学校が終わって
私と美香ちゃんが一緒に歩いて校門を出ようとすると
いっぱいの変な奴らが私たちを待っていました。

南高の空手部員約20人です。
その中の6人は私のダチの今井健介をいじめた奴らです。
そのことで、私はこの20人をこらしめたことがあります。
こらしめるっていうか、成り行きでそんな変なことに
なっちゃったのです。

イヤだな~ 変な関係!

でも何故そいつらが、ここに居るのか分かりません。
私たちに話があるというのです。

私はそいつらを睨みつけて言いました。

2度と弱い者いじめなんてしたら、この私が許さね~
分かってんのか~


ピーナツバターが手を横に振って言います。
俺たち、あの後、今井健介のお見舞いに行ってきました。
丁重に謝って許してもらったんだ。


パンダ野郎が真面目顔で言いました。
美沙に言われて再出発してるんだ。
本当だよ! 信じてくれ。

・・・ 私と美香ちゃんは互いに顔を見つめ合いました。

じゃあ、なんだって言うんだよ?
なんでこんな処で暇つぶしてんだよ?
こっちは、お前らに構ってやるほど暇じゃね~んだよ!
じゃあな!


・・・ 我ながらすっごい言葉使い、、、
なんでこ~なっちゃうのかな~ 。。。原因不明

ま、待ってくれ! 頼む!
実は、杉浦先生がやられちまったんだ!


えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!




ピーナツバターが言います。

ここでは目立ち過ぎる。
この近くに遊園地がある、そこで話そう。


ヤダ!


頼む! 話だけでも聞いてくれ、なっ!
お前はセーラムーンなんだろう、、、、頼むよ!

美香ちゃんが言います。

いいわよ! 話だけなら聞いてあげる。。。

え? 美香ちゃん、、、、積極的過ぎるよ~

でも今のこの人たち、悪い顔をしてないよ。。。だから

・・・ ふ~、、、確かに、、、前と違ってる、、、

ピーナツバターも前は苦そうだったけど、
今は美味しそうだし、
でっぷりパンダも前はキモパンダだったけど、
今はそれとなく可愛い。

私は美香ちゃんにそ~言われて、仕方なく、

美香ちゃんが、そ~言うなら、ちょっとだけ、、、

私たちは男子高校生の後を少し離れてついて行きました。

遊園地のブランコの横の広場の芝生に、
美香ちゃんと私は20人程の南高の男子と向き合いました。

私は、初めに美香ちゃんを紹介しました。

これは私の親友の、
セーラムーン山口美香ちゃんだ!

すると、美香ちゃんが、
悪をやつける正義の味方、セーラムーン山口美香です。

赤のランドセルで ペコッ!と頭を下げました。
ツインテールが可愛く揺れます。

得意技はガブガブ噛みつき、
私よりも勇敢でめちゃめちゃ強いんだ! 美香ちゃんに、こそこそ、、
一旦噛みついたら1時間は離さね~
以前は犬にも噛みついてた!

部員がえ~!とビックリして、視線が美香ちゃんに集中します。


美香ちゃんが大きなお口を開けて白い歯を出して、
両手の爪を立てて、、ガブガブッ! ってやりました。

更にもう一度、
一歩前に飛び出して
顎を前に出して皆に噛みつく格好して、ガブガブッ!


20人の部員が、ビビって、
ウえ~っ! と飛び上がり、
すぼむように後ろに引き下がり互いの顔を見合わせます。
怖い~、、

美香ちゃんが小声で私に聞きました。
美沙ちゃん! 私、噛みついちゃうの、、、? 

うん! 


ふ~ん 、、ガブガブ

それにセーラムーンは他にも5人居るんだ。
みんな私の親友で、私より、もっと強いダチばっかしだ!

と、その時です。遠くから声がしました。

美沙ちゃ~ん、、、美香ちゃ~ん、、、
そ~言って佳奈ちゃんたち5人がこちらに走ってきました。
ナイスタイミング



何人かの空手部員が、ピーナツバターに言います。

せ、先輩! あれを、、あれを見てください!

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!

あれは、、、おい、あ、あれを見ろ!
信じられね~ うそだろう。。。

み~んな ツインテールだ!
まさか、あれが、み~んなセーラムーン?

佳奈ちゃんたちが息を切らせて、
私たちの処へ走ってやってきました。

佳奈ちゃんたちは美香ちゃんと私の横に並んで
そして、
高校の空手部員達を、グッ!っと睨みつけました。

20人の部員たちは全員が一瞬 ギョッ!となって何歩か
後ろに下がりました。
まさか、これがみんな、美沙と同じような奴!


うわ~ みんな強そう、、、、

先輩! これヤバクないですか。 こそこそ、、
一歩間違えば俺たち即全滅間違いなしですよ!

美沙と同じなのが、こんなにいるなんて、、、
俺たち本当に世間知らずだったな、、、
井の中のかえるだ!
バカ! それ言うなら井の中の蛙だろう!


私は空手部員に言いました。

ここに居るのは全員が私の親友のセーラムーンだ!
すっごい強い!
お前らの叶う相手じゃね~


私は佳奈ちゃんを指さして、
この子は、ひっかき技、佳奈ちゃんが両手の爪でガリガリします。
この子は、つねり技、両手を前に出して指でギュ---とします。
この子は、浣腸技、両人指しを重ねて下から上に突き上げます。
この子は、お尻キック、お尻キック~? お尻を手でぺんぺん。

最後のこの子は、
え~っと、、、何にしちゃおうかな~(私は少し迷いました。)
そうだ!
この子は、髪の毛抜き抜き技と、オチンチン掴みつぶし技の二刀流だー!
すると、開いた手を上下にしてグジャと一気につぶす格好をしました。
みんな空気よく読んでるね~ 感心!感心! (そ~思いました)


うっそ~ それって玉つぶしか?
反則じゃんか~
バカ!
こいつらにルールなんて通用しね~

空手部員は「怖~い!」そ~言って、
頭とあそこを抑えて何歩か後ろに下がりました。
おい!
俺たち今とんでもね~処に来てるんと違う?


そ~みたい。
美沙と同じのがこんなにいる処って、めちゃめちゃ
絶対にヤバイ! ヤバ過ぎる! 
俺たちは立ち入り禁止の危険地域に居る。

俺たちの空手、通用するかな~
アホウ! するわけね~だろう!
それにしても、み~んな
とんでもない奴らだ!

もし、怒らせたら俺たちど~なるんだ?
決まってるだろう!


噛みつかれて、引っ掻き回されて、つねられて
浣腸までされて、尻キックされて、
髪の毛引っこ抜かれて禿にされて、
仕上げにオチンチンを握りつぶされる。。。。。
いやだーーーーあ!
考えたくなーーーーーーーい! あんまりだーー!
で、俺たちの生存率は?
恐らく、限りなくゼロに近い! えーーーーーーえ!


怖わいよーーーーーーーーーーーーーーーお!
お婿にいけなくなる~ まだ死にたくな~い!


佳奈ちゃんが空手部員を見て言いました。
ど~しちゃったの?
この人たち又悪いことしてるの?

ピーナツバターが慌てて言います。

いえいえ! とんでもありません!

俺たちはただ美沙さんに、
お願いがあって話に来ただけです。

ふ~ん、、、?


私は佳奈ちゃんに言いました。
佳奈ちゃん! ここは心配しないでいいわ。


・・・ キョロキョロ、、、ふ~ん そ~なんだ

美沙ちゃん、美香ちゃん!
何か協力することがあったら私たちに言ってね~

うん!

私たち親友だし、仲間だし、ダチだし、
いつだって一緒だもんもんね~
私たち塾があるからもう行くね。
じゃあ、またね! さようなら、バイバイ!

佳奈ちゃんたち5人は、パタパタパタと元気よく走って行きました。

・・・

おい! ピーナツバター! さっき言ったこと! (私)


ど~言うことなんだよ!

ピーナツバターが言います。


あぁ、、、 実は、美沙!

お前は知らないと思うけど
この辺りには札付きの悪(ワル)の角竜(カクリュウ)って言う
暴走族グループが居るんだ。

奴ら! 30人位でツルんでてさ、
今までに傷害事件とかを何度も起こしてて
警察にも目を付けられてんだ。


それでさ、
俺たち校外のランニングの途中で、
そいつらに絡まれちまったんだ。
歩道の途中に何台ものバイク止めててさ、
俺たちは通れなくって、、

それで一緒に居た杉浦先生がそいつらに注意したんだけど
結局は先生だけフクロにされちまったんだ。

俺たちは先生を助けようとしたんだけどさ、
先生が絶対に手を出すんじゃないと言い張って
1人やられちまった。

美香ちゃんが聞きます。

で、先生のお怪我はど~なんですか?

あぁ、、、、ひどい打撲なんだ。
俺たち、念のために先生に病院で検査を
受けてもらうように言ったんだけどさ、
先生は今は行けないと言い張ってるんだ。
俺たち秋の空手地区大会があってさ、
今部内の不祥事なんかあったらさ、
大会に出られなくなっちゃうんだ。

だから先生もそれを心配してくれてて、
事を大きくしたくないんだと思う。
その先生の気持ちが痛い程分かるから、
俺たち、、、悔しくって、悔しくってさ、、、、

それと、まだ悪いことに、
あいつら俺たちが気に入らないらしくてさ
1人1人をフクロにするつもりなんだよ。


現に、
こいつ昨日、練習の帰りに待ち伏せされて河原で
やられちまたんだ。
こいつも何も手出し出来ずにやられっぱなしだった。
その時、
あいつらのボスの角田竜一から俺たち全員を
フクロにするって言われたんだ。

昨日フクロにされた柏餅のような顔の奴が、
顔にカットバンをぺたぺた貼って
美香ちゃんと私を情けない顔で見て言います。


角田竜一は東高中退で当時ボクシング部で
県大会の優勝間違いなしと言われるほど
強い選手だったんだよ。
すっごい強かったと聞いてるよ。

だけど、
あいつボクシング部の他の部員の不祥事で県大会に
出場できなかったらしい。
その後、グレて高校も止めて不良グループに
入って悪ばっかしやるようになったらしよ。


今では自分で角竜という暴走族を作ってさ、
そのボスをやってる。
なんでも、19歳なのに、あまりに強くて
20歳過ぎのやつらも何人も従えて
河原近くの空き倉庫にたむろしてるって話だ。
それも
皆まともな奴らじゃねえ、札付きの悪ばっかしだ。


美沙! 頼む!

なんとか俺たちに手を貸してくれ。 頼む!
このままじゃあ地区大会どころか、
みんなフクロにされちまうんだ!

ヤダ!



お前しかいないんだよ! 頼む、助けてくれ!
美沙!お前を見込んで頼む!
この通りだ!

20人の空手部員が神妙に頭を下げています。

ヤダ!



なんでなんだ?
これだけ頼んでるのに、何故なんだ!

訳を聞かせてくれ! 美沙! なんでなんだ?
お前は正義の味方、悪を正すセーラムーンなんだろう?
理由を聞かせてくれ!

・・・

そ~か、お前たち、理由を知りたいか?

ああ、、、教えてくれ!

じゃあ、教えてやるよ!
ピーナツバター以外の空手部員は全員座ってくれ!

ピーナツバター!
私をお前の空手で倒してみろ!
どんなに近くからでもいい、
お前の空手で本気で攻撃して私を倒してみろ!

真剣にやるんだ、じゃあないと理由は教えね~!

・・・

ピーナツバターが一歩引いて両手をグーにして
胸の前に構えました。

そして、私にパンチしました。

ヤーーーーーア! パンチが来ます!

勿論、私はピーナツバターの気を読み切ってて、
パンチが来る前にピーナツバターの後ろに回り込んで
首に腕を回して締め付けました。


美香ちゃん! ガブガブ技よ!
私がそう叫ぶと、あっという間に美香ちゃんが
ピーナツバターに飛びついて顔をガリガリと引っ掻き回して
耳たぶにガブリと噛みついちゃいました。


ギャーーーーーーーーーア!


痛てーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

助けてーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!



・・・ ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーあ! (変な声)


ピーナツバターは地面に転がって、
あまりの恐怖で全身がブルブル震えています。
尻もちをついたまま腕を伸ばして後ずさりしています。
顔が引きつって真っ青で、おびえた目をして声が出ません。



部員たちも、

うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ、、、っと
声をあげました。



あ~ やっぱり、セーラムーンだ!
セーラムーンが2人居る!



おい! お前たち!


耳の穴、おっぴろげて、よ~く聞きゃあがれ!

お前たちのやってる空手なんてな、
この程度のもんなんだよ!


何が県大会だ! 何が地区大会だ!


笑わせるんじゃね~


大会に出場することがそんなに大切なことなのか~?

それに優勝することが何の価値があるってんだ!

おい! ピーナツバター!
お前は県大会の優勝者だってな!



なら、このザマはなんなんだ!
小学生に簡単にやられちまうじゃね~か!

私に助けてくれだと! 笑わせるんじゃね~


前にも言ったよな、

武道は自分の身を守るもんだとな~
大切な人を守るためにやってんだとな~


杉浦先生が目の前でフクロにされてるのを、
黙って見ていたのかーーーーーーあ!
なぜ助けね~んだ!
杉浦先生はお前たちの大切な人じゃね~のかよ?
なんのための武道なんだ!
なんのための空手なんだよ!


どーーーーーーーーーーーーーなんだよ!


お前ら! それでも男なのかーーーーあ!

・・・

しーーーーーーーーーーーん、、、、、

・・・

県大会だの、優勝だの、そんなケチなことのために
大事なことを忘れてんだよ~ お前たちは!
くだらね~理由をつけて、
結局は自分たちがかわいいだけなんだよ!

都合が悪くなったら、私に助けろだと!


ふざけんじゃね~  この意気地なしやろ~


そんな奴らのために
私が手助けなんてするわけね~だろう!

分かったか! それが理由だ!



しーーーーーーーーーーーーーーーーーーん、、、、

じゃあ、私たちは行くからな、、、、、バイバイ!



美香ちゃん! じゃあ行こうか!

う! うん、、、、でも、、、、

美香ちゃんが私の腕を引き戻します。 え?
美香ちゃん! ど~しちゃったの?

その時、パンダが言います。

美沙! 待ってくれ。

お前が言うことは分かった。その通~りだ!

俺たちだって色々考えて話し合ったさ。
ただ直ぐにお前に助けを求めに来たわけじゃないんだ。
もう少し話を聞いてくれ! 頼む!


・・・ 美香ちゃんが私を見てうなずきます。。。


角田は杉浦先生の教え子なんだ!

角田が東高でボクシングをやっていた時の顧問が
杉浦先生なんだ。

部員の不祥事が発覚して大問題を起こした時、
それでも先生はなんとかして、
角田を県大会に出場さてやるために必死になって
教育委員会や体育関係筋に頭を下げて
何度も走りまくったそうなんだ。


だが、不祥事の部員の退学を選ぶか不出場を選ぶかの
選択を迫られて、
先生はやもなく不出場を選んだんだ。
部員の退学は避けられたものの
角田は県大会に出られなかった。


先生は角田に何度も自分の力不足を謝ったらしい。
だが、結局は角田はそのことでグレて学校をやめて
先生のことを恨むようになったんだ。


きっと今回は自分の根強い恨みも重なって、先生や
俺たち空手部員に仕返ししているんだと思う。
きっと自分の無念を俺たちや先生に
味合わせようとしてるんだ!
でも先生は角田は自分のせいだと言って涙を流しててさ、
悔しいよ。
あんなにされてまでも、
まだ角田をかばってるなんて。。


美沙が言うように県大会だの、優勝だのは
ケチなことかもしれんよ。
俺たちも、美沙に出会ってそ~思うようになったんだ。
もっと大切なものがあるって気が付いた。


だがな、
杉浦先生に取っては大会に向けての練習は
大きな励みだし、
それは人間形成の1つの手段としての
大切な位置づけなんだと思う。
勿論、俺たちにとってもそ~だ!

それと、先生から今回の事は、
セーラムーンには話すなって言われている。
だが、
俺たちも話し合って迷った末に美沙の処へ来たんだ。
勿論、お前に頼むのは筋違いかもしれね~
すべて俺たちの問題だし、危険すぎるし、
小学生の美沙に頼むなんてど~かしてるって
思ってるよ。
だけど、俺たちは美沙に出会ってから、、、、


待って! 今、何と言った?

あ、、お前に頼むのは筋違いかも、、、

もっと前!

話し合って美沙の処へ来たって、、、

じゃあない、、その前になんて言った?

先生がセーラムーンには話すなって、、、

おい! パンダ!
杉浦先生が私に話すなって言ったのか?
そ~言ったんだな! 間違いないな?

そうだ!
先生はセーラムーンには話すなって言った。


だけど、俺たちはみんなで相談して、
美沙の処へ来てしまったんだ。

・・・

・・・

杉浦先生が私に話すなって言った!

・・・

先生が、杉浦先生が、私に助けを求めている!

・・・

私は先生に先を読まれている。
体の動きを読むだけが先じゃあないんだ、、、


あっ!
先を読むとは人生そのもの!

お兄ちゃんの合気道部で今井先生が教えてくれた。
あれは夢の中の出来事?
でも例えそ~だとしても、
その先生の言葉が私の頭にある!


杉浦先生は私の先を読み、この困難な状況を
乗り越えようとしているんだわ。
先生に取っては今回のことは人生の大きな難局なんだ。

今回の事を私に話すなと言えば、こうして話に来る。
その内容で先生が私の助けを必要としていると私が悟る。


つまり、先の又先を呼んでいるってことだわ。
杉浦先生! さすがです。
さすがに空手部の指導者です。

でも、そこまで私を信頼してくださってるなんて。。。
考えてみれば、こいつらに今回の事を解決するには
少々複雑すぎる問題があるのかもしれない、、、


・・・ あ~ お兄ちゃん、、、わたし、、

・・・ お兄ちゃんなら、ど~するの、、、?

・・・ きっと、、、、そうね、、、そ~だよね!


仕方ないな~、、、、、、やってみるか。。。

・・・


おい! パンダ! ピーナツバター! みんな

分かった! 私が何とかする。

えっ! 本当か! 美沙!

で、俺たちは一体なにをすればいいんだ?
なんでも言ってくれ! 美沙が言う通りにするよ!

そ~か! じゃあ、
お前たちは何もするな!
いや! してはいけない!

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!

でもさ、美沙!

じゃあ、美沙はど~する?

私はランドセルを降ろしてノートを破って鉛筆で
1枚の紙に大きな文字で書きました。


(内容)
————————————
タイマン申し込み

角田へ
お前にタマがあるなら私とタイマンを張れ!
お前が負けたら今後一切、
南校の空手部には手出しするな!
お前を一人ぽっちにはしね~!
今日の夕刻5時、東見橋下の広場で会おう!
セーラムーン

これを持たせた者が無事帰って来た時点で
お前とのタイマンは成立する。
————————————-


私は紙をみんなに向けて、その内容を読み上げました。


えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!


タイマンを張るーーーーーーーーーーーーーう!


空手部員が動揺し始めました。
なにかそれぞれが話しています。
ガヤガヤ、、、、こそこそ、、、ガヤガヤ、、、
皆が戸惑っています。

いいか! みんな聞いてくれ!

このままじ~っとしていても状況は変わらね~
増々、悪くなるばっかしだ。

だから、こちらから仕掛ける。
相手の先を取るんだ!


もし角田が男ならこの内容を見て黙って居られね~。
角田の周囲の人間だって角田を見ている。

タイマンを申し込まれた角田だってボスの面つってあるもんだ
逃げられやしね~

奴は必ず現れる!

だが、空手部のお前たちは手を出すんじゃねえ~
杉浦先生の気持ちを尊重するんだ!
いいか~


でも、美沙!

でも相手は半端な奴じゃあね~んだぞ!
手下だって荒くれもんばっかした!
お前1人で行って、大丈夫か?


バッキャやろーーーーーーーーーーーーーーーーーお!


みんなが飛び上がりました!

だれが1人で行くと言ったんだ!
お前らも一緒だ!
一緒にいくんだよ~ 全員で!

え! 俺たちも?

当然だ!
お前ら、何考えてんだ!
こんな危ないこと小学生2人に任せっ切りで、
お前ら20人はどこで暇つぶししよ~ってんだ!


いい加減にしやがれーーーーーーーーーーーーーえ!


おい! ピーナツバター!
角田とのタイマンの時、
こいつらが手出ししね~ようにお前が見張ってろ! いいか

それと言って置くがな、
角田の出方次第では、
お前らも全員ただじゃあ済まね~ぞ!
その時は、
私が言った話を思い出してそれぞれが動くんだ!
何のために空手をやって来たかをな!


パンダ!
今すぐこのタイマン申し込みを
空き倉庫の角田の処へ持って行ってこい!


えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ! 俺が?

・・・ ウジウシ、、、


な~にビビってんだ!
この内容をよ~く見てみろ!
これを持たせた者が無事帰って来た時点で
お前とのタイマンは成立する。って書いてるだろう。

角田がこれを見て、
お前に手出しするわけね~だろう! 多分な、、


え! 多分、、、

さあ時間がね~ 直ぐに行ってこい!

パンダがモジモジしています。


こらーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

早く動けーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!


パンダが飛び上がって走って行きました。


ピーナツバターが言いました。

美沙! お前! 怖くね~のか?

・・・ 怖いよ!


だがな田中!
お前らは私を信じてくれてんだろう?
お前らは、前とは変わろうとしてるんだろう~
いじめをされた者の苦しみが分かったんだろう
再出発したいんだろう
杉浦先生の気持ちを分かってるんだろう
そして私に何とかしてもらいたいんだろう
だからお前らは、ここに居るんだよな!


やるしかね~だろう。。。。。


美香ちゃんが言います。
美沙ちゃん! 私はいつも側にいるからね、、、
ダチだから!

美香ちゃん!
こんなことになっちゃって本当にごめんね。
私は絶対に美香ちゃんを守るからね。
私も美沙ちゃんを守ってあげる。


緊張の中、、、30分が過ぎました。


パンダが猛烈な勢いで走って帰ってきました。

息を切らせて肩でハハハハハハと呼吸しています。
ピーナツバターが言います。


ど~だった!


息が切れて言葉が出ません。

少し間をおいて、パンダが言いました。

成立だ! 美沙!

角田がタイマンを受けた!
30人は居たよ、角竜だ!
ヤバイおっかねえ連中だった。殺されるかと思ったよ。

よ~し、もう一度だけ言っとくぞ!
お前らは絶対に手出しするんじゃね~!
だが、
さっきも言ったように成り行き域次第では自己判断だ!
覚悟しとけ! いいな!


だが言っておく、
お前たちの空手では歯が立たね~相手だ!
何故かわかるか?
奴らは喧嘩慣れしてる連中だ。
ルールも決まり事も何もない世界で生きている。
審判なんてどこにも居ね~
そんな連中とやり合ってもお前らに勝ち目はねえ~


それに、

これはタイマンだ!

1対1の決闘だ!

角竜と私の決闘なんだ! いいか!
決着は私が付ける!

私は大きな声で叫びました。

よ~し、 みんな 行くぞ!


オーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーオ!


威勢のいい掛け声が湧き上がりました。
まったく頼りない奴らばっかしです。
それでも
今ここで今までになかった何らかの強い結束が
間違いなく結ばれたのは間違いありません。

全く想像も出来ないとんでもない状況が
繰り広げられようとしています。


赤とピンクのランドセルを背負った小学生の女の子の
後を、大きな男たちが20人ゾロゾロと付いて歩いています。
全く異常としか思えない光景です。

お兄ちゃん! お願い! ど~か私に力を貸して!
私にはお兄ちゃんがいる。
そして、美香ちゃんがいる。
だから、私はセーラムーンなんだ!

・・・

角竜のボス、角田竜一!
どんな奴なんだろう!

お前にタマがあるなら私とタイマンを張れ!

その文章を見て角田はど~思ったのでしょう?
少なくても30人を束ねるボスです。
バカではありません。
緊張が高まってきます。
自分の鼓動の高鳴りを感じます。


これから私は一体ど~なるんだろう?
私は今日を乗り越えることが出来るんだろうか?
自分でもわかりません。
自信があるとか無いとかの問題ではありません。
ただ、この今を全力で乗り切るしかないのです。
今を、、、、



土手沿いの道から河原に続く細道を降りていきます。
みんながそれぞれの思いを抱いて進んでいきます。
緊張が高ぶってきます。
こんな思いは初めての経験でしょう。
恐怖で逃げ出したい者もいるはずです。
例え逃げ出しても責めることは出来ません。

向こうに橋が見えます。
あの辺りが東見橋下の広場です。
夕日に照らされた何台もの単車が並んでいます。
おびただしい数のバイクが無造作に並んでいます。
あれが暴走族の角竜。
約30人くらいの男がふざけた格好で待っています。
タバコの煙が上がっています。


空手部員の連中は、し~っん として何一つ言葉を出しません。
みんな緊張のあまり、
おそらくガクガク震えているのかもしれません。
空手部員と言っても所詮は私と同世代の高校生たちです。
いきがってはいても学生です。


見えて来ました。

暴走族特有の髪型と恰好をしています。
皆が手に木刀を握っています。

・・・

なんだ! あいつら、、、、うそだろう、、、
おい! おい! 見ろ! みんな木刀を持ってるぞ!
私の後ろでざわめき始めました。。。。
後ろで何人かが小声で話しています。
動揺が広がっていきます。無理もありません。
俺たち全員殺されるかも、、、ヤバイよ~これって
俺、全身が震えてる。。。俺もだ、、、
俺にさばるなって、、お前こそ!
ど~なるんだろう俺たち。。。怖い! 最悪


更に近づいていきます。

男が1人だけ皆と離れて広場の中央に立っています。
髪が長く背が高く手に木刀を持って、
その先を地面に付けています。

おい! あ、あれが、、、角竜の角田か、、、怖そ~う、、
何だか気味が悪い奴だよな、、、、死人みて~だ
残酷な奴だって聞いてるよ。。。。。ああ知ってるさ

私はみんなに手の合図でそこで待つように言いました。
美香ちゃんが私の横についてきます。
美香ちゃんは本物のセーラムーンになったと思いました。
私は高2ですが、この子は本当の小5です。


途中で、私は、
美香ちゃん! ありがとう、ここで待ってて!


うん!


美香ちゃんは、本当に勇敢な女の子です。
普通では考えられない程です。
美香ちゃんは変わりました。
実際、私は美香ちゃんにどれだけ
勇気付けられているか知れません。
勇敢で優しい女の子です。
今の私には一番に大切なダチです。
美香ちゃんが居るから私は強くなれるのです。
そ~思いました。


私は普通に歩いて角田に近づいて行きます。


暴走族の奴らが、私を見て笑っています。
おい! おい! 女の子じゃん! 小学生か
だよな! ランドセル背負ってるじゃん!
冗談じゃね~ぜ!
なにがタイマンなんだ! あほらしい!


暴走族の1人が空手部員に向かって叫びました!

おーーーーーーーーーーーーーーーーーい!


てめえらーーーーーーーバカにすんじゃね~ぞ!

お前ら全員ここでフクロにしれやらーーーーーあ!
1度にかたずいて手間も省けるってことだなーーーーあ!
覚悟しろよ~!

キャハハハ、、、、、ハハハハハハハハハ、、、

角田さん! あいつら全員やっちまいましょう!
本当にふざけた奴らだ!
なんなんだ、このガキは!


角田が片手を挙げて後ろの暴走族を抑えます。

私は角田に近づいていきます。
角田はうつ向いたままで動きません。


結構イケメンです。

角田は私の何かを読んでいます。
やっぱしバカじゃあない。
やり手だわ! 普通の人と全く違う!

私は角田の前5mピッタリで止まりました。
角田は全く動きません。

殺気も全く出しません。


私は言いました。

角田竜一か? 返事なし

私はセーラムーン野々村美沙だ。
私のタイマンをよく受けてくれたな!
感謝するよ!


なんでも、
タイマンってのは1対1の決闘で決着を付けるんだってな!
それが男のケチで阿呆らしい世界らし~な!
まあ、その くだらねえ事をする前に
ちょっとだけ話をしよ~じゃねえか。


角田!お前は間違ってるぞ!
バカげたことで自分を落とすんじゃね~。
南校の空手部に、もうこれ以上手出しなんてするな!
止めるんだ!
あいつらは今、変わろうとしているんだ。
それに杉浦先生だって、あんな目に合っても
お前を責めたりなんてしてね~んだ。
自分のせいだと言って涙を流してんだぞ!
お前だって本当は分かってるんじゃね~のか?
もうこんなバカなことは止めろ!

・・・

・・・ し~ん

・・・

ノー と言ったらどうする?

・・・

・・・

その返事はお前にとって賢明じゃあね~。

・・・

そ~か でもこの状況を作ったのはお前だ!

・・・

違うな!
お前が杉浦先生や空手部に仕掛けたんだ!
だから私がここに居る!


そ~か で、お前は俺のダチの前で俺をやっつけて
俺の顔に泥を塗って解決か?
それで満足か?

・・・

角田! それはお前次第だ!
お前がそ~したければ残念だがそ~なるだろうな。
だがな、それじゃあ、な~んにも解決なんてしね~


・・・ し~ん


角田!
お前は誰よりも強え~んだろ!
だったらその強さに裏図けられた勇気と愛で
みんなをリードしたらど~なんだ!(お兄ちゃんが言ってたの借りちゃった)
本当のダチを作れ!
もう悪いことは止めるんだ!
力でみんなを抑えて長続きするはずね~だろう!
お前だって本当は分かってんじゃね~のか?
もう楽になれ!

・・・

だが、この状況で俺にど~しろってんだ。
俺は今までタイマンで負けたことなんてね~んだ。
1度としてな!
だから俺のダチは俺に付いてきてるんだ。
奴ら悪だけど、今の俺にとってはダチなんだ!
悪は悪同士、メンツや信頼もあるんだ。


・・・

そ~か

じゃあ、こうしよう!
お前には悪いが、私がお前のダチと少し遊ばせてもらうよ。
お前のダチが居なくなった後で決着を付けるってのはど~だ?
お前が逃げたことにはならね~。
それに私は小学生だ。しかも女の子。
お前程の奴が私を相手にする方がおかしくね~か。
ど~だ?

・・・

・・・

お前! 美沙って言ったよな!
一目見て分かったよ、、、
ただもんじゃあね~ってな!
でもお前、なんでそんなに優しいんだ!

・・・

それは、私にはお兄ちゃんがいるんだよ。
私のことを信じていてくれてるお兄ちゃんがな、、、。
そして、ここに居るみんなも私を信じてくれてる。
だから私はセーラムーンなんだよ。

・・・

そっか、、、いいな~ うらやましいよ!
俺はいつかお前のような奴が現れると、そんな予感がしていた。
だが、小学生の女の子とはな、、、、まいったよ!
じゃあ分かった、お前の提案に乗ってみるか。。
美沙! 俺のダチ、怪我させんでくれよな、、、
ほどほどに頼む!

・・・ ああ! 心配するな! 手加減してやるよ!

角田が大きな声で叫びました。

じょーーーーーーだんじゃね~え!
俺がこんなチビを相手に出来るわけねーーーだろう!
バカにすんじゃねーーーーーーーーえ!
やーーーーーーーーーーーめた!
お前ら、勝手にしろーーーーーお!
角田はそ~言って自分のバイクに戻って行きました。

・・・

それを聞いた暴走族は一斉に奇声を発して
木刀を持ってなだれ込んで来ました。


おーーーーーーーーーい!
空手部員全員をまとめてフクロだーーーーーーあ!

やれーーーーーーーーーーーーーーえ!


きゃほーーーーーーーーーーーーお!


うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!


暴走族が木刀を頭上で振り回しながら、
空手部員に向かって一気に走って行きます。

私はその前に両手を広げて立ちふさがりました。


どけーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!

どかね~と、お前もケガするゼ!

お前になんて用はね~ 邪魔だーーーーーーあ!

そっちに用がなくてもこっちにあるんだよ~
空手部をフクロにする前に私を倒してからにしなーーーー!


バシッ! ドン! うえ~
バシ! ばしばしっ! ぎゃーーーーーーーーーーあ!
シュッ! ドバッ! ドン! ウッ!
バシッ! どたっ! ドン! うえ~ ウッ!
痛てーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
バシッ! どたっ! ドン!
何だ! バシッ! ど~なってる、、、
見えね~  何処にいる! シュッ! ドバッ!
ドン! ウッ! 嘘! マジデ! ぎゃーーーーーーあ!
ドバッ! ドン! ウッ!
ウッ! バシッ! どたっ! ドン! 速い、速すぎ!
なんだ、なんだ、、、ど~なってる?
どこだ! うえーーーーーえ! バン! やめてー!
おちんちん痛い! あーーー!
ウッ! バシッ! どたっ! ドン!


その時、美沙ちゃん!
危ない!


振り向くと木刀が振り下ろされてきます。

あっ! かわせない! しまった!


と、思った瞬間に美香ちゃんが
その暴走族に飛びついて


耳に ガブリッ! と噛みつきました。

ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!


その暴走族の男は地面に転がってのたうち回っています。

美香ちゃんが、更に飛びついて四つんばになって
両手の爪でめちゃめちゃに顔を引っ掻いています。


グエーーーーーーーーーーーーーーーーーエ! 止めろーーー!

なんだ~ こいつ サルか~ 助けて~

止めろーーーーーーお! 痛てーーーーーーえ!

逃げろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!


暴走族はみんな慌ててバイクに飛び乗って
大きなバク音を立てて1人残らず逃げて行きました。


な~んだ?
逃げ足だけは早い連中だわ!

後ろで声がしました。

先生~! 杉浦先生~!

振り向くと杉浦先生が片足ビッコ気味で慌てて走って来ました。


おい!

君たちこんな処で何やってんだ!
まさか暴力を振るってなんかないだろうな?

おい! ど~なんだ?

はい! 俺たちは何もしていません!
セーラムーンたちがやってくれました。

私は先生に丁重に頭を下げました。
そして言いました。
先生、会ってもらいたい人が居ます。
お願いします。

・・・

角田ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
こっちだーーーーーーーーーーーーーーーあ!

・・・

角田は少し躊躇しましたが、こちらに向かって
のそのそとゆっくり歩いて来ました。


みなが一瞬、うっ!と緊張して後に引きます。
無理もありません。
角田は背が高く、どことなく普通と違った感じです。
その角田が鋭い目つきで皆をジロ~っと見渡します。
皆は増々緊張します。

・・・

・・・

セーラムーン!

お前のタイマン申し込み、確かに受けた!
決着を付けようぜ!
俺も男だ! このままじゃあ収まらね~


そうか、そ~だったな!
やるしかね~な!
けじめをつけね~とな!


・・・


みんなが、うえ~っと言ってその場を離れます。

・・・ し~ん

・・・ 異様な空気が流れています。

・・・

角田がうつ向いたままで立っています。
気は全く感じられません。


強い! 私はそ~思いました。
それも恐ろしいほどに強い!
思ったよりははるかに強い奴だ、半端でない!
実践の中で身に着けた喧嘩殺法なんだ!
この強さで多くの人間を従え、
きっと皆に認められて尊敬もされて来たんだわ!
どんな攻撃をしてくるんだろう?
私には予想もつかない。。。勝てるだろうか?
分からないわ! 気が全く読めない相手!
いや、気を出さない相手だ!
私は初めて相手に対して構えました。
両手を軽く広げて腕を少し曲げて胸の前に上下に構えました。
自然にそうなってしまったのです。
正しく真剣勝負です。
来い! 角田!

・・・

・・・

なんという自然体なんだ!
まるで宙に浮いているようだ! 浮かんでいるのか、、、
俺は今までこんな相手を目の前にしたことはない!
この子は一体何者なんだ?
読めない、全く分からない! ど~動くのか予想もつかない、、
ただ、自然のまま、、ウブで、純粋で、汚れがまったくない。
俺は空気を相手に戦おうとしているのか、、、、
なんいう恐ろしい相手なんだ。。。
最初会った時からただ者ではないと直ぐに分かった。
俺が今までに経験したことのない相手だと直感した。
だか、これ程までにすごい相手がこの世に居るとは
全く信じられない。。。。
セーラムーン! 本当に実在していたのか?
あの構え! おれを誘っているのか、、、、?
そ~か、、じゃあ、その誘いに乗ってやろう!
行くぞ! セーラムーン!


・・・

シュ! バシッ!

・・・


角田が私の足元に崩れ落ちていきます。

私は手加減は全くしませんでした…
角田のパンチをすれすれでかわし鳩尾に拳を
斜め下から突き込みました。


あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ

みんなが一斉に奇声を上げる声が聞こえました。


おい! 今の何だ? お前今の見えたか?
イヤ! 全然見えなかった! 何が何だかさっぱりわからん!
速すぎる! とにかく速い! 一瞬の事で見えなかった!
こんなことあるのか? 信じられない!

角田は完全に気絶して意識を失ってしまいました。
そのままで起き上がりません。


あれれ~ ねむっちゃった!

美香ちゃん! お願い! ガリガリで起こして。

うん!


美香ちゃんが、
角田の顔を両爪でガリガリと掻きむしって

角田の耳に ガブッ! と噛みつきました。


ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

痛てーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!


角田は飛び上がって目を覚ましまし、美香ちゃんと私を見て
我に返りました。
そして、


うーーーーーーーーーーーーーーう! と痛そうに、

鳩尾に片手を当ててうめき声を出しながら
もう一方の手で耳を押さえています。

・・・
角田! 痛いか!
その痛み忘れんじゃね~ぞ!
・・・

俺、ど~なったんだ? 何が起きたんだ? (角田)


私は言いました。
角田! お前は負けたんだよ!
お前は負けた!
生まれて初めてタイマンで負けたんだよ!

俺がタイマンで負けた?


そ~だ!

・・・

ど~だ角田!
楽になっただろう!
いつまでも突っ張って生きてんじゃね~よ
負けてもいいんだよ!
それを認めて再出発すればいいんだ!
くだらね~ことにこだわってるんじゃね~
早く自分を取り戻すんだよ!
お前なら変われる!
変わるんだよ!
美沙! お前! なんでそんなに優しいんだよ。
さっきも言っただろう
私はセーラムーンだってな!

・・・

・・・

俺の負けだ!
想像通りだった!
野々村美沙! セーラムーン!

・・・
・・・・・・ありがとう!


角田は起き上がってみんなの処へ歩いて行きました。

皆の前に来ると先生や空手部員の顔を見回しました。
そして、ゆっくり膝を落として言いました。


杉浦先生!
本当に申し訳ありませんでした。
空手部のみんな! 本当にすまん!
俺は先生や皆に酷いことをしてしまった。
俺は弱い人間だ。
だから無理して強がってたんだ!
こんな俺を許せないかもしれないけど
俺は今やっと気が付いた。目が覚めたよ!
俺はど~かしていたんだ!本当に反省している。
もう今後はこんなくだらないことは2度としない。
約束する。
本当にすまん!

そ~言って地面に両手をついて頭を下げました。

地面に光る涙がポトポトと落ちていました。

・・・

・・・

ピーナツバターが言いました。

許すよ! 角田さん! 許すよな~! みんな~

ああ、、、許すに決まってるじゃん、な~


おおおお、、、許す! 許す!


20人の空手部員たち全員が笑顔でそれぞれに
許すという言葉を口にしました。

杉浦先生が腰を落として角田の肩に手を掛けて言いました。

角田!
すいぶん苦しんだんだろうな!
でも先生はこんなに嬉しいことはないよ!
教師になって本当に良かった!
先生は本当に幸せだ! ありがとう!
ありがとう 角田!

角田は杉浦先生に抱きつきました。

みんなの笑い声が聞こえます。


美沙ちゃん! 良かったね!
そ~言って、美香ちゃんが私に嬉しそうに笑いました。

うん! よかった~


美沙! 俺、また1人になっちまったけどさ、
もう1度頑張ってみるよ。

な~に言ってんだ角田!
お前は一人なんかじゃね~!


今から、ここに居る全員がお前の本当のダチだ!
お前は一人ぽっちじゃあない!
角田! お前は変わったんだよ!
人はみんな変われるんだよ!
さっきの私のパンチは
お前のリセットボタンを押してやったんだよ。
ちょっぴり痛かったかもしれないがな!
押してもらいたかったんだろう、、、、


美沙!
お前のタイマン申込みの意味が分かったよ。

「お前を一人ぽっちにはしね~!」

そ~書いてあったな!
これの事だったんだな! 俺は一人ぽっちじゃないんだな!


あ~ そ~だ!
今ここに本当のダチが20人も出来たじゃないか。
頼りね~奴らだがな、仲良くやって行こうじゃないか!

そっか~ 本当のダチか!(角田)
みんな有難う。こんな俺だけどよろしく頼む!


みんながうなずきます。

ピーナツバターが言います。
俺たちみ~んな本当のダチだよな!


おう! (一斉に)

パンダが言います。
中には可愛いツインテールのダチが何人かいるけどな~
でも、俺たちより頼りになるか! ハハハハハハハハ、、、、

美香ちゃんと私は少し照れてケラケラと笑いました。

杉浦先生がそんな私を見つめています。


先生! 私、先生にはめられちゃったよ!
さすがですね、先生!
そう言って先生の肩を思いっ切り叩きました。

ドン!
あ、いたたたあ、、、、、、でも嬉しそう

私はめちゃめちゃ嬉しくなって、
片手をグーに握って空に真っすぐに挙げて言いました。


よ~し! みんな~ 夕日に向かって走るぞーーーーーーーお!


橋の上に大きな真っ赤な夕日が輝いています。
それに向けて私は全速で走って行きました。

すぐ後ろに美香ちゃんが走って私を追いかけて来ます。
美香ちゃんが可愛い声で嬉しそうに言います。
私はガブガブ噛みつきセーラムーンなんだよ~、、、、


よ~し! 俺たちも美沙と美香の後を一緒に走ろう!


おーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!


ピーナツバターが言います。
角田さん、俺たちと一緒に走りましょう!


俺も一緒に走っていいのか?

勿論ですよ! さあ。。。走りましょう!

よし!


みんなが走って来る音が後ろから聞こえました。


パタパタパタパタ、、、、、、パタパタ、、、


杉浦先生がそんな私たちを笑顔で見つめています。
ありがとう! セーラムーン 君を信じてよかった。
無理なことを頼んだな。。。。。
でも、さすがだよ、
またどこかで君に会えることを楽しみにしているよ。
野々村美沙! 俺は君を忘れない!


パタパタパタパタ、、、、パタパタ、、パタパタ、、


あっ!
橋の下に誰かが立ってる。。。。誰なの?


だれ?
少しづつ見えて来ます。
誰だろう? こっちを見ているわ、、、


あ~

お兄ちゃん? なんで?

なんでか、分かんないけど、間違いないわ!


お兄ちゃんだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!


私はお兄ちゃんの処へ必死で走って行きました。
お兄ちゃんが両手を広げて私を待っています。
だから私は必死で走って、思いっ切り
お兄ちゃんの胸の中に飛び込みました。


お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん!


お兄ちゃんがしっかりと私を受け止めてくれました。
だから、
私はお兄ちゃんのその胸の中で聞きました。

お兄ちゃん! ど~してここに居るの?


ああ。。。
美沙がお兄ちゃんの夢の中に出て来ちゃってさ、
急に心配になって帰って来たんだよ。


ふ~ん 私の事が心配して帰ってきてくれたんだ!
そ~さ、
美沙! お前、頑張ってるんだな~
うん! わたし、いっぱい頑張ってる!
お兄ちゃんに言われた通り、
勇気と愛を持ってやってみた。
そ~か、、そ~か、、本当によ~く頑張ったな!
さすがにお兄ちゃんの妹だ!
お兄ちゃんも嬉しいよ!


美沙!
でも疲れたろう、、、もう楽にしていいぞ!
お兄ちゃん、、、もういいの? これでよかったの?
あ~ お前は良くやったさ、、、もう立派なリーダーだ!
本当? 嬉しい、、、でもな、少し休め、美沙!
疲れた時は休んでもいいんだよ、、いいな!
うん!


お父さんもお母さんも美沙を待っているよ。
お兄ちゃんと一緒に家に帰ろう!
うん!


私はお兄ちゃんに抱っこされたまま気持ちが良くなって
そのまま眠ってしまいました。
お兄ちゃんの体から新鮮な勇気と愛の匂いがしました。
お兄ちゃん! ありがとう!





美香ちゃんが助走して「エイ!」片足で踏み切り
バーに向かって高く飛び上がりました。

お尻がバーに触れて!

ガタン! ドン! バーが落ちます。
美香ちゃんは、残念そうに片手を大きく振って
顔をしかめます。


よ~し、次は私の番だわ!
絶体に飛んでやる! 
とにかくスピードが一番なんだ! よし!

私はスタート地点で片手を上にあげて助走に入りました。
力いっぱい走ってバーに向かっていきます。


ダダダダダダダダダダアダ、、、、、ダダダダダダ

あーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

踏み切れな~い! ジャンプできな~い!


そのまま直進でバーを両手に掴んで、


うわ~あ、、、、、、ど~ン!

クッションに頭から突っ込んでしまいました。


私が起き上がるとみ~んなが私にパチパチパチパチと
手を叩いて、転げまくって笑っています。 くそ~!


5時限目の体育の授業です。

はーーーーーーーーーーーーい! 集合!

先生の声でみんなが一カ所に集まって座りました。

いいですか、走り高跳びは助走が大切です。
助走と言うのはタイミングを合わせる事です。
自分の体と気持ちが完全に一致した状態で
ジャンプすることがポイントなんだ。


ただ、みんなに知ってもらいたいのは
この走り高跳びでいかに高く飛べるかどうかよりも
今までの自分と比較してどれだけ上手く
飛べるようになるかってことが大切なんだ!


自分に対してのチャレンジなんだ。
人と比べてどれだけ高く飛んだということじゃあない。
この競技に限ったことじゃないが、
体育を通じて健康な体を作って自分の将来の
夢を叶えるために役に立てるんだ。
勉強だって同じだ。


先生が思うには、
もし人生に尺度があるとすれば、
それは、いかに自分が多くの人のために役だったかが
尺度だと思ってる。

そのためには体を鍛えないと何もできない。
弱い体や病気になっては何もできない!
君たちはまだ高2だ!とても若い!

しっかり体を鍛えて人のためになる人間になりなさい。
そ~思ってバーに向かって大きくジャンプするんだ!
今の自分より少しでも高く飛び上がるんだ!
バーに向かってではない。
夢に向かって力いっぱい高くジャンプするんだ!


いいね!


はい! 杉浦先生!


人生の尺度か~あ、、、
いかに多くの人のために役だつかが尺度。。。


夢と幻想の森