私の名前は岡崎佐江。
前回のストーリー ⇒ 私の名前は岡崎佐(21)
朝、私は、
そわそをしながら実家に帰る用意をしていました。
日帰りなので特に大きな荷物はありません。
ですが、岡本の奴が、
私の実家に私と一緒に行くことになっているのです。
何となく落ち着きませんでした。
アイツの勝手な暇つぶしです。
あいつ本当に暇なんだ!
休みだと言うのに、することがないなんて信じられない!
て言うか私もそ~だけど、
暇人同士がドライブなんてね~
しかも行き先が私の実家だなんて、、
なんだかさえないな~
もっと素敵な海岸とか、景色のいい山とか、
公園とか遊園地とか、、、
他にありそうなもんだけどな~
それはそうと、
あいつ愛車で迎えに来るって言ってたけど、
どんな車に乗って来るんだろう。。。?
まさか外車に乗って来ちゃうなんて。
きゃは、あり得ない! 100%ナイナイ!
店の割引券ばっか集めて喜んでる奴だから
あいつも私と同じ貧乏人に決まってるわ。
10分前か~
少し早いけど行こうか!
まだ来てないかもね。。。
私はバッグを下げて部屋を出ました...
。。。
私がマンションの入り口に出て行くとクラクションの音が
聞こえました。
・・・ は、 プッ! プッ~
え? どこ?
え、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
岡本先生が軽トラックから降りて来て、白のTシャツと
ジーンズ姿で手を振って白い歯で笑っています。
は、はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
トラックなのーーーーーーーーーーーーーーーーーお!
嘘~~~~~お! 愛車って軽トラのこと~~~~~お!
想像を絶する期待外れ!
・・・
佐江先生、
お早うございます。
さあ、手荷物は後ろの荷台に乗せましょう。
先生は助手席にお座りください!
席は少々狭いですが何とかなります。
早速、参りましょうか!
あ、あの~ この車で行くんですか~?
はい、そ~ですが、
何か問題でも?
あ、いえ、問題なんてありません。
素敵な愛車です。
(もっと、ましな車はね~のか! これトラックじゃんか~)
(しかも後ろにいっぱい荷物積んで、信じられない!)
佐江先生、
この車はとても便利なんですよ。
少しくらい物と接触しても全然気にならないんです。
(だろうな~ )
それでは出発ーーーーつ!
・・・・
・・・・
痛い、痛い、痛い、、、お尻が、痛~~~~い!
ガタガタ、、、ドンドン、、ガタガタ、、
岡本先生、
車が揺れて体が飛び上がっちゃってシートが固くて
お尻が痛くなっちゃいました。
私、こんなトラックに乗ったの初めてです。
そ~ですか、
何事も経験が大切ですからね。
良い経験ですよ。佐江先生!
そ~思いませんか。
(思わね~ こんな経験したくね~)
あ、はい、まあ、そうかもしれませんが、、、
ガタガタ、、、痛い、痛い、、、お尻が、、
・・・・
・・・・
約2時間後、
私の実家の前に軽トラは到着しました。
は~ やっとこさ辿り着いた~
お尻が痛~い
和風建築の家で庭には花がいっぱい咲いています。
今では母が主に育てていますが、
私はお花が大好きで、
ず~っとガーデニングをやって来ました。
岡本先生と私は、その庭を歩いて玄関の方へ向かいました。
へ~ 佐江先生、
とても素敵なお家ですね~
ここが佐江先生のご実家でいらっしゃいますか。
花がいっぱい咲いていますし、
辺りの環境も緑に囲まれて静かで、とてもいい処ですね。
いや~ 納得致しました。
は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~あ、、、?
(何を勝手に納得してんだ~~あ、、? 変な奴!)
・・・
岡本先生、
ちょっとここで待っててくださいね。
・・・
・・・ 家の中の会話が聞こえてきます。
おかあちゃ~ん!
帰ったよ~~~~~~~~~~お!
佐江だよ~~~~~~~お!
あ~ 佐江ちゃん!
で、彼氏は来てんのかい?
彼氏じゃないってば!
職場のお友達だよ!
幼稚園で一緒に働いてる仕事仲間!
・・・
佐江先生のお母さんが玄関から出てきました。
佐江先生とそっくりです。
感じのいい明るい表情のお母さんが笑顔で
迎えてくれました。
いらっしゃい。。
よ~う来て下さったね~
いつもうちの佐江が迷惑をお掛けして申し訳ありません。
この子はまだ子供なもんじゃから、
お役に立ってるかど~か?
よろしくお願いいたします。
おかあちゃん!
私はもう子供じゃあないんだからね!
恥ずかしい事言っちゃだめ!
・・・ 岡本があいさつします。
こんにちは、
初めまして、岡本和明と申します。
佐江さんと同じ職場の同じ組を担当しています。
いつも佐江さんにはお世話になっています。
佐江さんはとてもお仕事熱心で真面目に頑張って下さっています。
職場では皆がとても助かっております。
そ~ですか、
それをお聞きして少しは安心いたしました。
さあ、さあ、ど~ぞ中へお入りください。
・・・
あの~? (岡本)
なにか、、、?(母)
到着早々に失礼ですが、クーラーが無くて暑いとか、(岡本)
佐江さんからお聞きいたしまして、、、
実は、私の親しい友人が電気屋をやっておりまして、
在庫処分で1台クーラーが不要になってしまいまして、
それで、私が、もしもと思いまして持ってまいりました。
店の展示品で形は少し古いですが新品の物です。
もしよろりしければ使っていただけますでしょうか?
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!(佐江)
クーラー!
岡本先生、
そんな高価なものを頂く訳にはいきません!
それに取り付けも直ぐに出来ません!
ダメです。
佐江先生、
このクーラーをぜひ使用してください。
もったいないです。
物を粗末にしてはいけません!
このクーラーが可愛そうですよ!
折角、誰かに使用されるために作られたんですよ。
使ってあげましょう!
店に取って不用品でも機能は十分にあります。
設置は私が今直ぐにやります。
え~~~~~~~~~~~~~~~~~え!
岡本先生、クーラーの設置が出来るんですか~?
はい!
簡単に出来ます。
道具も全て揃っています。
私は電気工事が趣味なんです。
(お前、私のお腹責めが趣味じゃんか! まだ他にあったん!)
私と母は顔を見合わせました。。。
母が言います。
佐江ちゃん、折角だから、、、ね、
・・・・
岡本先生が、
軽トラのカバーをさ~っと開き、大きな体で
クーラーを持ち上げて所定の場所に運んで
設置の作業にかかりました。
約1時間ぶっ通しで作業が続きました。
Tシャツから覗いた筋肉隆々とした岡本先生を
私は、見ていました。
(こいつ、なんなの? クーラーの設置作業に来たん?)
私は、作業途中に岡本先生にウーロン茶を出しました。
岡本先生は必死で作業をしていました。
私は、何故、岡本が軽トラで来たのかその時分かりました。
私が何気なく、母がクーラーを欲しがっていると漏らしたのを
気に掛けてくれてて、それを実現してくれてるのです。
・・・
え!
もしかして、
父の按摩器も?
まさか!
私はそれとなく軽トラに歩いて行き、
そのカバーを、そっとめくってみました。
そこには新品らしき按摩器が載っていました。
嘘っそ~ 椅子タイプの按摩器
岡本先生、
あなた、、私の事を、、、
そ~言えばジムで私の事を大切な人って言ってた!
聞き流してたけど、あれって本心かも。。。
私は岡本先生の外での作業を見ていました。
額から首、胸、背中が汗だくでした。
男の匂いが漂っています。
たくましい強い男の体臭でした。
その時、
私は自分でも信じられない行動に出てしまいました。
私は、大胆にも岡本先生の体に後ろから抱き着いて、
先生の肩の処をペロペロと舐めました。
いっぱい舐めちゃいました。
もっともっと舐めたかったのですが、恥ずかしいので
直ぐに離れて走って逃げました。
・・・
あ~ 私、信じられない! 恥ずかしい~
岡本先生の汗の味が口いっぱいに広がりました。
甘~い味でした。
え?
甘い味!
岡本先生が私の汗が甘いから健康だと言っていたわ。
てことは、
こいつも健康そのものなんだ!
でも私、なんて恥ずかしいことしちゃったんだろう。。。
・・・
重そうな椅子タイプの按摩器も軽々と持ち上げられて
クーラーの効いた部屋に降ろされ設置されました。
理由はクーラーと同じでした。
全く予想外の展開でした。
信じられない!
・・・
父と母が揃って岡本と話をしています。
私は側で聞いていました。
話の流れの中で、
父が岡本の将来の事について聞いています。
岡本が真面目な顔で話します。
私の将来の夢は、今のこの社会の中で子供たちが
どんな困難に対しても立ち向かっていける勇気と
そして、他を思いやる優しい気持ちを持てるような
教育をやりたいと思っています。
それは、幼稚園の今の時期が一番に大切だと思っています。
ですから、私はそのために私の全てを掛けて頑張って
行こうと決心しています。
(へ~ お前、なかなか良い事言ってるじゃん!初めて聞いた)
母が言います。
で、岡本さんのご両親はお元気なんですか?
はい、私の父は私が小学生の頃亡くなりました。
私は一人っ子ですので私と母で何とかやって来ました。
ですが、母はとても厳しく私を育ててくれましたし、
今もとても元気です。
29歳になった今も私は叱られ通~しです。
ですが、そんな母の優しさがあるので頑張れます。
そ~ですか、ご苦労をされてこられたんですね~
済みませんね~ 立ち入った事をお聞きいたしました。
(へ~ こいつ苦労をしてきたんだ!知らんかった~)
父が言います。
佐江は本当に子どもの事が好きでしてね、
ず~っと以前から幼稚園の先生になることを夢見てきました。
ですが、子供の頃から、かなりそそっかしい処がありましてね、
幼稚園でご迷惑をお掛けしてるんじゃないかと、
心配しています。
ですが、子供の時からいじめられっ子を助けては
逆にやられて来たもんですから、
いじめのない子供をたちを育てようと思っているようです。
良い処は正義感が強くて優しいところでしょうか。。。
佐江のこと、これからもよろしくお願いいたします。
も~ おと~ちゃん!
そんな話、止めてくれない。。。
・・・・・
実家からの帰り車の中で
・・・・・
ガタガタ、、、ドンドン、、ガタガタ、、
痛い、痛い、痛い、、、お尻が、痛~~~~い!
岡本先生、
この車、なんとかならないんですか?
もう、お尻が限界です。
ガタガタ、、ガタガタ、、ドンドン、、痛い、痛い、、
佐江先生、
お腹同様にお尻も鍛えられると思ったら
嬉しく思いませんか?
(全然思わない~ 尻がはれるだけじゃんか~)
それにしても
佐江先生のご両親ってとても良い方なんですね!
いや~ 感激いたしました。
納得致しましたよ。
(てめ~ また勝手に何を納得してるんじゃ~ 分からん奴!)
ガタガタ、、ガタガタ、、ドンドン、、痛い、痛い、、
痛い、痛い、痛い、、、お尻が、痛~~~~い!
・・・
・・・
やっと私のマンションの前に到着しました。
ふ~~~~~う、、、やっと車が止まりました。
もう死ぬかと思った。
お尻が、痛~~~~い!
。。。
2人は車から降りました。
すると、
岡本が暗くなった夜空を見上げて言いました。
佐江先生、
見てください!
は~?(私)
佐江先生、
星が一杯輝いていますよ。
まるであの星が子供たちの様です。
1つ1つがキラキラと輝いています。
みんな同じように見えますが、
良く見ると、それぞれが違っています。
輝き方、色、大きさ、、それぞれ個性があるんですね。
私たちは、
あの星のように一人一人の子供たちを
よりキレイに輝かせるために頑張って行かないと
いけないんですよね。。。
・・・
あ、は、はい、、(私)
・・・ 私は夜空の星をしばらく見つめていました。
・・・ 確かに良く見るとそれぞれが違って見えます。
・・・ あれは子供たちか~ キレイだわ~
佐江先生、
じゃあ、私はこれで失礼いたします。
今日は無理やりに、ご実家に押し掛けたようで
本当に失礼いたしました。
じゃあ、また明日、幼稚園で、、、、
岡本は、そ~言ったかと思うと軽トラに向かって
歩いて行きました。
・・・
え! あ、あの~
岡本先生、
何とお礼を申し上げたらよろしいのでしょう。。。
今日は本当に色々有難うございました。
・・・
岡本は歩きながら背中越しに片手を大きく振りました。
・・・
あ、あの~
岡本先生、
私、わたし、、、、先生の事が、、、
・・・
軽トラは去っていきました。
私は、その場にたたずんで岡本先生の面影を
いつまでも追いました。
・・・
星がキラキラと輝いています。
あれは子供たち!
私は、さっき岡本先生に言おうとして言えなかった
言葉を一人で口にしました。
先生の事が「好き!」
夢と幻想の森