けて大きく鼻から息を吸い込みます。

あなたの男の本能がそうさせたのでしょうか?

すると、ハンカチから汗の匂いに混じって、
甘~い匂いが、あなたを包み込みます。

ああああああああああああああああああああ~

・・・

あ~

これは、、、、

この匂いは、、、、、どこかで?

・・・

確かに、、、、どこかで、、、、、

一瞬、目の前が揺れて、倒れそうになります。

なんなんだ?

・・・

捨てれない!

できない!

椅子に座り、ハンカチを広げます。
甘酸っぱい匂いが、あなたの脳の中にしみ込んでいき、
それが脳の細胞の隅々まで広がって浸透していきます。

不思議な、、汗の匂い、、、女性の体の匂い、、、

あま~い 香りが、、、、ゆっくりと、強烈に

容赦なく、襲い掛かって脳に突き刺さります。
脳細胞が激しく痙攣を起こして、

一瞬、目の前に白い世界が広がっていきます。
白がパット開けて、その向こうに木々や岩のある
森が見えた気がしました。

ハッ!

今の何?

何が起きたんだ?
一体、どうなってる!

俺は、疲れている! 寝よう! 眠った方がいい!




夢と幻想の森