コスモス畑から3日後
私は小学5年生の野々村美沙10歳です。
ところが、体の中は高2の16歳なのです。
つまり見た目の体は小5で中身は高2なのです。
高2の私がコスモス畑で小2の頃の私の体の中に
入ってしまったのです。
高2の私が小5の私にタイムスリップしたため、
小5の記憶は6年前のものです。
理由?
そんなの分かりません。
分かれば私が知りたいです。
それに理由を考えている暇はありません。
物事がどんどん流れて行くので、現状を受け入れて
やっていくしかないのです。
だって、理由も分からないのに、
16歳の自分に戻る方法なんて分かるはずがありません。
今は、それどころではないのです。
私は、学校でそれまで無関係だと思ってた「いじめの問題」に直面してて、
それに完全に巻き込まれているのです。
私は数日前には、花ちゃんと呼ばれるコミ症で
成績もあまり良くない、とてもおとなしい存在でした。
ところが、中身が高2になってからは、あるきっかけで
自分でも信じられないような行動をとるようになりました。
それは高2の時でもなかった荒っぽい話し方や性格でした。
これって一体なんなんでしょう?
また、
あるきっかけとは、偶然にですが、同じクラスの男子が
6年生にいじめられているのを見てからのことです。
そしてそのことで、私のお兄ちゃんに相談したところ
短時間だったのですが、そのことで自分の何かが大きく
変わったように思えます。
それは、今までの自分から一歩抜け出したい!
そういった思いからでした。
ですが、お兄ちゃんが言ったように、私にとっては
想像をはるかに超える勇気のいることでした。
ですが、
お兄ちゃんの私を信じているという言葉で前に一歩
踏み出すことが出来たのです。
登校時、学校の近くで美香ちゃんと一緒になりました。
あっ! 美香ちゃん!
その髪型! ツインテールだ~
美香ちゃんが嬉しそうにその場でくるりと回りました。
わ~ 可愛い、、、でも、ど~しちゃったの?
うん!
私も美沙ちゃんと同じ髪型で、
美沙ちゃんのようになりたいな~って思って、、、
え~? 私のようにって、、、どんな感じかな~?
うん! 小5なのに高校生みたいにしっかりしてて
勇気もあって、、、、強くって、、、、
一瞬私は ドキッ!としました
高校生みたいに!
美香ちゃんは何かを感じてるってわけ~
ひょっとしてこの子にはバレてるとか、、、
そんなはずないわ! あるわけないよね。。。
私が高2だって分かりっこないか~、、!
それにね、セーラムーンーはツインテールでしょう。。。だから
そ~言って照れくさそうに笑いました。
校門のところまで来ると例の女子5人が私たちを待っていました。
5人は、美香ちゃんの姿を見ると一瞬、白けた顔をしました。
直ぐに、佳奈ちゃんが私に笑顔で話しかけて来ました。
花ちゃん!
私たち、これから花ちゃんの事を、美沙ちゃんって呼んでもいい?
うん! いいよ。。。。 それが、私の名前だから、、、
5人は私のことを美沙ちゃんって呼ぶことになりました。
また、今までの私に対しての感じが明らかに違っています。
おそらく佳奈ちゃんは、自分の兄のみっ君から昨日の出来事を
聞いたのでしょう。
今はそのみっ君と私はダチなのです。
佳奈ちゃんがこの女子5人組のリーダーです。
だから、みんな佳奈ちゃんに従っているだけかもしれません。
リーダーが変わればみんなも変わっちゃう! なのでしょうか?
佳奈ちゃんが言います。
ねえ~ 美沙ちゃん!
私たちこれからも親友でいようね。。。
私は直ぐには返事をしませんでした。
私は何歩か歩いて佳奈ちゃんの正面に立ちました。
そして、
佳奈ちゃんを真剣に見つめて、そして言いました。
佳奈ちゃん!
ここにいる美香ちゃんは私の大切な親友なの!
だから、これからはもう悪戯なんてしないって約束して!
私は佳奈ちゃんとも親友になりたいし、みんなともそう。
・・・ 少し沈黙が続きます。。。。。
・・・ 佳奈ちゃんはうつむいています。
・・・ しくしく、、、
・・・ 佳奈ちゃんが泣きだしました。
わ~ん、わ~ん、わ~ん、、、、、、ごめんなさい!
ごめんなさい。。。美香ちゃん。。。。。ゴメンナサイ。。
今まで、美香ちゃんにいっぱい悪戯しちゃって、、、
私、本当にバカだったわ。。。。ゴメンナサイ、、許して美香ちゃん。
そ~言うと、佳奈ちゃんは美香ちゃんの前に来て頭を下げました。
すると他の子も同じように涙ぐんで、
ごめんなさいと言って美香ちゃんを囲みました。
美香ちゃんは、みんなに言いました。
佳奈ちゃん! みんな! もう泣かないで、
私、今日が最高に嬉しいわ。。。。
だって、5人も仲良しのお友達が出来ちゃったもん。
私はめちゃめちゃ嬉しくなって言いました。
じゃあ、今日から私たちはみんな親友だ~
ダチだーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
私は右手を空に挙げて、やった~!
よ~し、、、みんな~! 夕日に向かって走るぞ~ いくぞ~
私は、教室に向かって走って行きました。
みんなは、きょとんとした顔でそれを見ていましたが、
じゃあ私たちも美沙ちゃんの後を走ろっか~あ、、、うん!
よ~し! じゃあ、私たちも走るぞ~ わ~あ、、、
6人が美沙の後を追っかけて全速で走って行きました。
走りながら佳奈ちゃんが美香ちゃんに聞きます。
今は朝だよね、夕日ってどこ? (佳奈)
私にも分かんない、、、(美香)
ケラケラケラケラ、、、(みんなが笑っています)
校門の扉の前で伊藤先生がそんな様子を笑顔で見ていました。
教室に入ると、ビックリです。
井上君が、いつものダチの男子に囲まれています。
やっぱな~
俺がいね~とクラス全然面白くね~もんな!
ガヤガヤといつも通り井上君は男子とじゃれ合っています。
その合間を見て、
照れくさそうにチラッ!チラッ!とこちらを見ています。
私は美香ちゃんに言いました。
美香ちゃんのおかげで井上君出て来たわね!
よかった~ 美香ちゃん! 美香ちゃんの思いが伝わったね!
お昼休みです。
6年の河原せんべいとみっ君が慌てて教室に飛び込んで来ました。
かなり息を切らせています。
河原せんべいが、私の机に両手を掛けて、肩で息をしながら言いました。
おい! 美沙! 大変だ!
・・・ 声が出でいません、、、息がしんどそう、、、、
・・・ 佳奈ちゃんたちが直ぐに寄ってきます。
・・・ 井上君たちも寄ってきます。
・・・ 佳奈ちゃんのお兄ちゃんがみっ君です。
佳奈ちゃんが言います、お兄ちゃん、一体ど~したって言うの?
ここは5年C組だよ。
なんでここに居るのよ?
クラスの皆もこちらに集まってきます。
みんなが輪になって河原せんべいの次の言葉を待っています。
河原せんべいは言います。
あいつが! あいつが! やられちまった!
はあ~ あいつ~ (私)
あいつって誰?
・・・ ふ~ん、、、、名前は?
とにかくピーマンみたいな顔の奴!
俺たちをいじめてたけど、昨日ダチになった、あいつ!
ああ、ピーマンか~ 、、、名前は今井健介って言うのよ。。。
で、そのピーマンがどうしたの?
だから、やられちまったんだってば!
昨日やられちまったんだ!
美沙! ピーマンがやられたんだ!
ピーマンがやられた!
ピーマンが、、、、、、
バシッ! 机を叩きます。
こら~ その次を言えーーーーーーーえ!(少し大きめな声で)
あっ! イケナイ、、、、みんなが注目してる。。。
ピーマンがフクロにされて入院しちまったんだ!
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!(私は立ち上がりました)
ピーマンがフクロにーーーーーーーーい!
入院したーーーーーーーーーーーーーーあ!
どうしてなの? 理由は? なんでなの?
早く言いなよ、何故なのよ、、、、、?
ああ~ なんでも、昨日、美沙とやり合って、
その後の事らしんだけど、、、
あの時、お前にやられて逃げちまったピーマンの連れ5人が
南高の空手部5~6人に捕まって、いじめられててさ、
ピーマンはそれを助けようとしてフクロにされちまったらしいんだ!
えーーーーーーーーーーーーえ! それって犯罪じゃん!
でも、ピーマンは一人で転んだって言い張っててさ、
その連中のことは何も話さないらしんだ。。。。
おい!河原せんべい!
お前! どこからそんなことを聞き出したんだ?
ああ、、、
ピーマンが助けた、あいつのダチから聞いたんだ。
昨夜、俺が塾の帰りにそのダチの1人に偶然に会ってさ、
あいつ、いじめは良くないから止めろって何度も言ってたらしい。。
で、自分が一人フクロにされたんだって言ってた。
近くの北沢病院らしい。
おい! 美沙! ど~する?
決まってるでしょう!
私たちは、あいつの本当のダチになったんでしょう。。。
だったら、お見舞いに行くわ!
今日、学校が終わって病院へ行く!
おい! 美沙、俺もついて行っていいか?
私たちもいい?
うん!
ピーマンの奴! いじめは良くないと言って止めに入ったのか~。
あいつ、、、分かってくれたんだわ。
放課後です。
コスモス畑に沿った道を小学生たちがランドセルを背負って
歩いています。
美沙、美香、河原せんべいたち3人、佳奈たち5人の合計10人です。
体の大きい河原せんべいが胸を張って先頭を歩きます。
その後をみっ君ともう一人のダチゆっ君がくっ付いて歩きます。
その後を私や美香ちゃんや佳奈ちゃんたちが入り乱れて歩きます。
佳奈ちゃんが言います。
あいつね(河原せんべ)美沙ちゃんのこと好きなんだ!
あいつのあんな顔、初めてだよ。。。。ね、うん! こそこそ、、
ホントだ、嬉しそう、、間違いないわ。。うん! 絶体だよネ、、、
前と違って意外とカッコイイじゃん! そっかな~、、、こそこそ、、
で、本当に頼りになるの~ ふ~ん? 少し頼りなさそう、、、
私は言いました。
河原せんべい! ちょっと待って。
みんな~ ピーマンのお見舞いに花を持って行かない!
あそこにあるコスモスの花!
そう言って、皆でコスモス畑に走って行きました。
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
いっぱいの花がある、、、、キレイ、、、ホントだ、、、
ガヤガヤ、、、、クスクス、、がやがや、、、、ケラケラ、、、
コスモスの花を皆それぞれに摘んでハンカチにいっぱい包みました。
わ~ キレイ! あいつ喜ぶかな~?
私はその時ふと思いました。
コスモスさん! 私はこれからど~なっちゃうの?
本音はね、心配で不安がいっぱいなの。。。
・・・ 、、、
私がピンクの花を摘もうとすると、横から手が伸びて
その花を摘んで私に渡してくれました。
河原せんべいです。
一瞬、・・・え?
ありがとう、、、にこにこ、、、、
(私は高2なのに小6のガキに照れちゃってる、、、)
河原せんべい! お前! 顔に似合わずいいとこあるじゃんか~
そ~言って、肩をドンと叩きました。
痛てーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
皆がケラケラと笑いました。
私と一緒にみんなが居てくれる。協力してくれてる。
もう私一人じゃあないんだよね。
お兄ちゃん、これでいいんだよね!
自分一人じゃ出来ないこともあるって言ったわね。
皆に分かってもらって協力してもらうんだよね。
お兄ちゃんは私を信じているんだよね。。。
私、わたし、頑張ってみる。
病室にて(3階の個室305号室)
ノックをすると女の人の声がしたのでドアを開けると、
中からとっても上品なお母さんらしき人が私たちを迎えてくれました。
病室の奥にはお父さんが座っていました。
そのお母さんが言いました。
お友達のお見舞いなの?
じゃあ 病室を間違っているみたい?
この部屋に居るのは小学生ではないんですよ。
内の子は中学生なんです。
私はお母さんにハッキリと言いました。
あの~
私たちは、今井健介さんのお見舞いに来ました。
お怪我が心配で皆で来ました。どうか会わせてください。
お母さんはビックリした様子で、
部屋の中に居たお父さんを呼びました。
お父さ~ん! ちょっと、ちょっと来て下さい。
厳しい顔のお父さんが私たちを見て、
お母さんよりも、もっとめちゃめちゃビックリした様子です。
私たち10人はみ~んな部屋に入れてもらい
ランドセルを降ろしました。
そんな私たちの、あどけない仕草を両親は、黙ったままで
顔を見合わせて見ています。
私たちは、それぞれの手に持った赤白ピンクのコスモスの花を
お母さんに渡しました。
これはさっき、私たちが皆でコスモス畑で摘んで来た花です。
どうか生けてあげてください。
、、、あ、あ、はい! それじゃあ、、、、
お母さんは10人の持っているコスモスの花を受け取って
大きめの花瓶にさしました。
ま~ キレイ! みなさん、本当にありがとう。。。
そう言ってニッコリと笑いました。
お父さんが、何やら不思議な顔で私たちに聞きました。
あの~ みんな、、、、聞いていいかな~ぁ、、、
みんなは、内の健介とは、一体どんな関係って言うか~
その~ 、、、、
ダチです。(しまったー! 頭ポンポン)(私)
お友達です。
とっても仲良しのお友達です。入院のことを今日学校で知って
直ぐに来ました。
へえ~ 君たちと健介が遊ぶことがあるの?
はい!
昨日も一緒に遊んでもらいました。ね、美香ちゃん、うん!(私)
俺なんてしっかり頭を鍛えてくれてるもんね~。(河原せんべい)
私は私とお兄ちゃんまで仲良くしてもらってるよ。(佳奈)
そのお兄ちゃんってのが俺で~す。いえ、僕です。(みっ君)
美香ちゃんやみんながピーマンに手を振っています。
あのね、健兄ちゃんは弱い子にとっても優しんです。(私)
ね! みんな! うん、 うん! だからみんな大好き、、、
それで、怪我はど~なんですか。(私)
お母さんの話だと、
ゲガは全然何ともなくって、ただ頭に微かな
打撲が有るので、念のために検査入院をして、
何もなければ、明日退院予定だとのことです。
お母さんが言いました。
でもね~ 驚きましたよ~。。。 ねえあなた
まさか、
健介にこんな可愛いお友達がいっぱいいたなんて、、、
そう言って少し涙ぐんで目に手を当てました。
あなた、私たちが間違っていたようですね。
う? うん! そ~みたいだ! 悪かったな健介、許してくれ!
お父さんは、てっきりお前がいじめなんかしてるんじゃないかと
心配してたんだ。
本当にすまん! 悪かった!
みんな、本当に可愛い子ばっかしだこと。。。。
この飴食べる?
うん!
お母さんが缶に入った飴を出してくれました。
すると、みんなそれを我先とばかり手で掴みました。
佳奈ちゃんが言います。
お兄ちゃん、みんな1個ずつなんだからね、、
今2個取ったでしょう。。。見てたんだから、、、
お母さんが笑いながら、
いいですよ、2個でも3個でも好きなだけ取っていいんですよ。
・・・ なんだこれ、、ホントにガキの集団です。
・・・ あ~ 私もガキなんだ~ 飴もらおっと、、
じゃあ私たちは少し詰め所まで行ってきますから、
ゆっくりとお話ししていってね。うん!
そ~言ってお父さんとお母さんは部屋を出ていきました。
私はお父さんが座っていた椅子に座りました。
ピーマンを見つめました。
・・・
ピーマンが言います。
美沙! みんな! 来てくれたのか! 悪いな!
勿論だよ、ダチだからな!
昨日あそこで、言ったろ~
本当のダチになってやってもしいって。。。
もうお前と私たちはダチだ。あの時からな。
ダチが痛い思いしてる時にお見舞いに来るのは当然だろ~
で、一体何があったんだよ!
話したくないって言ってるそうじゃんか、訳があるんだろう?
言わなきゃ解決しね~ぞ!
だから全て私たちダチに話してみろ!
・・・
・・・ 迷っている様子です。
・・・
・・・ 美沙を巻き込みたくないんだ。。。
・・・ だから、、、
・・・
・・・ 今回は、、、
・・・
・・・ 、、
こらーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
(皆がビックリして飛び上がりました。)
何をウジウジしてんだよ!
話せって言ってるだろ~
いいか! ピーマン!
だまりん子は卑怯もんだ!
黙ってても何の解決なんてしね~んだよ。
増々状況が悪くなるばっかしなんだぞ!
お前は、昨日のあの時からもう前に1歩踏み出した。
お前は変わったんだ!
その証拠が知りたいか?
見ろ!
ここに居るのは全てお前のダチだ!
本当のダチは、いつだって側にいるもんだなんだ。
みんな、
お前のことを心配してここに来ているんだぞ。
これが証拠だ!
思い切ってダチには本当のことを言ってみろ!
美沙!
なんだ!
俺はお前を傷付けたくないんだ、、、、、だから、、
バシッーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
ピーマンの肩を叩きました。
イテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
恰好つけてんじゃね~ バカ!
お前はただ人のせいにしてるだけなんだよ!
そうして、自分で納得したいだけなんだ!
解決方法は考えれば必ずある。
みんなで考えるんだ!
だから、勇気をもって隠さず言ってみろ!
・・・ まだ迷っている様子です。。。
・・・
ピーマン! お前!誰かをかばってるだろう?
だから本当の事が言えないんだろう?
でもな、それってかばってることにならね~!
何度も言うけど、増々悪くなっていくばっかしなんだ。。。
解決にはならない!
美沙!
今回は相手が悪すぎるんだ!
いくらお前でも相手が悪い! だから、、、、 俺は、、
俺はお前を失いたくない!
傷つけたくない!
・・・
そうか、ダチに本当のことが話せないのか。
だったら、もうダチじゃあないってことなんだな?
待て! そ~じゃない!
・・・
じゃあ話してみろ!
・・・
・・・ じ、
実は、昨日あの後、
南校の空手部の連中に俺の仲間がやられそうになってて
それを止めに入ったんだ。
いじめは良くないから、やめろって!
そ~したら俺、こんなにやられちまったんだ。
美沙にあの時言われて俺は決心したんだよ。
何とか俺も美沙のように、いじめを止めるように頑張ろうってさ。
でも、このざまだ。。。なさけね~
ピーマン!
なさけね~なんて、そんなことね~よ!
お前!恰好いいじゃんか!
ゲガしてまで頑張ったんだからな!
で、相手の名前とか特徴は分かるか?
あっ! そ~言えば、リーダー?の道着に田中って書いてあった。
身長があって顔は長くて、
そ~だな、、、ピーナツバターみたいな顔してた。
もう一人はでっぷりのパンダ顔で吉本って書いていた。
後はわかんね~
で、そいつらが俺に言ったんだ、
もし誰かにチクったら俺の仲間を全員フクロにするって!
だから俺はそのことを親にも誰にも話さなかったんだ。
お前に言っても相手が悪すぎだし、、、お前を巻き込んで
もしお前が傷つけたりしたら俺は、、、、、俺は、、
おい、ピーマン!
お前! 私に惚れちまったんじゃね~だろうな!
すると、
部屋に居る全員が、にゅ~っとピーマンの顔を覗き込みます。
そして一斉に、ケラケラケラと笑い出しました。
そうか、ピーマン! よ~く話してくれたな!
お前!なかなか可愛いとこあるじゃんか、、、、
私はピーマンの頭を両手で、なでなでしてやり
ついでに両腕で頭を抱えて締め付けてやりました。
イテ、痛い、痛い、いて、イテーーーエ!
ピーマン!お前はこれくらいじゃあ死にゃあしねんだよ~
美沙! お前、何年生だーーーーあ!
え? 私? な~に言ってんだよ!
私は(私は高2、じゃなくって)小5だよ!
よし!ピーマン!早く怪我直せよな!
これで親の信頼も取り戻せたし、もう心配かけるんじゃね~ぞ!
いいな!
そろそろ私たち行くから。じゃあな!
部屋を出ると廊下に、
ピーマンの仲間が全員そろってお見舞いに来ていました。
小学生をいじめてた中学生のいじめっ子が、
今度は高校生のいじめっ子にいじめられている。
学年や学校をまたいで、いじめが存在しているのです。
何故に人は弱いものをいじめるのでしょうか。
いじめられた経験があるなら、その気持ちは
誰よりも分かっているはずです。
それを正さないとダメなのに
逆に弱い者を見つけていじめてしまうなんて。。。
悲しいな~
でもピーマンは変わった!
そしてここに居る皆もそうだ。。。
河原せんべいが言います。
美沙! ど~する?
皆が私の顔を一斉に見つめます。
行くよ! これから南校の空手部に行く!
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
南校の空手部に行くーーーーーーーーーーう!
そう!
おい!相手は高校生の空手部だぞ!
いくら美沙だって、無茶だよ! ダメだ!
それに行ってど~するんだよ、美沙?
いじめを止めてもらうように頼むの。。。
止めさせるの!
このままだとピーマンたちがまたやれかもしれないし、
私たちの知らない人たちだって、あいつらにやられる
だから止めさせないとダメなのよ!
分かるけどさ~ (河原せんべい)
でも、
そんなこと簡単にできっこないよ! 美沙
みんな! みんなはここで帰って!
私が1人で行くから!
皆を巻き込みたくないの!
美香ちゃんが言います。
私も行く!
美沙ちゃん、さっき言ってたじゃない。
本当のダチはいつだって側にいるもんだ。って!
だから私は怖いけど美沙ちゃんと一緒に行く。
・・・ し~ん、、、みなが互いに顔を見合せています。
あ~ 俺も行く! (河原せんべい)
俺が美沙を守ってやる!
私も、、、行く (佳奈)
私も、 俺も、、私も、、、
よ~し、じゃあ、みんなで行こう! うん!うん!
みんな~ 、、、、、、、、、、ありがとう、、、
でもみんなは、見てるだけにしてね! いい!
南校は直ぐ近くです。
やはり高校はとても大きな建物でグランドもとっても
広くて、いっぱいの人が色んな運動の練習をしています。
あ~ これが私の本当の世界なんだわ、、、、高2
校門を入ってすぐのところがテニスコートで4面あり
女子や男子が仕切りにラケットでボールを追っています。
正面からが直ぐに野球場で白いユニホームの選手が
練習しています。
かん高いノックの音とともに大きな掛け声でボールを追っています。
高校は違っていても、その雰囲気には全く違和感はありません。
今までず~っとその中で過ごしてきたのです。
なつかしいな~ この雰囲気、、、
はあ~ でも今私は小5です。
ランドセルを背負った10人の小学生が校庭を歩いています。
高校生がじろじろ私たちを見つめています。
なんだか私たちを見て笑っているようです。
私は歩いている女子に空手部がどこにあるのか聞きました。
校舎の横にある建物が武道場でその中にあるとのことでした。
武道場の前に来ると空手部と書いている看板があって
県大会優勝の旗みたいなのがありました。
誰も何も言いません。
私には分かっていました。
みんな怖くて怖くて声が出ないのです。
きっと、みんな震えているのだと思いました。
それでも、
何か私を信じてここまで付いてきてくれているのです。
みんなとても勇敢なダチです。
私は実はめちゃめちゃ怖くて心臓がドキドキしていました。
これから一体何が待っているんでしょう。
ど~なるのか分かりません。
でもこのダチだけは絶体に守ります。
今の私には掛け替えのない大切なダチです。
あ~ お兄ちゃん!
私は皆に振り向いて言いました。
みんなよく聞いて!
みんなは何もしてはダメだよ! いい!
うん!
おどおどしながら目をクリクリパチパチさせて、小学生の可愛い
チビどもが一斉にうなずきました。あどけない顔をしています。
私は高2の小5です。
じゃあ、行くね!
美沙ちゃん、私、おしっこが漏れそう、、、、私も、、
武道場の直ぐ横がトイレでした。
じゃあみんなトイレ行ってきて! ここで待ってるから、、、
皆はランドセルをその場に置いたかと思うと、
パタパタパタとみんな走ってトイレに駆け込みました。
しばらくすると又、パタパタパタと足音がして
みんなが帰ってきました。
みんなが、私の表情をくりくり目で見ています。
私は引き戸を開けて中に入っていきました。
みんながそれに続きます。
男の人の大きな気合が聞こえてきました。
色んな場所で2人が組んで練習をしています。
女の人は居ません。全員が男子です。
みんな裸足で練習しています。
ここは裸足でないとダメなのかな~っと思って
靴下を脱ぎました。
大きな男の人たちがすっごい迫力でパンチのしあっこをしています。
何だか声がすごくて圧倒されそうです。
私は高2ですから、彼らはいつも見慣れた普通の大きさなのですが、
でも今の体が小5で小っちゃいせいか、とっても大きく感じます。
みんな私のすぐ後ろへピッタリと寄り添っています。
恐らく緊張は頂点に達しているのかもしれません。
みんな、ここに正座して座っててくれない。
私は皆に壁沿いに1列に並んで座ってもらいました。
みんないい! 私が話をするからね!
うん!
皆は声を出さず一斉に首を縦に振りました。
その表情は不安でいっぱいです。
私はしばらくその場に立って練習の様子を見ていました。
これが空手。
私はそれを初めて見ました。
同じ手で続けてパンチしないんだ。パンチの後はキック。
キックも同じ足で何度もしない。キックの次はパンチ。
前にしか動かない。殆どが直線的な動きなんだ。。。
一旦重心を整えてから次の動作までが時間がかかってるみたい。
私はその動きの流れに気を合わせます。
1つの動作ではなく全体の動作に気を合わせていきます。
私の体はその動作に合わせ揺れてるように感じました。。よ~し
私は練習をしている方に歩いて行きました。
心臓がドキドキして今にも飛び出しそうです。
あ~ 私もトイレに行ってればよかった。。。。
お兄ちゃん! 私、こんな処まで来ちゃった!
これからど~なるのか分かんない。。。
大きな気合が鳴り響きます。直ぐ近くまで来ました。
気合の中に入っていきます。
私は力いっぱい大きな声で叫びました。
やめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
・・・ 一瞬、
・・・ ?
気合が止まり、皆がキョロキョロと周りを見ています。
そして私に焦点が一斉に集中しました。
・・・ ???
・・・ ??
・・・ ?
・・・
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ?
お前! なに?
小学生じゃん! 見学に来たのか~
それともこの中にお兄ちゃんとか居るのか?
違うわ! 私はこの中の悪い奴をやっつけに来たの。
悪い奴?
そう!
田中っていうピーナツバター見たいな顔の奴。
会わせて下さい! 田中ってどの人?
・・・ 田中は今日は来てるか? はい、あそこに、、、
おい! 田中、お前に用があるんだってさ!
可愛い彼女が会いに来てるぞ~ ハハハハッ、、、
オッス! 何ですか! 俺に何か、、、、
お前に用があるそうだ、、、、
田中が道場の端の方から歩いて出て来ました。
確かに、ピーナツバターだ!
ピーマンの奴よく特徴掴んでるじゃん。
こいつに間違いないわ!
田中が言います。
俺、こんな奴、知らね~ ここは幼稚園じゃね~んだ、
帰りな。。。。お前になんて用はね~よ。。
そう言って又奥の方に歩いて戻って行こうとしました。
おい! 田中!
お前に用がなくても、こっちにあるんだよ~!
お前!昨日この中のダチとツルんで中学生をフクロにしただろう。
あいつはな私の仲良しのダチなんだ。。。
よくもあんな酷いことしてくれたな~。
あいつは今怪我をして入院してるんだゾ!
高校生にもなって中1の弱い者いじめなんてすんじゃね~
あはーーーーーーーーーーあ! お前! 何言ってんだ!
急にこんなところに来て変な事言うんじゃね~よ
そんなこと俺は知らね~ 帰れ!
俺はやってね~
お前は、いじめだけじゃね~嘘つき野郎か~~あ!
おい!田中!ピーナツバター!
やられた本人がお前だって言ってんだよ~!
まだこの中に昨日ツルんでた奴がいるだろう。
吉本って言う、パンダ野郎はどこだ!
おい! 吉本! 出てこ~い! でっぷりパンダ!何処にいる?
と、その時です。
私の後ろから誰かが私の体を突き飛ばしました。
私は床に転んでしまいました。
美沙ちゃん~ と言う声が聞こえました。
振り返ると、でっぷりパンダが立っていました。
道着に吉本と書いています。
間違いない。こいつだ!
道場の中は変な空気に包まれています。
私は床から立ち上がり大きな声で叫びました。
この中で昨日のいじめに関係していない者は手を出さないで下さい。
昨日のいじめはこの中の5~6人です。
私はその人たちを、やっつけるだけです。
ピーナツバターとパンダがお腹を抱えて笑いました。
きゃははははははは、、、、、、、、、、、は、、、
やっつけるーーーーーーーーーーーーう?
お前が俺をやっつけるって言うのか?
小学生のお前が俺をやっつけるって、お前バカか~!
俺は空手の個人戦で県大会で優勝してんだぞ!
県で一番強いんだぞ! 分かってんのか?
県で一番強くってもセーラムーンには勝てないわ!
はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
セーラムーン? なんだそれ?
で、お前がそのセーラムーンってわけか、、、、、
きゃははははハハハハハハハははは、、、、ははは
これは傑作だ、あのな、お嬢ちゃん!
ここは遊園地じゃあないんだ! 練習の邪魔だ、さあ帰りな!
おい! 田中! くだらね~こと言って話をそらすんじゃね~
お前らが弱い者いじめをしてるってわかってんだ!
私は悪を裁く正義の戦士、セーラムーン野々村美沙だ!
いいか!
耳の穴よ~く、こっぴろげて、よ~く聞きゃあがれ~
武道ってのはな~ 弱い者いじめをするためにあるんじゃね~
武道は自分の身を守るためのもんだろが~!
大切な人を守るためにあるんだよ!
そんなこともわかんね~奴が武道なんて笑わせるんじゃね~
武道家の片隅にもおけね~奴らだ!
田中! 吉本! それに昨日いじめをやった奴、
この私が許さね~ そのつもりで
全員私にかかってこい!
このチビ野郎、言わせておけばいい気になりゃがって!
小学生でも許さんぞ!
県大会の優勝者の俺様をバカにすんじゃねー
県大会の優勝者? そんなケチなことで自慢すんじゃね~
もっと大切なもんがあるだろうが~
それが分かんね~からいじめなんてすんだろうが~
ピーナツバターの顔が震えています。
目が引きつっています。
ほうがピクピクと動いています。パンチがくるわ!
ピーナツバターが興奮してパンチの動作に入ります。
単純な奴!
ピーナツバターのパンチが来ます。
あれれ? 意外過ぎる遅さ! シュー!
私はスッと身をかわしてグーで鳩尾に反撃しました。
バシッ! グフッ! うぅ~
ピーナツバターが私の足元に崩れ落ちます。
一瞬の出来事です。1秒以下
こいつが県大会の優勝者? うそ。。
後ろからパンダのパンチの気配がします。
後ろのパンチが見えるようです。
私は振り向かず体をす~っとかわして肘を後ろに出しました。
ボムッ! ウゲッ!
後ろを見ると、パンダが床で九の字になって倒れています。
なんだこいつ、ただ体がでかいだけじゃん!
道場がめちゃめちゃ変な雰囲気です。
殺気立っています。
皆が見たことのない構えをして私を取り囲んでいます。
そして、殆どの男子が私にかかってきました。
だから、
私は、ハネたり飛んだりして宙を舞いました。
そして男子のオチンチンをグーでパンチしてあげました。チン!
時間的には短時間、、、測ってないから分かりません。
あれれ~ 誰も居ない、、、みんな床でうめき声を出しています。
あそこを抱えて転げまくっています。
なに これ~?
やっぱあそこってこんなに効くんだ。知らなかった~
その時、道場の扉がガラガラと開いて、大人の人が
中に入ってきました。
私は、その顔を見てビックリしました。
私の高校の体育の杉浦先生です。
一瞬、頭がパニクリました。なんで杉浦先生がここに居るの?
・・・
・・・ あっ! 若い!
・・・ 若い杉浦先生がここに居る。。。。
・・・ そっか~ 6年前はこの南校に居たんだ。
・・・ そ~ 言えば、うちの学校でも何かの武道の顧問をやってたような?
・・・ じゃあ、6年前の今は、ここで空手部の顧問をやってるのか、、
・・・ きっとそ~だ!
杉浦先生が慌てて入口から走って来ます。
一体、ど~したっていうんだ! なんなんだこれは?
何がど~なってる?
一人の男子があそこを押えて変な恰好で先生に走って行きます。
先生! 大変です。
道場の殴り込みです!
殴り込み~? だれが来たんだ!
男子が私を指さします! あいつです!
杉浦先生が私の方を向きます。
どこにいる? 居ないじゃないか?
・・・ ?
居ます! あの女の子です。
・・・ ?
先生が私の顔をじ~っと見つめます。
あっ! まずい!
いや、杉浦先生は未だ私を知らないんだわ。
それに私は小学生だし、体も小っちゃいし。
私は先生に丁寧に頭を下げました。
で、お前たち、みんなあの子にやられたってことか?
20人の空手部員が、あの女の子1人にか?
はい! めちゃめちゃ強いんです。
俺たちでは歯がたちません!
そんなバカな、、、、、、
本当なんです。すっごい拳法を使うんです。
動きが早くて目に見えないんです。
空を飛んだりします。
本物のセーラームーンなんです。
なんだか私の事めちゃめちゃ過大に伝えているようです。
自分たちがやられた言い訳みたいです。
空を飛ぶなんて、バッカみたい。。。。
杉浦先生はうちの学校で私のお気に入りの先生です。
勿論私が高2の時ですから、この時点ではまだ先生は
私の事を知りません。
杉浦先生は体育の時よく私たちに言っていました。
勉強も大切だけれど、それを将来にどう生かすかを
考えなさい。
又、人は地位や名誉やお金を目的にすると、決して
幸せなんかにはなれない。
人生の成功に尺度があるとすれば、いかに多くの人に
ためになることをしたかというのが尺度だ。
体育の先生なのに私たちに色んな生き方を教えてくれていました。
本当にまともな先生です。
私はそんな杉浦先生が好きで尊敬していました。
その杉浦先生が今私の目の前に居ます。
6年先の先生は知っていますが、
今の先生はど~なんでしょう? 同じなんでしょうか?
杉浦先生が私に近づいてきます。ドキドキ
君は誰なんだね?
一瞬迷いましたが、答えました。
私は、正義の味方、悪を正すセーラムーン野々村美沙です。
セーラムーン? あのアニメのですか?
はい!
で、野々村さん、この中に悪い人が居るんですか?
はい!居ます。
昨日私のお友達の中学1年生の男子を5~6人で叩いて
怪我をさせた人が居ます。
怪我をした私のお友達は今病院に入院してて、
ここに来る前に、私たちはみんなでお見舞いに行ってきました。
そのお友達は告げ口すると他の友達もいじめるって脅されてて
誰にも話していないのですが、
私はそのお友達から直接聞き出しました。
ここの空手部の人がいじめています。
名前は、田中、吉本、他にも何人かいます。
だから私たちは、もう止めて欲しいってお願いに来ました。
そしたら、みんなが私にかかってきて、だから
私は仕方なくやっつけてしまいました。
道場の殴り込みなんかじゃありません。
そんなことをする理由なんて私たちにはありません。
先生! 嘘です!
そんな話はでたらめです。ピーナツバターが言います。
パンダも、そうです。嘘です。そ~言って口合わせしました。
だって、
こんな小学校の女の子に俺たちがやられるわけがありません。
何人かが、そ~だ!そ~だと口を揃えて言いました。
きっと昨日いじめに関係した奴らです。
君1人で私の空手部員を全員やっつけた、、、、?
う~ 先生は胸に腕組をして考えています。
私はここにきて最初にいじめに関係していない人は手を出さないように
言ったのですが。みんなが掛かってきました。
だからこんなになってしまいました。
・・・ ? 先生がとても信じられないといった顔をしています。
・・・ でも、、、いくら何でも20人の空手部員を君1人で、、、、
・・・ ?
先生が、、、私の体を頭からつま先まで眺めています。
・・・ ??
・・・ ?
嘘だーーーーーーーーあ!
俺たちが、やられるわけありません!
先生! 相手は小学生ですよ! 女の子ですよ!
あり得ません!
俺たちは練習で疲れてみんなで横になっていただけです。
・・・
私は言いました。
先生! 証明致しましょうか?
証明?
はい、
私が嘘を言っているかどうかを、その目で確認してください。
でもね~ 君に怪我をさせてしまったら大変だからね。
先生!
そんな問題じゃあないんです。
私はいじめをなくするためにここに居るんです。
いじめは人を傷つけてしまいます。
この空手部の中にそんな人が居るのでしたら、
空手をやってる意味がありません。
絶体に許してはいけないんです。
先生が部員を信じたいお気持ちは分かります。
でも現実は違っています。
見逃すと本人のために良くありません。
・・・
ピーナツバターとパンダと何人かが道場の真ん中に立ちました。
合計6人です。
こそこそ、、、さっきは女のガキだと思って油断してた。
俺たちが負けるはずね~ いいか! おう!
先生が言います。
おい! お前ら! 絶体にこの子に拳を当ててはダメだぞ! いいな!
6人以外の部員は大きな輪を作って座りました。
その輪の中に立って、
私は6人に向かって大きな声で言いました。
おい! お前ら!
耳の穴、こっぴろげて、よ~く聞きゃあがれ!
もう1度だけ言う!
武道ってのはな自分の身を守るもんなんだ!
大切な人を守るために使うんだよ!
お前らみたいな弱いもんいじめのために使うんじゃね~
人生の成功に尺度があるとすれば、いかに多くの人の
ためになるか、それが尺度って言うもんだろうが!
空手はそのために使うんだよ~
弱い者いじめをしたり、平気で嘘をつくような奴はな、
このセーラムーンが許さね~
私がお前たちのその曲がった根性を叩きなおしてやる。
そのつもりでどっからでもかかってこい!
6人は本気で私にかかってきました。
私は、ぴょんぴょんと跳ねて宙を舞うように全てのパンチや
キックをかわしながらグーでパンチをオチンチンに当てました。
あ~ 痛そう! 手ごたえあり、ゴメンネ! チン!
一瞬の出来事でした。
6人は全員床に転がって変な恰好で起きることが出来ません。
何度やっても同じだーーーーーーあ!
お前たちの考えを直さない限り、その程度ってもんだ!
わかったかーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
人は殴られると痛い!
その痛さ、忘れんじゃねぞーーーーーーお! いいか~
杉浦先生みたいな立派な先生が居るんだ!
しっかり人生の考え方を教えてもらって、
人に好かれるような、まともな高校生になれ!
わかったか~ (大声が武道場に響き渡りました)
転がっている男子の中を歩きながら、
腰を落として1人1人の顔を睨みました。
全員が首を縦に振って分かったと言っています。
痛そう~
よ~し、分かったら、いじめた奴全員で今日中に
今井健介の見舞いに行ってやれ。いいな!
素直に謝るんだぞ! それがお前らの出直しだ!
北沢病院3階の個室305号室!
私はポカーンと口を開けたままの杉浦先生に丁寧に礼をして、
美香ちゃんや河原せんべいの処にかけて行きました。
お待たせ! 帰えろっか!
うん!
みんなランドセルを背負って出口へ向かいました。
後ろから声がします。
杉浦先生の声です。
き、君は一体誰なんだネ!
先生!
さっきも言いました。私はセーラムーン野々村美沙です。
外に出ようとした時、又
あっ! 待って! 君は僕を知ってるのかね?
いえ! 今日初めてお会いしました。(嘘です)
そ~か!でも、あの人生の尺度って、
僕はいつも心に思ってても未だ人には話したことがない。本にもない。
何故君は知ってる?
君!また会えないか?
先生! 空手部員のご指導よろしくお願いします。
失礼しました。
先生!あいつ、本物のセーラムーンですよ!
あいつがアニメ化されてんです。
(ピーナツバターの声が聞こえました。)
夢と幻想の森