———————東京———————–
美沙ちゃん! 東京ってめちゃめちゃ人が多いんだね!
この人たちみ~んな何処で生活してんだろうね?
何処でって、マンションとかアパートとか寮とか自分の家とかじゃない、、
人によってみんな違ってると思うわ。
学生なんかはアパートや寮なんかが多いんじゃないかしら。。。
私の兄は今は、
大学の近くのマンションに住んでるわ!
以前は大学の寮に住んでたの。
ふ~ん、、、、
あっ! 美沙ちゃん! 見て! 見て!
あれ、スカイツリー!
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
本当だ!
東京スカイツリーだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
すっごいな~ あんなに高いんだ!
私も実物を見るのって初めてよ、高さが600m以上あるんだって!
展望台から見た景色ってどんなんだろうね?
時間が有ったら、登っちゃお~か。。。。うん!うん! 賛成~!
お兄ちゃんに会ったら、案内してもらおうね! わ~ 楽しみ!
じゃあ、早く今井先生の処に行っちゃおう!
今の時間だと、きっと大学の合気道部の道場に居るはずよ。
お兄ちゃんもきっと居るはずだわ。
美沙ちゃん、
私、今井先生と又一緒にケーキ食べるの楽しみだな~
先生、お元気にしているかしら?
さあ、とにかく行こうか、美香ちゃん!
うん!
美香ちゃんと私は大学のキャンパスを通って武道場へ向かいます。
キャンパスは以前兄が案内してくれたと同じ、のどかな雰囲気で
大学生たちの伸び伸びとした空気に溢れていました。
高校の制服とは違って女の人の色んな私服コーデはとても
大人っぽく見えました。
美沙ちゃん、あそこ、ほらほら あそこ、
向こうの木の下に居るカップル、、、
仲がよさそう。。。きっと恋人同士だよ!
どこまで進んでるんだろうね、
最後までいっちゃってるとかさ、、きゃはー
美沙ちゃん、
ここが美沙ちゃんのお兄ちゃんが通ってる大学なんだね。
素敵だな~あ、、、、
夢と希望がいっぱい溢れてる。いいな~
私もこんな空気の中で勉強をしてみたいな。。。
で、素敵な彼氏みつけちゃってさ。あ~ あこがれちゃう。。
勉強をするって事は大学に入ることが目的じゃないんだね。
本当の自分を見つける場所っていうか、、、
自分の夢が何なのかを探すって言うか、、、
夢と希望に近づくってことなのかもしれないわ。。。
杉浦先生の言ってた、夢に向かってジャンプって意味が
分かるような気がするな~
私もしっかりと勉強をして、こんな生活を自分の物にしたい!
そして本当の自分の夢に少しでも近づきたいな。
・・・ 美香ちゃんは心の中で何かを強く感じている風です。。
美香ちゃん、
目が輝いてるね! 勉強の意味が分かったんだ。
私たちお互いに勉強をしっかり頑張ろうね!
で、お互いの夢に少しでも近づけたらいいわね。
そして素敵な恋人だって見つけちゃおうよ!
うん!
私たちは広い芝生の中の道を通って武道場に向かいました。
今井先生、いらっしゃるかな~?
電話が通じないからメールしといたんだけど、
見てくれたのかな~?
で、メールの返事はあったの美沙ちゃん?
それが、ないの!
えーーーーーーーーーーーえ! じゃあ、
私たちが来ることを今井先生は知らないの?
うん!
そんな~ 美沙ちゃん、それって無計画すぎるよ~
そっかな~
でも、東京でお兄ちゃんに一番会える場所ってここだし
今井先生や紀子さんも居るのよ、、、多分
とにかく行動しなっくちゃ、、。
お兄ちゃんとの連絡がつかない以上マンションに行っても
会えない気がするし、
今は今井先生にお聞きするのが一番早いと思うし、先生が今ここに
いらっしゃらなくても部員の人に先生の居場所を聞けちゃうしね。
だから、先ずはここに来るしかないの。
そっか~あ、よし、じゃあ
覗いてみようか。。 うん!
靴をきちっと揃えて裸足になって武道場に入っていきます。
多分40人位の男の人や女の人が合気道のハカマ姿の道着で組になって
気合を出しながら練習をしています。
やはり女子の部員が多く目立ちます。
あっ! 美香ちゃん! あれ!
思った通りだわ! 今井先生だ!
やっぱし私の想像通りだったわ。
今井先生はきっとここに居るって思ってた。。。
よかったわ!
そ~みたい。。。
で、美沙ちゃんのお兄ちゃんはどこ?
紀子さんはどこかしら?
・・・ キョロキョロ、、、キョロキョロ
う~む、、、 居ないのかな~
今日は休みとか。。。?
おかしいな~?
2人が練習を休むなんて考えられないしな~
でも、最近、何か別の事で忙しいとか言ってたみたいだから。。
やっぱし今井先生に直接に聞くしかないわね。 うん!
・・・
ねえ、見て!
今井先生が、皆の前で合気道について何か説明を始めるわ。
美沙ちゃんのお兄ちゃんの事は今井先生に後で聞くってことでさ、
少し見学しちゃおうか。。。
だね。
私たち2人は道場の端っこに並んで
正座で見学することにしました。
ちょうど練習の区切りで皆が列を作って
フロアーに座り先生の話に注目しています。
私は小5の時のことを思い出していました。
あの時、ちっこい私はここでお兄ちゃんと一緒に
同じフロア―に座って今井先生の話を聞いたのです。
ちょうど6年前の事でした。
私はその時、
合気道の先を読むことは人生そのもだということを今井先生に教わりました。
今井先生がみんなの前で何かを話しています。
今井先生が言います。
皆さんは、合気道という武道を通じて多くの事を
学ぶことが出来ます。
技の気を読むことは、相手の心を読むことに繋がっています。
また、技の先を読むことは、相手の動きを読むことに繋がっています。
それは社会においても、全く同じことが言えます。
それを合気道の技を通じて皆に学んで欲しいのです。
合気道をやる意味は勿論自分のためのです。
ですが、それは半分です。
残りの半分は他の人や社会のために役立てることが
大切なことです。
正しい考えが出来る立派な人間になりなさい。
困難な事にぶつかっても決してくじけない
本当に強い人間になって欲しいのです。
強さに裏づけられた勇気と愛を持った人になるんだ!
合気道の先を読むことは人生そのものなんです!
いいですか。
・・・ と、その時です。
一人の男子が手を挙げました。
先生!
言いにくいのですが、空手部の連中からは
合気道なんてダンスと同じだって言われています。
いくら考え方が立派でも、やられてしまっては意味がありません。
キレイごとにしかなりません。
強さに裏づけられた勇気と愛と言われますが、その強さが
空手に簡単に敗れてしまっては愛を貫くことは出来ません。
どう考えたらよいのか教えてください。
他の男子も言いました。
空手と合気道はどちらが強いんですか?
先生!
教えてください! お願いします。
1人の女子が言います。
あんたたち何バカなこと言ってんのよ!
空手と合気道のどちらが強くても、そんなことどっちでもいいじゃない!
そんなレベルの低いこと言わないでよ!
合気道は護身術なんだから、それでいいじゃない!
別の女子が手を挙げて言います。
私的には空手の方が強くて喧嘩をするのなら空手かな~
でも合気道が空手より弱くても女の子にも出来ちゃうし
だから、現実に女子部員が多いんでしょう。
空手と比較するなんてナンセンスだよ!
じゃあ、お前は合気道は空手より弱いっていうのか?
そんなことを最初っから認めて悔しくはないのか?
ダンスなんて言われて腹が立たないのかよ!
別に悔しくなんて無いわ!
私は女子だし!ダンスも大好きだし。。。
ダンスは優雅でキレイでしょう、、、
てことは、合気道がキレイだってことだわ。素敵じゃない!
そんなに負けるのがヤダったら、あなたは空手部に行ったらいいじゃない!
別の女子が言います。
男子っていつも勝ち負けの事しか考えていないわ。
どの武道だって強い人は強いし、弱い人は弱いのよ!
結局、あなたが弱いからそんなこと考えているだけじゃないの?
最低だわ。
なに~ (男子がその女子を睨みつけます。)
・・・
美沙ちゃん!
私たち、大変な時に来ちゃったのかもね。
以前とは少し雰囲気が違ってるような気がするわ、、、
今井先生、ど~対処するんだろうね?
そ~だね。
やっぱし指導者って、すっごい大変だわ。。。
今井先生が言います。
私は合気道は素晴らしいと言ってきた。
だが、空手も素晴らしい武道だと思っている。他の武道だってそうだ。
武道に形や考え方に違いがあったとしても、目指す方向は
同じだと信じているんだよ。
だから、合気道が空手よりも弱くても強くても構わない。
どちらでもいいんだよ。
比較をすること自体が意味のないことだ。
本当に強いという意味が理解できない内は、
君たちも今のような議論を永遠に続けていくだろうがね。
合気道を他の武道と比較して論ずる気持ちは分からないでもない。
だが、その前に比較しないといけないのは、
今の自分と将来の自分との比較だと思うがね。
あくまでも比較するのは自分自身の問題なんだよ。
合気道の鍛錬を行っているのは君たち自身に他ならない。
だったら比較すべきはあくまでも君たち自身のはずだ。
武道同士の比較ではない。
・・・
じゃあ先生!
本当の強さとは一体何ですか?
ハッキリ言ってください!
女子が言います。
あなた! もうやめなさいよ。
同じことの繰り返しじゃない。
もうそれ以上あなたの話は聞きたくないわ。止めなよ!
・・・
先生が言います。
1つ言えることは、合気道は目的ではない。
単なる手段なんだ。
道具にすぎないということなんだよ。
だから、合気道にこだわらなくてもいい。
そこから新しい価値のある物を作り出すことに意味があるんだ。
皆の中でそれぞれがその価値を作り出し、
世の中のためになる人間になることが大切なんだよ。
それが合気道だ。
・・・
美香ちゃん!
今の先生の言葉、聞いた?
うちの高校の空手部の連中と同じことを先生が言ってるわ。
あいつら高校生なのに今井先生と全く同じことを言ってる。
そ~だね美沙ちゃん、
てことは、あいつらまんざらでもないかもしれないね…
私たちが空手部に入部したのは正解だったかもしれないわ。
変な顔した奴ばっかしだけど、いい人たちなんだ。
うん!
・・・
今井先生!
先生の言われることは分かりました。
ですが、僕はど~しても強さにこだわってしまいます。
先生! お願いします。
僕と勝負してください!
僕は高校時代には空手をやっていました。
全国大会にも出場しました。
入賞も果たしました。
ですが、先生の本を読んで、噂も聞いて空手部を辞めて
2か月前にこの合気道部に入部させていただきました。
今井先生の強さにあこがれて空手を辞めたのです。
ですから、失礼だとは思いますが、
ど~か、僕を納得させてください。
先生がご立派だということは分かっています。
先生の考え方や教えについては素晴らしいと思っています。
尊敬もしています。
ですが、僕はこのままだと ど~しても何かが腑に落ちません。
無条件に納得できないのです。
お願いです。ど~か、、、僕の相手をしてください。
今井先生に勝てるなんて思ってもいません。
ですが、僕はまだ先生の真の技に接したことがありません。
だから、だから、
僕の空手と先生の合気道と勝負させてください。
おい! 仙田! お前! 何を言い出すんだ。
先生に失礼だろう!
先生に勝負を申し出るなんていい加減にしろ! バカ!
それに先生は今、足を怪我していらっしゃるんだぞ!
勝負なんて出来るわけないだろう!
お前だって知ってるだろう! 分かってるだろうが!
知ってるさ、でも先生は波動の術を使えるって
本に書いてあった。
みんなだって知ってるはずだ!
俺は先生の技を見てみたいんだ!
皆だって内心はそ~思っているんじゃないのか?
本心は、それを見てみたいと思ってるだろう!
先生は波動の術を本にまで書いておられるのに、俺たちには
1度としてその技を見せてくれないじゃないか。
皆の中には、疑っている者だっているんじゃないのか?
波動の術が本当なら、足の怪我なんて関係ないじゃないか!
そ~だろう!
・・・ し~ん
俺は先生を空手で攻める!
さあ、みんな、ど~する?
波動の術を見たい者は俺を止めないでくれ! いいか!
・・・
・・・ し~ん
・・・
美沙ちゃん、
あいつ、本気だよ!
うん! そ~みたい!
美香ちゃん、
今井先生の足の怪我なんだけど、かなり重症だわ!
とても、合気道の技なんて使えない!
波動の術なんて、なおさら無理だわ!
私には分かるのよ。今の先生の状況が。。。
先生は今、立ってるのがやっとだわ。。。
きっと皆にはそんな素振りを見せていないだけよ。
え~~~~~~~~~~~~~~~~~え! そんな~、、、
美沙ちゃん、何とかならないの、、、
今の流れからすると、あいつ本当に本気で先生を攻撃しちゃうわ。
私が先生の代わりに出て行こうか?
・・・
待って!美香ちゃん!
ダメだよ!
そんなことすると先生の立場がなくなっちゃう。
じゃあ、ど~したらいいの?
なんとかならないの美沙ちゃん?
なんとかしなくっちゃ!
・・・
と、その時です。今井先生の声が聞こえてきました。
・・・ 美沙君! なんで君がここに居るんだ? 美香君も!
・・・ 今井先生、指導するって大変なんですね。足のお怪我は大丈夫ですか?
・・・ いや~ 山で修行しててね、足をちょっとやってしまったんだよ。
・・・ ど~します? この男子、真剣ですね!
・・・ ど~したもんだろね~ やられっちまおうかな~、、、?
・・・ それはダメです! 先生がやられたらこの部は全滅です。合気道が全滅です!
・・・ とりあえず、私の力を使ってください。
・・・ 美沙君の力を? そ~か で、ど~したらいいんだ?
・・・ やったことはありませんが、私のエネルギを先生に送ります。
先生は出来るだけ格好をつけてください。
・・・ みんなが納得できるような格好のいい素振りをお願いします。
・・・ ふ~む、、、よし分かった。じゃあ頼む! 後でケーキ楽しみにしててくれ!
・・・ は~い
・・・
腹パンチにうずくまる女の姿 中里美穂編
腹パンチにうずくまる女の姿 川越ゆい編
仙田が空手の構えで今井先生にじわじわと近づいて行きます。
合気道部の約40人の部員たちが息をのんで見つめています。
部員の誰一人、仙田を止めようとはしません。
仙田が話した内容を他の部員たちも思っているのかもしれません。
・・・ し~ん
道場に一瞬静けさが訪れて、異様な雰囲気にのみ込まれていきます。
みんなの視線が仙田と今井先生に集中します。
もしここで今井先生の波動の術が見られなかったら
部員の多くは完全に失望してしまうかもしれません。
そんな流れになってしまったのです。
こんな大変な時に私たち2人が来てしまったのは、
何かの因縁なのでしょうか。
・・・
仙田が空手の構えで先生に向かってじりじりと近づいていきます。
今井先生は自然体で仙田の動きに気を合わせます。
・・・
と、その時です、
仙田が素早く1歩前に踏み出して、
パンチと蹴りをほぼ同時に繰り出します。
ヤア! シュッ!
と、次の瞬間、
今井先生の体がほぼ3mほど上に パッ!と舞い上がり、
ゆっくりと仙田の後ろに着地しました。
うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
部員達から一斉に歓声が沸き上がります。
ですが、それは普通の歓声ではありません。。。
あり得ない出来事を見てしまった衝撃的な驚きの歓声です。
仙田は突然に消えた今井先生を何が起きたか分からないまま
キョロキョロと首を振って探しています。。。
かなり困惑している様子です。
無理もありません。
攻撃した相手が目の前から突然に姿を消したのです。
その非現実的な現象に誰が心を乱さずにいられるでしょうか。
絶対にあり得ないことが仙田の目の前で実際に起こったのです。
そ、そんなバカな! あり得ない!
一体ど~なってる。。。どこだ?
その内、仙田は後ろの先生に気が付くと、走るようにして
何歩か先生に近づいて行きます。
今井先生はその仙田に片手を広げて前に押し出し、
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
と気合を入れました。
すると仙田の体はまるで風の中に木の葉がに舞うように
吹き飛ばされて道場の一番端の壁板にぶつかってしまいました。
・・・ ~ ドーーーーーーン!
仙田の体が大きな音と伴に壁に叩きつけられました。
え、嘘!
・・・ し~ん
・・・ し~ん
沈黙の時間が続きます。。。。。。。。。。あり得ない!
絶対にあり得ない。。。。。でも起こってしまったのです。
約40人の部員がただあ然として、
その信じられない出来事を眺めています。
・・・
い、い、今の、、、嘘だろう~
・・・
み、見たか、、、見たよな! あれ!
、、、今のなに? 何って今のだよ!
し、し、信じられない!
現実だよな、、、お、おい、夢じゃないよな、、、
絶体に夢じゃないよな! ああ、夢なんかじゃない!
現実の事だ!
でも、ど~解釈すればいいんだ? バカ!俺に聞くんじゃねえ~!
俺たち、
とんでもないものを見てしまったんじゃないのか?
本当に今の嘘じゃないよな、、、?
人間が空を飛んだんだぞ!
先生が、先生が、、、空を飛んだ!
それだけじゃない、相手に触れずに投げ飛ばした!
そんな事が、、、、あり得るのか!
絶対無いよな、、、だって、人が空を飛んだんだぞ。。空を!
な~あ これってやっぱし夢か、、、
・・・
イ、イヤ違う! だってここに居るみんなが目撃したんだぞ!
間違いない、、、現実だ、、、、
かなりヤバイのと違うか?
目撃者は全員抹殺されるとか!
なんでそ~なるんだよ、バカ!
じゃあ、
あ、あれが、、、波動の術!
そうだ、間違いない! あれは波動の術だ!
すごい、凄すぎる! あんな技、、
本当に人間にできるのか?
信じられない! 私もだわ、俺もだ!
誰だってそ~だ、、、、、、
それに誰に話しても絶対に信じないさ、、、
話せばキチガイ扱いにされるだけだ!
今井先生が本の中で書いていたことは本当だったんだ。
これが今井重徳師範の波動の術!
俺たちの監督の今井先生だ! すげ~
・・・ し~ん
沈黙の時間が続きます。
・・・ し~ん
絶対に信じられない出来事が目の前で起きた時
人間はただただ茫然として声が出なくなってしまうのでしょうか?
SFの世界が現実の世界で目の前で起きてしまったのです。
仙田が壁から起き上がり、
ふらつきながら今井先生に歩いて近づいて来ます。
表現の出来ない奇妙な表情をしています。
驚いているのでしょうか、感動しているのでしょうか、
笑っている様にも涙を流しているようにも見えます。
先生! 今井先生!
俺、、ど~なったんですか、、、?
頭が変になったんでしょうか?
先生が急に消えちゃいました。
そればかりか、急に吹っ飛ばされて、、、あ、痛い、イタタ、、
当の本人は自分に何が起こったのかよくわかっていない様子です。イテテ、、、
・・・ イテテ、、、あ痛い!
仙田が腰を手でさすりながら言います。
ところで、先生!
あそこに部外者が2人居ます。
高校生みたいですが、誰なんでしょう?
そ~言って私たちの方を指さしました。。。
今井先生が私たちを手でこっちこっちって呼び寄せました。
美沙ちゃん、先生が呼んでるよ。
みたいだね。
行こうか! うん!
美香ちゃんと私はみんなの失礼にならない様に壁に沿って歩き
前の先生の処へ出ていきました。
美香ちゃん!
私、恥ずかしい!
みなさん 紹介したい人が居ます。
ここに居るのは、私の直弟子で友人でもある美沙君と美香君だ。
美沙君は皆さんの指導をしてくれてる野々村健一君の
妹さんです。
そしてこちらがその親友の美香君だ!
私は緊張しながら皆にあいさつしました。
みなさん、こんにちは、野々村美沙です。高2です。
いつも兄がお世話になって有難うございます。
今井先生とは少5の時からの仲良しです。
美香ちゃんがあいさつします。
皆さん山口美香です。
美沙ちゃんの仲良しの友達で高2です。クラスも同じです。
今井先生とは最近ですが、美沙ちゃんと一緒にケーキ友達です。
武道場が何やらざわざわとしてきました。
おいおい、、、嘘だろ~ 今井先生の直弟子だって~
あの子たち女子高生じゃん。。。
それも可愛すぎるよ。。。キレイだし。。。一体どこで
先生は知り合ったって言うんだ?
言ってるじゃんか、健一さんの妹だ。。。そっか~
でも先生の直弟子ってど~いうことよ?
あの子たち本当に合気道と関係あるのか?
今井先生が言います。
この2人はね、私の直弟子なんだよ!
技術的にもレベルは特別に高いんだ。
私以上だ!
ざわざわざわ、、、、ざわ、、、
みんなが顔を見合わせながら互いに何かを話しています。
その時、男子の部員が言いました。
先生!
それはないでしょう? 冗談は止めてください!
今の武道会で先生以上の人はいらっしゃらないです。
いくら何でも、先生を上回るなんて誰も信じられませんよ!
それに女子高生ですよ!
女の子ですよ!
こんな可愛い子が先生以上だなんて冗談にしか聞こえません!
からかうのは止めてください!
そ~かね。
私は今まで合気道の究極の技を、やたらと披露するのは
好きでなかったんだがね、
だから、今日までそれを控えて来たんだ。
私は今まで合気道の本質を君たちに説いてきた。だが、
君たちは合気道の技の本質をまだよく理解していないかもしれない。
だが、この2人はその本質を誰よりもよく理解している。
勿論、技においても、
君たちが何人かかっても倒せない程の達人だ!
・・・ し~ん
先生!
この女子高生達が合気道の達人だとおっしゃるのですか?
しかも、俺たちが何人かかっても倒せないほどの達人だと!
それも先生以上だと!
ああ、そうだ!
先生! いくらなんでもそんなことは信じられません!
バカげています。
そ~かね、じゃあ、
現状を知るいいチャンスだと思って試してみてもいいぞ!
やりたい者はやってみなさい。
・・・
え~~~! 今井先生! (私)
そんなこと言っちゃっていいんですか~?
私たちはそんなつもりじゃないんですが、、、、
気にしなくていいんだ!
成り行に任せてみるのも、たまにはいいじゃないか。。。
部員達の中で根性のある者は出て来るし、信じない者は、それも良しだ!
はあ、 でも、、、、
あれれ~ 男の人が何人か前へ出て来るわ、
美香ちゃん、ど~するの?
え~ 7~8人は居るわ!
美沙ちゃん、 (美香ちゃん)
先ず、私がやってみる、いい!
お先だけどゴメンネ!
ど~せなら私、しっかりやっちゃうからね!
美香ちゃんが男子たちに向かって言います。
私は今井先生の直弟子です。
1番弟子はそこにいる美沙ちゃんで、
波動の術も使えちゃうんだからね。。。
そ~言って前に居る8人の男の人に向かって構えました。
え~~~~~~~~~~~~~~~~~え!
美香ちゃん!
そんなこと言っていいのかな~
それに、美香ちゃんの構えって空手になってるよ!
横で見ている仙田が言います。
おい! お前! 空手をやってんのか?
それって、おい、おい、、、
その構え、空手じゃんか、、、、合気道じゃないのか?
そ~よ、私は合気道流の空手をやってるの!
武道に空手も合気道も無いわ。。
これが、私の新しい武道なの!
どこからでもかかって来ていいわよ。
ツインテールのセーラ服の美香ちゃんを8人の男子が取り囲みました。
次の瞬間、
8人の大きな体の男子が一斉に美香ちゃんにかかって行きました。
エイ! ヤア! バシッ!
一瞬の事です。
うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
嘘だろう!
絶体に嘘だ! 信じられない!
ドン! バタン! すどん! ポン! ばしん! ・・・
嘘!
こんなことあるはずない!
悪い夢を見てるのか俺たち!
女子高生だぞ! 高2の女の子だぞ!
速い! めちゃめちゃ早すぎる!
なんだこれ~?
8人全員が床に倒れています。
その全員が何が起きたか理解できない様子です。
そして、
美香ちゃんは、みんなに向かって
握った拳を真っすぐに伸ばし切ってピタッと止めて、エイ!
うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
一斉に声が沸き上がります。
合気道だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
すげ~~~~~~~~~~~~~え!
美香ちゃん!
スッゴイよ、格好いい!
美香ちゃんって、段々上達してきてるわ。。。
動きが速いし、完全に相手の気を合わせて先を読んじゃってる。
美香ちゃんが言います。
みなさん!
次は、今井先生の1番の直弟子の美沙ちゃんが
波動の術を披露してくれます。
だれかお相手をしてくれませんか~あ、、、、
え~美香ちゃん!
そんなこと勝手に言っていいのかな~?
私、急に言われちゃっても、、、、今井先生に許可をもらわないと、、、
私は今井先生の方を見ました。
すると、先生はただニコニコして私を見ているだけです。
・・・
え~ いいってことなの~
するとその時、横に居る仙田が空手の構えをして
私に向かって近づいて来ました。
え~ この人、まだ懲りてないんだ!
あ~ 変な感じになっちゃったけど、
この状況じゃあ、何かをやるしかないのかな~
じゃあ少しだけやっちゃおうっと。。。。
でも、何か変わった事ないかな~あ~?
ど~しちゃおう、、、、?
私は、ただ自然体でその場に立っていました。
美香ちゃんと先生が横に引いて離れていきます。
みんなが仙田と私に注目しています。
・・・ し~ん
仙田が一気に前に出て私のお腹をめがけて空手のパンチを
出しました。
エイ! パンッ!
私は仙田の空手パンチをお腹で受けました。
ていうか、時間のずれでパンチをかわしました。
あっ! ~ 美沙ちゃん!
パンチが当たっちゃった! なんで~?
なんでかわさないの~? なんで飛ばないの?
武道場がざわめきはじめました。
仙田のパンチが当たるなんて
予想もしてなかったのでしょう。
直ぐに蹴りがお腹の同じところに飛んできます。
その蹴りもお腹で受けました。
エイ! ヤア! バシッ! バシッ!
セーラ服のお腹の部分が乱れるようにたなびきます。
間違いなくパンチも蹴りも当たっているのが誰の目にも
明らかです。
エイ! バシッ! ヤア! パン! ヤアっ!
パシッ! エイ! バシッ! ヤア! パン!
パンチと蹴りがお腹に当たる鈍い音が響きます。
エイ! バシッ! ヤア! パン! ヤアっ!
パシッ! エイ! バシッ! ヤア! パン!
おい! あの子、大丈夫か~
もろに仙田の空手の突きと蹴りをくらってるぞ!
彼女の腹、このままじゃ、ヤバイぞ! つぶれてしまう!
内臓が破裂するかも。。。。
一体、ど~なってるんだ。。。?
、、、でも、、、何かが変だ!
・・・ ?
え! 仙田の様子がおかしいぞ。。。
あいつ、一体ど~したって言うんだ?
仙田の様子が絶体変だ。。。
一体あいつ何やってんだ? ど~したって言うんだよ。。。
何だか体がフラフラしてかなりしんどそうだ。。。
汗びっしょりで、息がめちゃめちゃ乱れてる。。。
ど~なっているんだ。。。?
あいつ、様子がおかしいぞ! 何かが変だ?
仙田が気を取り直して構えを付けて、
私に向かって近づいてきます。
澄み切った目をしているな~と思いました。
でも、このままだと同じことの繰り返しです。
なにかしら少し技をしないと収まらないみたいです。
ゴメンナサイね!
さあ! 来なさい!
次は私は動くからね!
・・・
仙田が空手のパンチを出したその時です。
私は3m程宙に舞い上がり仙田の後ろに着地しました。
きっと仙田の目には見えていないと思います。
仙田はキョロキョロと前を見て私を探しています。
仙田さん!
私はここです!
仙田は直ぐに後ろを振り返り、
むきになって私に向かって蹴りを放ちました。
私は拳をねじって真っすぐ前に突き出し
拳の先からのエネルギーで仙田の体を浮き上がらせて
4~5回、回転させ床に軽く降ろしました。
のつもりでしたが、結構派手に落ちちゃいました。
ドン!
仙田の体がお尻から床に叩きつけられるように
落ちました。
イテーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーエ!
何が起こったんだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
一体、ど~なってる~
お前、一体俺に何をしたんだ?
くそ~
仙田が増々むきになって立ち上がり私に向かって
パンチを出します。
私は大きく舞い上がって仙田の後ろに着地しようと思ったのですが、
少し飛び上がり過ぎて、武道場の天井に手が
届いてしまいました。
仙田は、急に目の前から消えた私を周囲をキョロキョロと
見渡して探しています。
いない! 消えた! 後ろを振り返ります。
後ろにも居ない!
嘘だろう! あり得ない! どこだ?
一体どこに行ってしまったんだ。
キョロキョロ、、、、キョロキョロ、、、
そんな仙田の5m程前に私は
スカートを両手で押さえて広がらない様に
ゆっくりと降りていきました。
ゆっくりと、ふわ~っとした感じで静か~に降りました。
仙田は私の姿を見て、開いた口が閉じないままぼけ~っと
私の顔を見つめています。
人間が空を、宙を、、、、飛んでいる。。。。。重力を無視してる。
あり得ない! 嘘だ! 嘘だろう!
な~ お前! 幽霊か~~~あ?
仙田が顔面蒼白で固まってしまっているようです。
いえ、よく見ると、全身がブルブルと震えています。
私は仙田に向かって言いました。
仙田さん、私は今井先生の直弟子です。
幽霊なんかじゃありません。
それを聞いた仙田は全身の力が抜けたようになって
その場にへたってしまいました。
・・・
見ろ!
あの女子高生! 健一さんの妹!
なにか構えをしているぞ!
大きく片足を後ろに引いている。 あれは、なんだ。。。
私は空手で習った突きと蹴りを繰り返し50回程を一気に
その場でやりました。数秒です。
うわ~~~~~~∼~~~~~~~~~~~~~~~~あ!
スッゴイ! 手足がかすんで見えない!
猛烈なスピードです。
手足が、ピュ――――――――――――――――ッと空気を切って
鋭い音が道場に鳴り響きました。
そして最後に気合と同時に突いた拳を一直線に伸ばし切って
ピタっと止めました。
エイ! (気合)
うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
スッゴイ!
やはり空手を使うのか! だろうな。。。
やっぱし、合気道流の空手か~
かっこいいな! あの構え! 見ろ!
と、その時です。
よ~し、
今日はこれまでだーーーーーーーあ!
今井先生の大きな声が道場に響き渡ります。
練習が終わって、先生と私たち2人は
道場の入り口の横にある事務所のような部屋に入りました。
私は今井先生に言いました。
先生、急に来て、
大変に出しゃばった真似をして本当に申し訳ありませんでした。
指導が本当に大変だと言うことが分かりました。
それはそうと、先生!
足のケガがかなりひどい様ですが本当に大丈夫なんでしょうか?
いや~ 美沙君、美香君!
本当に久しぶりだね。また君たち2人に会えて本当に嬉しいよ。
恥ずかしいところを見せてしまったね。
実は、君たちのお陰で今日は大いに助かったよ!ありがとう。
美沙君も美香君もかなり腕を上げたみたいだね。
会うたびに驚かされるよ。
しかも、空手をミックスした合気道とは恐れ入ったよ。
いや~、すっごかったよ!
実は私は少しでも美沙君に近づこうとしてね、ある森の中で
修行をしている最中に足を怪我してしまったんだ。
・・・ 波動の術の修行のことです。
・・・
私は、早速先生に聞きました。
今井先生、
昨日、先生宛にメールと電話をさせて頂きましたが通じなくて、
練習の場所に急に来てしまいました。すみません。
私は、今回、私の兄に会いにやってきました。
今日は兄の姿が見えないようですが、どこに
居るのかご存じありませんでしょうか?
両親とも1週間ほど連絡がないとのことで私が
代わって兄の様子を見にやって来ました。
1人では不安なので美香ちゃんと一緒に来ました。
・・・
そ~なのか。。。
実は、
私も健一君とはこの1週間ほど連絡がついていないんだよ。
最近は健一君と紀子君は忙しくしていることは分かっているんだがね、
私としては、
気を使ってこちらからは特に連絡はしていないなかったんだよ。
ただ、連絡はよく取り合っていたんで、気にしてはいたんだが。。。
それに、
実は、恥ずかしい話なんだけどね2日ほど前に
携帯を失くしてしまってね、
今、探している処なんだ。
その携帯になにかメールが入っているかもしれないんだ。
健一君と紀子君はここの練習をいつも手伝ってくれて
2人が居ないとなると本当に私も大変な思いをしているよ!
それに私は今、足を怪我をしててね、
こんな時に2人の有難味がよ~く分かる。
そ~なんですか。。。。
今井先生も兄と連絡が出来ていないんですね。
お兄ちゃん、どこにいるんだろう。。。?
最近は健一君と紀子君は、
内の大学と、ある会社の製品企画室とで共同て進めている
新製品の開発に携わっているらしくてね、
それで忙しくて2人とも練習には来れないのかと思っていたよ。
まあ仕方ないと思っている。
ただ、
ただ、なんですか?
ああ、健一君も紀子君も忙しいからと言って連絡なしに
ここに来ないっていうのが気になっていたんだが、、、、
でも二人はもう大人だしね。
心配はいらないと思っていたんだ。。。。
今井先生も私の両親と同じことを思っているようです。
ちょっと待ってくれ、お茶でも入れよう!
先生はそ~言って立ち上がり簡易的な流し台へ向かいました。
美香ちゃんが私も手伝いしますと言って直ぐに先生の後を追いかけます。
と、その時です。
ドアの外でノックの音が聞こえました。
・・・入ってくれ! (先生)
すると、女子部員と仙田が部屋に入って来ました。
私も流しへ立ち上がった時です。
入ってきた仙田さんと目が ピタ!っと合ってしまいました。
・・・ う? は?
あの~? (仙田)
え? (私)
お腹、大丈夫? (仙田)
はあ? お腹? 大丈夫って、何が~? (私)
だってさ、俺の空手の突きや蹴りが、恐らく100回以上お前の腹に当たってるんだぞ!(仙田)
俺の拳はブロックでも割れるんだ。
ふ~ん? そ~なんだ。。。すごいんだね。(私)
だからど~したっていうの?
私は流しの方へ行こうとしました。
ち、ちょっと待ってくれ! (仙田)
お前の腹って言うか、内臓は平気なのか?
私の内臓? (私)
あの~ 仙田さん、言ってる意味が分かんないわ?
ひょっとして私のお腹を心配してくれてるの?
だったら全然心配はいらないから、大丈夫です。
でもさ、(仙田)
あれだけ突きや蹴りをまともに食らって心配するなっていう方が無理だ!
内臓と言うか腸なんかがつぶれててもおかしくない。
今は大丈夫でも、後から大変なことになってしまうかもしれないんだ。
きっと、
鳩尾辺りが真っ赤になってるとか、はれ上がってるとかしてるはずだろう!
それに女の子の腹筋で耐えられるはずは無い!
お前、結構スリムだしな。腹筋もそうかいかもしれない。
スリムで悪かったわね。(私)
私のお腹の腹筋は、自分でも分かんないけど、そんなにないかもしれないわ。
だからなに?
心配してるんだよ。(仙田)
お前の腹に大きな力が掛かってさ、傷ついてるんじゃないかってさ。
ふ~ん、、、でも本当に大丈夫です。なんともありません。(私)
本人の私がそ~言ってんだから間違いありません。大丈夫です。
心配いりません。
・・・ 私は流しの方へ向かおうとしました。
おい! 見せてくれ! (仙田)
私は足を止めて振り返り仙田さんの方に向きかえりました。
見せてくれって、何を? (私)
お前の腹だ! (仙田)
はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ?(私)
あなた、女の子に腹を見せろってマジて言ってる訳~え?
信じられない。H。
私は女子高生なんだよ。。。あなたロリコンなの? 趣味悪いわ!
おい、お前、大きな勘違いしてるぞ! (仙田)
俺があれだけ空手でお前の腹を責めたんだ。
心配するなって方が無理だ!
お前が大丈夫だって言うなら、その証拠を見せろ!
俺はもう大人なんだ! 責任があるんだ!
いいか、だから俺にはお前の腹を見る権利がある!
私のお腹を見る権利がある~? (私)
変な権利だね、それって、、、
そ~さ、お前の腹が大丈夫かどうか確認する権利が俺にはあるんだ!(仙田)
そのためには腹を直接見ないと分からないだろう。。。
場合によっては触らないと分からないかもしれない。
手で押さえて痛いところがあるかどうか確認しないとな!
はあーーーーーーーーーあ? (私)
私のお腹を手で押さえるーーーーう?
それってセクハラじゃん!
変なこと言わないでください。止めてください!
あのな~ お前は大きな勘違いをしているぞ!(仙田)
お前は俺に腹を見せる責任があるんだぞ。
だって、これだけ俺に心配をさせておいてさ、
そのままにしておくって言うことは、あまりにも無責任だろう!
今井先生の一番の直弟子がそんなに無責任な奴でいいのかよ?
俺にはお前の腹を見る権利があるし、
お前には俺に腹を見せる責任があるんだ!
俺たちは今、権利と責任で繋がっているんだ!
なんだそれ! 変なの。。。。
・・・ 仙田と私の視線がぶつかり合います。
ふ~ 私は、なんだか変な屁理屈だな~って思ったのですが、
仙田が真剣に私を心配してくれているのは間違いなさそうだし、
言っている内容にも一理あると思いました。
でも、男の人にお腹を見せたり触らせるだなんて思ってもみなかったので
かなり迷ってしまいました。
あ~ ど~したらいいの?
先生と美香ちゃんは流し台の処で仲良く話をしています。
も~ ややこしい奴!
ですが、こいつ、真面目だしHでもなさそうだし、仕方ないのかもな~?
・・・ 仕方ないか~、、、
じゃあ、少しだけなんだからね。いい、、、(私)
そ~言って私は仙田に歩み寄って行き、セーラ服の上着を
鳩尾が見えるところまで両手でめくりました。
上着の下は何も着ていません。生肌が覗いているはずです。
私は天井を向いていました。
何だか学校の健康診断みたいだな~って思いました。
仙田さん、早く済ませてくださいよ。
仙田は、腰をかがめてすぐ目の前で私のお腹の鳩尾を見ているようです。
ど~なの? これで分かった? (私)
仙田は何も言いません。
ただ、じ~っと私のお腹に見入っている様です。
ちょっと、仙田さんってば、ど~なんですか? (私)
安心したんですか? 何か言ってください。
・・・
指で腹を押すから痛いところがあったら言ってくれ。(仙田)
深めに指を押し込むぞ、いいな。
はいはい (私)
大きく息を吸ったり吐いたりしてくれないか? (仙田)
私はふ~ふ~と大きく息を吸って吐くのを繰り返しました。
息を吐いたときに仙田の指が胃袋の中に押し込まれてきます。
これって健康診断じゃない! そ~思いました。
まだなんですか? (私)
胃袋は大丈夫そうだ!(仙田)
少し下を調べる!
腹の力を抜いたままにしてくれ!
はいはい (私)
仙田の手のひらが背中に回され体が固定されます。
反対の指がおへその少し上あたりに押し込まれます。
仙田は私の体内の知らない内臓に沿って指を押し込んできます。
かなり深いところまでも指が入ってきて、ぬるっとした感触で
私自身にも自分の内臓の存在が分かります。
・・・
仙田さん、もうそれくらいでいいんじゃないですか?(私)
お、お前! (仙田)
何ですか? 早く結論を出してください。(私)
・・・
仙田さん、で、結論はど~なんですか?(私)
納得しましたか?
・・・
俺! 俺、こんなキレイな腹を見たことない。。。。 (仙田)
真っ白で、透き通てて、柔らかで、温かで、弾力があって、
内臓も魅力的で、微かにいい匂いがしてて、
清楚で、ブラも白だし、、、、興奮してめまいがしそうだ!
はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!(私)
てめーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
ゴン! (私の拳が仙田の頭を打ちます)
痛てーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
ちょっと、あんた何考えてるの? H、スケベ! 変態!(私)
言っとくがな、お前の空手なんて私には全然通用しね~!(私)
次に私とやる時は間違いなく、ぶっ殺す!
いいか! そのつもりでいろ! わかったか!
怖------------------い! (仙田)
今井先生がこちらのドタバタに気が付いて言います。
君たち、一体、そんなところで何をやってるんだね。
お~ 早苗君と仙田か! ど~したんだね?
仙田が頭を痛そうにさすっています。イテ~エ!強烈、最悪。
早苗さんという部員が言いました。
先生!
これは先生のスマホじゃあありませんか?
今、掃除中に入口の靴置き場の一番上の板に置いてありました。
そ~言ってスマホを先生に差し出しました。
お~ 見つけてくれたのか。いや~ これは助かった。
探していたんだよ! ありがたい! よかった!
先生は、スマホを受け取り直ぐに見ます。
美沙君!
昨日、君からのメールが入っているよ!
今日の訪問の事だね。。。
え~とお、、、、、
健一君からのメールは~っと、、、
お~ 健一君からもメールが来ている。
そ~言って声を出して、メールの内容を読みました。
———————————-
先生! 大変です。
とんでもないことを発見しました。今、紀子と一緒です。。。。
又後で連絡します。
———————————-
先生が言います。
これは2日前の午後2:32だ。
一体、健一君は私に何を言いたいんだ?
紀子君も一緒らしい。。。。
先生が幾つかのメールを指で流しています。
え~っと、健一君からのメールは、、、、
あっ! あったぞ。昨日の4:26にメールが来ている。
————————————
やつらは、とんでもないことを考えています。
許せません!
————————————
・・・ ?
・・・
やつらって誰のことだ?
とんでもないこと?
いったいどこからメールしてるんだ。。。
健一君は私に何を伝えようとしているんだろう?
・・・
と、その時です。
スマホのメール着信音が鳴りました。
次の瞬間、先生の表情が一気に急変しました。
先生!
ど~されたんですか?
なんて書いてるんですか?
私は、先生のスマホを取ってその内容を見ました。
美香ちゃんも同時にメールを見つめました。
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先生! 助けて!
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えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
助けて!
お兄ちゃんが、大変だ!
お兄ちゃんと紀子さんに何かあったんだ!
お兄ちゃんが、お兄ちゃんが、今、どこかで
助けを求めている!