前回関連ストーリー⇒ 森での出来事(14)中2の私


私は野々村美沙。

高2の私が夜勉強中に見た夢の中で、中2の女の子が森でツルにお腹を
締められたまま動けなくなっているのを助け様としたところ
私がその女の子の体の中に入っちゃっいました。

ビックリです。 その中2の女の子は私でした。

ただ時間のねじれのせいなのか、
その中2の私は、幼稚で、のんきで、ドジで成績も赤点! もう最悪!
私の得意の合気道なんて無縁の女の子です。

あ~ もう、ど~しちゃったらいいの~
夢は覚めそうにありません。 悪夢です!

とに角、成績を上げなくっちゃと思って、
私は猛勉強を開始したところです。

高2の私が、中2の勉強、信じられない!



—————————- 翌朝


あ~ 大あくび! 昨夜はよく勉強しちゃったな~

高2の私に取っては、勉強内容は簡単でした。
これまで小中高と勉強はかなりやってきたつもりです。
成績も自分で言っちゃうのもね~ でもトップクラスかな

ダダダダダ、、トントン、ドッスン!

私は台所に飛び込みました。

お父さんが新聞を広げています。
お母さんが味噌汁をついでテーブルに置いています。

お母さん、
私がご飯ついじゃうね~

私は大盛でご飯をつぎました。私が食べる分です。

いっただきま~す。

パクパク、、、パクパク、、、モグモグ、、

あ~ 最高~ うま~い パクパク、、、
お父さん、
その卵焼き食べないの?
じゃあ、いっただきー  パクパク むしゃむしゃ
お母さんお代わり~

こ、こら~ 美沙、それはお父さんの卵焼きだろ~
お父さんが、ベーコンの皿を自分の方へ引き寄せました。
これは、ダメだぞ! 取られてたまるか!

あ~ 狙ってたのにな~

パクパク むしゃむしゃ ぱくぱく、、
お母さん、お代わり~

美沙、何とかならんのか、その食べ方、、、
お前、女の子なんだぞ~ もう少し上品にって言うか、
ゆっくりって言うか、、よく噛んで食べるとかさ、
よく味わって食べるとか、、、、な~ 母さん

ムリムリ! この食べ方が最高に美味しいだもん

お母さんが、ニコニコ笑っています。
でもあなた、
美沙の食欲が、またこんなにいっぱい戻って
良かったです。

あ、、、まあ、そ~なんだが、、、

・・・ ?

何を言ってんのか私には分かりません。

結局、私は山盛り3杯食べちゃいました。
こっちの世界でも、あっちの世界でも私の朝ご飯は3杯!
同じでした。

さあ、学校です。私は中2の女子中学生なんだ。。。

いってきま~す。
美沙、早く帰ってくるのよ~ いい

は~い、、、


————————— 学校で


自転車での登校です。中2の記憶は無くても
基本的なことは体が習慣的に動いてくれます。

校門を抜けて自転車置き場に入って行きます。
場所は分かっています。

3年前も同じ処です。なんら変わりません。

自転車置き場に何人かの女子と男子がいます。
み~んな中学生か~
何だか不思議な気持ちです。
私は、完全に3年前の世界にいるのですから。

・・・

私は自転車を止めて前の籠からカバンと体操服の袋を
降ろそうとしました。

とその時です。

3人の男子が近寄ってきて、その1人が私の自転車を足で蹴り倒しました。

ガシャン!

自転車のハンドルが変な方向に向いて倒れました。

・・・! ビックリ

え!

・・・

一瞬、私は茫然と立っていました。

何人かの男女が逃げるようにして、その場所をすり抜けて行きます。
明らかに関わりたくないって感じです。

おい! 美沙!

金、持って来たんだろな!

・・・ ?

はあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~あ?
何を言ってるのか分かりません。
多分、私に言ってるんだわ。

お金?

お金って、なんのことなの?

だから、金を出せって言ってんだ!

あの~ 私があなたにお金を借りてたんですか?

・・・

男子の顔色が変わりました。
何とぼけたことを言ってんだ! このバカ女!
五千円、持って来たかって聞いてんだ!

五千円ーーーーーーーーーーーーーーーーーん!

あ、あの、、、私、そんな大金、最近見たこともありません。
どこにあるんですか?

お前な~ 何言ってんだ!
今日、お前がここに持ってくるようになってんだろが!

私が持ってくるって、約束してたんですか?

・・・

私はよく分かりません。
中2の美沙がお金を借りてたんですか?

借りる? なんで俺がお前に金を貸すんだ!

あの~ だったらお金は出さなくてもいいのじゃ、、、

うるせーーーーーーーーーーーーーえ!(大声)
早く、金を出しゃがれ!

あの、、、中2の美沙がOKしちゃったんですか?

お前、なに訳の分かんね~こと言ってやがるんだ。
俺たちがお前に五千円持って来いって言ったんだ!

はあ~? (私)
あの、それって、もしかして、、脅しじゃないですか?
いけません、中学生で、
そんな恐喝をするなんてダメです!

てめ~ 俺たちを舐めてんのか~!

・・・

男が向こうに居る女子に言います。

美香さん、
こいつ寝ぼけてます!
ど~します?
持って来てない様ですが!

離れた処の3人の女子の中の1人がこっちに歩いて来ます。

え!
うっそ! 美香ちゃん!

美香ちゃんがいる。
やっぱり、こっちの世界にも居てたんだ!
嬉しい会いたかったわ。
美香ちゃんに会えるなんて感激だわ!

美香ちゃんが、私に近づいてきて言います。

美沙! 舐めてんじゃね~ぞ!
ぶっ殺すぞ!
ドス! うっ!

うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうっ!

強烈なパンチが一瞬にして、私のお腹の奥にめり込みました。
そのパンチは本物です。
内臓が潰れたかと思いました。

美香ちゃん~、、、、なにするの?

なんで~?

ど~しちゃったの、美香ちゃん?

お腹を押さえて、うずくまっている私に吐き捨てるように
美香ちゃんが言います。

いて~か? 美沙!

もう1日待ってやら~

もし明日持ってこなきゃ、手加減しね~
本当に内臓を潰してやら~!
分かったか? バカ女!
それと、放課後は気を付けな!

そ~言って、

プッ! っと唾を私に吐きかけました!

おい! 行くぞ!
その言葉で、
美香ちゃんの後を何人もの男女がゾロゾロと付いて立ち去りました。

・・・・

美香ちゃん、 ひっど~い!
ひど過ぎる!
私の大好きな唯一の親友の美香ちゃんに
こんなひどい仕打ちをされちゃうなんて、、、ひどいよ!
私はその場にしゃがみこんで考えていました。

あれが、美香ちゃん!

これがこちら側の現実だと言うの?
あんまりだわ!
今のは美香ちゃんじゃない!
私の思ってる美香ちゃんが悪いんじゃない!
向こうの世界の美香ちゃんじゃない!
それにしても悲しい。

私はしばらく立ち上がることが出来ませんでした。
悲し過ぎてです。
時間のねじれと言っても、あまりにもひど過ぎるわ!
朝一番に学校で迎えた出来事に、私は大きなショックを受けました。
つらいな~ 涙が出てきました。

その時です。

おい!
大丈夫か?

・・・ 男子の声

私の目の前にブルーのハンカチが差し出されています。

・・・ ?

これで涙を拭きなよ。
お前も、あの女にやられたのか?
腹を殴られたんだろう?
全くひで~女だぜ!
お前、金をゆすられてんだろう?

え? あなた、誰なの?
見上げると、涙で潤んだ中に1人の男子が立っています。

・・・ ?

あなた 缶コーヒー?

あなた、なんで、この世界に居てるの?

はあーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
俺?
なんでって、、俺は2年E組じゃん。
俺はお前と同じクラスだ!
俺って存在感ないからな~ お前、俺を知らね~みたいだな!

・・・

いえ、そ~じゃなくって、
なんで、缶コーヒーがこの世界に居るのって言うか、
こちら側に居てるのかな~って思っちゃっただけ、、、

はあーーーーーーーーあ? おい、おい、お前さ~
お前、何言ってんのさ?
缶コーヒーって、なんだよ?
飲みて~のか、缶コーヒーが?

・・・

さあ立ちなよ! ホームルームが始まっちゃうぜ!
そ~言って缶コーヒーは私の片腕を引き起こしました。

ありがとう。

あなた、新藤マサキ君?

おーーーーーーーお、、、俺の名前、フルネームで知ってんのかよ~
それは光栄だな、、、野々村美沙が俺の名前を知ってるなんてさ、、、
予想外だよ!

え? なんで?
だって同じクラスなんでしょう。
知ってるわ、あなたの事はムシ子から聞いてるもん!

は~~~~~あ、  それ何?
ムシ子って誰?

あっ! ゴメンなさい!
向こうの世界の事だったわ、気にしないでね。。。

缶コーヒーは向こうの世界の事は知らないのか~
でも、
美香ちゃんも、缶コーヒーも、私の両親だって、
向こうの世界に居る人間はこちらにも居るってことなんだわ。

ただ立場はかなり違ってるんだ。

缶コーヒーが言いました。
聞いてもいいか?
お前の横の席に居るのって誰だか知ってるか?

私の横の席の人?

う~うん? 知らない、、、、

やっぱしな~ 俺だ!

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!

あなた、私の横の席に居たっけ?
ごめんなさい! 私、、、本当に、、、
なんて言ったらいいのか、ゴメンなさい。ペコペコ

いいんだよ、気にしなくていい!
お前って、いつだって、下か窓の外を眺めてるもんな~
俺なんかに気付くはずないよ。

山口美香も同じクラスで前の廊下側の席だよ!
あいつ、不良番長のくせに、教室ではおとなしくしてて
猫をかぶっちゃっててさ、全くイヤな奴さ!

え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~え!

美香ちゃんが不良番長?
そんなはずない! 美香ちゃんが不良番長だなんて、、、

おい、おい、お前、何言ってんだよ。
分かってね~な~ 目を覚ましなよ!

お前さ、
さっき、あいつに何されたんだ?
思い出してみろ! ひどい目に合っただろう!
忘れたのかよ!

お前さ、何か変だよな!
現実が見えてないって言うか、何処かネジが外れてるって言うか、
言ってる言葉もおかしいしさ、この世界とか
こっち側とか、一体、何なんだよ? しっかりしろ!

まあ、これも何かの縁だ、
少し俺がお前を見ててやるから安心しろ!
このままだとお前、美香にひどい目に合わされるぞ!
俺は美香の子分の男に、ちょっとしたツテがあるから、
手を回してみてやるよ!

え?

あなたが私を守ってくれるって言うの?

私は缶コーヒーの顔をじ~っと見つめました。

一瞬・・・ 照れ臭そうに頭をかきながら、、

う、、、、まあ、、俺はさ、頼りないけどさ、、
でも、、気持ち的にはだけど、、、そんな感じかな~

本当に頼りなさそう、、、
でも
缶コーヒーは向こうの世界でムシ子の事が好きだし、
お市の方様を守る役割だった。
こちらでも、基本的には私を守ろうとしているのでしょうか。

缶コーヒー、いえ、ゴメンなさい。マサキ君!
放課後に、少し話を聞かせてくれない?

あ~ いいけどさ、何処にする?

あそこ! 屋上で!
そ~言って、私は校舎の屋上を指さしました。

よし、じゃあ、放課後にあそこで、、、じゃあ!

ホームルームから始まり、社会、理科、国語、、、
中2の懐かしい授業です。

お昼時間、缶コーヒーが言いました。

美沙、いつも思ってたんだが、お前の弁当箱って
すっげ~ でかいな~

ほっといてよ! パクパク、、パクパク

授業内容は私にとってかなり簡単な内容でした。
1度数学で当てられ、前の黒板で問題を解きました。
わざと時間を掛けて考える素振りを演出しました。
その方が、いいと判断したからです。

5時限目の体育は先生が休みで自習時間でした。

私は自習時間に考えていました。
こちらの世界では、高2の私の能力は状況が分かるまでは
直ぐには出せない。

どんな事があっても、合気道なんて封印です。
あくまで、のんきで幼稚な中2の私を続けなきゃ
状況なんて分かりっこ無いと思ったからです。

あ~ やっかいだな~



—————————- 放課後、屋上で


私は、屋上の手すりに両手を掛けて、缶コーヒーが来るのを
待っていました。

屋上には誰も居ません。

風が優しく髪をすり抜けて行きます。
私は、じ~っと遠くを見つめていました。

今朝の自転車置き場でのショッキングな出来事が
頭に浮かんで離れません。

美香ちゃんの事を考えていました。
向こうの世界で、私の最も信頼する親友なのです。

美香ちゃんといつも2人で色んな事に立ち向かって来ました。
いつも私の傍に居てくれて私を守ってくれたのは
美香ちゃんです。

だから、
こちらの世界で、例え美香ちゃんに今日の様な
ひどい目に合わされても、
ど~しても美香ちゃんを憎んだり出来ません。

・・・

缶コーヒー、何してんのかな~
ど~しちゃったのかな~? 遅いな~

・・・

 

その時、バタンという扉の開く音がしました。
私が振り向くと、
缶コーヒーが扉の前でヨロヨロっと倒れてしまいました。

あっ! 缶コーヒー!

私はとっさに缶コーヒーの処に駆け寄り体を起こしました。

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ、、、

ひどい!

目の横が切れて血が滲んでいます。
鼻血も出ています。

恐らく色んな処を殴られたのでしょう、全身泥だらけです。
やっと、ここへたどり着いたように見えました。

缶コーヒー、いえ、マサキ君、大丈夫ですか?

痛いと思うけど少し我慢してくださいね。
私はハンカチを口で濡らし、缶コーヒーの顔を必死で
拭きました。

保健室に行こうよ。
私の肩に掴まってください。あなたを運びますから。

イヤ、いい、、保健室なんて行かない!

え~~~~~~~~~~~~~え、、、
で、でも、、、こんなにひどい怪我をしちゃってるのに、、、
何故なの?
一体、何があったの?

ああ、、、大したことはないさ、それより
そこのベンチに座って話そう。。。

えっ、、、、でも、、、大丈夫なの?
本当にいいの?

缶コーヒーは真っ白の歯で私に笑いかけてました。
美沙、
俺の事は心配はいらない、 な! 俺は大丈夫だ!
いいから話をしようぜ!

マサキ君、
あなた美香ちゃんにやられちゃったの?

イヤ、美香じゃね~ その子分の男たちだ!

そんな~
それって、美香ちゃんがやったのと同じじゃない!
美香ちゃんは番長なんでしょう、、
だったら美香ちゃんが指示しちゃったんでしょう。。。

うん、ま~あ そ~なるかもしれんがな、、、、

美香の子分の俺のダチにお前の事を頼みに行ったんだ!
俺のダチが美香に頼んでくれたんだけどさ、
結局、そのダチも俺も、別の子分の男どもに
殴られちまった。
あいつには悪い事をしちまったよ!

お前を守ってやるって大きな事言っといて
全く、面目ね~ すまん!
ここでお前と会うことはバレていないから安心しろ!

マサキ君!
私のせいで、こんなにひどい目に合わされちゃったんだね。
ごめんなさい。
私、あなたに、ど~お詫びしちゃったらいいのか分かんないわ。
涙が流れてほうを濡らしました。

美沙、お前って泣き虫なんだな!

俺の事はいい、それより、野々村美沙が俺のために涙を
流してくれてるのが嬉しいよ!

はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ?

とに角、あそこのベンチに座ろう!

・・・

私は、
缶コーヒーの体を肩で支えてベンチまで運びました。

美沙、お前の服まで汚して悪いな!
それとお前、すっごい力持ちなんだな、、、

2人は並んでベンチに座りました。

・・・

マサキ君、
山口美香って、どんな人なの?

お前、あの女の事、本当に知らね~のか?
あいつは最低の女だ!
魔女だよ!
誰もあいつにはかなわない! 男だって無理だ!
顔はキレイで賢い奴だが、性格が悪すぎる。
具体的には男女構わず金を脅し取ってるし、
弱い者いじめの典型的な女だよ。

あんなになっちまったのには何かの事情があるのかもしれんが
今のあいつは滅茶滅茶だ!

事情?

その事情って何?

う~ん
俺は知らないが、以前はあんなんじゃなかったらしい、、、
良く知らないよ!

でも、女なのに、すっごい強いらしい!
俺は見たことはないけどさ、
その強さは男が10人掛かっても一瞬でやられてしまう程だと聞いてる。
だからこの学校の不良男子は学年を問わず、
全てあの女の子分にされてちまってるのさ。
情けね~奴らばっかしだ!
俺はあんな奴の子分なんて死んでもならね~がな。

美香がこの学校に入学してからは、
この学校はあいつの物みたいなもんだ!
全てを支配下に置いている感じだよ、3年の男子や
柔道部の男子だって何人かかかってもあいつになんて
勝てっこね~

この学校だけじゃない。
他校の男子だってそ~だ!
一体、ど~なってるんだって、俺も不思議なんだ!
あんなにスリムな体で、なんでそんなに強いのかってさ?

でも美香の子分で俺の連れから聞いた話では、
子分たちには結構優しい面もあるらしい。信じられんがな。

でもさ、1つ不思議なんだが、
美香がなんで今更、お前をいじめるのかってさ?
美香は、お前だけには手を出さなかったはずなんだがな~

え? 私にだけには手を出さなかった?

それって、ど~言うこと?
お前ってさ、今回初めて美香に殴られたんだろう?
違うのか?
だって、普通ならさ、1年生の頃には殆ど全員が
誰だって1、2度は美香にやられてるはずだよ。
俺なんか今日で10回目くらいかな~ イヤ、それ以上かも

え~ そんなにも?
美香ちゃんに取って、あなたは特別なのかな~?
へ~

あのな~
お前、感心してんじゃね~よ!

俺の事はいい、お前はど~なんだ?
今まで美香にやられたことがあるのか?
ど~なんだよ?

・・・

・・・ ?

多分、無いんじゃないのかな~
そんな気がするけど、よく分かんない?

はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

美沙、お前って、
すっごいのんき!
今、お前が置かれてる立場ってめちゃヤバイんだぞ~
分かってんのかお前?

う、うん、分かるような気がする
きっと私、ヤバイんだ!

そ~か、分かったならいいんだ!
で、お前、あいつらに何を脅されてたんだ?
俺に話してみろ!

うん、
あのね、今日の朝にお金を五千円渡すように脅されてて
私は、そんな大金は持ってないって言ったらね、
美香ちゃんが私のお腹を殴っちゃったの。
で、1日待ってやるから、明日は必ず持って来いって!
もし持ってこなかったら
私の内臓をつぶすんだって。。。。
それと放課後は気を付けろって!

・・・

美香の奴、相変わらず、ひで~な~
で、お前、一体、ど~する気なんだよ?

ど~するって、五千円なんて大金持ってないから
渡せるはずないわ。
他の人は今まで、ど~してたんだろう?
お金を払っちゃったのかな~?

俺の想像だけどさ、
金が無い奴は徹底的に痛めつけられてるだろうな!
家族をだまして金を工面した奴も多いと思うよ。

マサキ君はど~なの?
お金を取られちゃったの?

俺はさ、美香の子分の連れと知り合いだからさ
そいつ俺と幼馴染でさ、俺が金なんて無いの分かってるから
美香に頼んでくれたんだと思う。
だから殴られるだけで済んでるんだ。
そいつも今回俺と一緒に殴られちまったけどさ。すまん事したよ!

そ~だったんだ、、、
ごめんねマサキ君、私のために、
あなたまで巻き添えにしちゃって。。。

それにしても、五千円は大金だもんな~

・・・

私が、殴られればいいんだわ!
美香ちゃんに私が殴られて済むんだったら、そ~する!

・・・

止めろ! 美沙!
それだけは止めてくれ! 頼む!

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
マサキ君、あなた、、

よし、美沙!
その五千円、俺が何とかしてやる!
だから安心しろ! な!

え?

あなたが、五千円を出してくれるって言うの?
だって、あなた、お金が無いんじゃないの?
さっき、そ~言ってたじゃん、、、

ああ、、、そ~だ!
俺にはお金はない!
でも五千円だけはある。それ以上は無いけどさ!

・・・ ?

あの~ 言ってる意味が分かんない、、、
お金は無いけど、あるって、、、ど~いう意味なの?

俺ってさ、
今、新聞配達をしてるんだ!
それで幾らかの貯金が出来ちゃっててさ、
それが、ちょうど五千円ちょい貯まってるんだ。
だから、な! 心配するなって!

、、、あなた、
私のために、自分で働いた貯金を出してくれるって言うの?
そのお金って目的があって貯めてるんでしょう、、、?
だから、新聞配達をしてるんでしょう、、、?
そんな大切なお金を、私のために使うって言うの?

・・・

なぜ?

・・・

なんで、そこまで私のためにしてくれるの?
私は今まで、あなたの事、全く知らんぷりしてたんだよ。
私の横の席に、あなたが居ることさえも知らなかったんだよ、、、
だのになんで?
私には分かんないよ。

理由が知りたいか?

・・・・

私は缶コーヒーを見て、軽くうなずきました。

お前が野々村美沙だからさ!
お前が、俺を見つめてくれたからさ!

はあ~~~~~~~~~~~~~~あ~?(私)

それにさ、
今、お前の唾で俺の顔を拭いてくれただろう、
だからさ!

・・・ し~ん

マサキ君!
私、美香ちゃんの事を先生に話すわ。
先生だったら、こんないじめが校内にあることを知って
放っては居ないはずだわ!
きっと何とかしてくれる!

美沙、
お前な~
甘いって言うか、何~にも分かってね~よ!

山口美香は賢い奴だ!
あいつの表の顔は、可愛くて清純でキレイで良い子なんだ!
お前ほどじゃないけどさ! (え、私?)
それにさ、成績は学年で毎回トップなんだぜ。(ガク! 私は赤点!)
先生には好かれてるし、美香だってそこは心得てるんだ。
どんな奴が美香の事を先生に話しても相手になんてされないよ。
100%、妬みだと思われる。

それに、今までだって告げ口した奴は、
徹底的に調べ上げられて、
美香の子分によって、めちゃひで~目に合わされてんだ!
この学校では、
美香の事を先生にリークするバカな奴は今はも~いね~よ!

それにさ、
美香のおやじさんって言うのが
県の教育委員会のトップなんだって噂もある。
全くシャレにならね~!
だからさ、例え先生が今の実態を知った処で、
教員なんて何~んの役にも立ちゃしねってことさ!
下手すりゃ、飛ばされるのが落ちだ!
それだけじゃ済まね~かもな?
少女わいせつなんかを、でっち上げられて一生終わりかな。。。

とに角、山口美香って、恐ろしい女なんだ!
魔女だ!

だから、男も女もあいつだけには従うしかない!
分かったか?

美香ちゃんが、魔女! そんな~

・・・

私は、遠くの空をボ~っと見上げていました。
春の空は輝いている様です。
その空に薄く白い雲がゆっくりと流れて行きます。

美香ちゃんと私が仲良く手をつないで河原を走っている光景が
頭の中に浮かんで来ます。

美香ちゃんが目を輝かせて私に言っています。
私は正義の味方、ガブガブ噛みつきセーラームーンよ!

・・・

私は、我慢が出来なくなって

わ~ん わ~ん わ~ん わ~ん と大声でいっぱい泣きました。

そんな私の肩を、
缶コーヒーが優しく片手で摩ってくれました。

私は辛くて、悲しくて、胸が締め付けられる思いでした。

・・・

私はベンチからス~ッと立ち上がり、遠くの空を見上げました。
すると、
自分でも分からないのですが、私の口から自然と歌声が出てきました。

・・・

ラララ~♪ ラララララ~♪ ラララ~ララ~♪

Amazing grace how sweet the sound
That saved a wretch like me.
I once was lost but now am found,、、、、♪

・・・

歌いながら自分でも驚きです。
なんと美しい声なんでしょう、、、
なんと奇麗な声の響きなんでしょう、、、
その透き通る歌声は風に溶け込んで遠くまで流れて行く様です。

・・・

美沙、お前、
天才だよ!
俺、お前の歌声、初めて聞いたよ!
今までお前の歌より上手なの聞いたことが無い!
すっごい! プロよりうまいよ!

・・・

おい! 美沙!
お前、泣いてるのか?
ど~したんだよ? 何がそんなにつらいんだよ?
その涙はなんなんだよ、、、おい、美沙!
腹が痛くなって来たのか?

・・・

缶コーヒーが言いました。
美沙、あいつら放課後に気をつけろって言ったんだよな!
この時間だとあいつらは、もういないと思うが、
念のために今日は俺がお前の家まで送ってやるよ!
いいな!

缶コーヒーは、
そ~言って私を家の近くまで送ってくれました。
別れ際に、
明日の朝30分早く来いよ、自転車置き場で待ってる!
そ~言い残して、去って行きました。


———————— 家で


ただいま~

お帰りなさい、美沙ちゃん (台所から母の声です)

私は階段の処にカバンを置いて走って台所に入って行きました。

あ~ 良い匂い~
今日はコロッケなの?

和風ハンバーグにポテトサラダにコンソメのスープですよ。
今、大根をすり下ろしてるの。

わ~ おいしそう。
私はポテトを手でつまんで、パクリと食べちゃいました。
あ~ 美味しい!

これ、美沙ったら、ダメですよ、手を洗わなくっちゃ

お母さん、
今日も少し遅くなっちゃってごめんなさい、、
放課後、お友達とお話ししてたの、、、

パクパクパク、、、うま~  ぱくぱく、、、
お母さん、お代わり~

お父さんが言いました、
美沙、お前、食欲が戻って来たな!
よかったよ、この4~5日の食欲はお前らしくなかったからな~
(きっとその頃から脅されていたのでしょう。。)

え? 私、食欲無かったの?
私は食べる時が一番の幸せなんだけどな~
特にお父さんとお母さんと一緒のご飯の時が最高!

パクパクパク、、、美味しい~  ぱくぱく、、、
お母さん、お代わり~

結局、3杯お代わりしました。
あ~ 食った食った~ お腹パンパンだわ
私はお腹をポンポンとお父さんに叩いて見せました。

美沙、お前な~ 女の子だったよな~ そんなんじゃ
お嫁にいけないぞ!
もっと上品に出来んのか? な~ 母さん!
お母さんが、ニコニコと笑っています。

ごちそうさまでした~~~あ!
お風呂、先に入っちゃうからね~
お父さんも一緒に入っていいよ~ 一緒に遊ぼう!


———————– 部屋で


私はパジャマ姿で自分の部屋の机の前に座りました。

そして今日1日の事を思い出していました。
目を閉じると今朝の美香ちゃんの顔が浮かんで来ます。

整ったキレイ過ぎる顔が私を見つめています。
冷たい目、憎しみを込めた暗い顔、そして、
孤独で寂びそうな、笑いを忘れ切ったその表情。

あれが、この世界の美香ちゃん!

魔女か~あ、、、、不良女番長か~あ、、、、
悪どい卑劣な女!
皆からは、そ~呼ばれている。

でも、私はど~しても、そ~は思いたくない!
だって、あれは美香ちゃんだもん!

ど~したらいいんだろう?
美香ちゃんとやり合うことになるのだろうか?
もし私が美香ちゃんを負かしちゃったとしても
それで何が残るって言うの?
美香ちゃんは、ど~なってしまうの?

両親にはそんなことは相談できないわ!
心配し過ぎて卒倒しかねないもん。
昨日、
私の帰りが遅くなっただけで、
あんなにも心配してくれてたんだから、相談なんて無理。

こちらの世界に今井先生は居るのだろうか?
今井師範ならど~対処するんだろう。。。

波動の術の極意は、
戦わずして勝つこと!

私には特殊な能力があるわ。
合気道、空手、波動の術。そんなことは分かってるけど、
それで今の問題が解決出来ちゃうのだろうか?

相手に勝てば、それで解決出来ちゃうの?
美香ちゃんを救うことが出来るって言うの?
そんな単純な問題じゃない!
美香ちゃんは私の一番大切な親友なんだ。
向こう側とこちらで側で、事情が違ってても、
美香ちゃんが美香ちゃんであることには違いないわ。

向こうの世界で、私は美香ちゃんと遊びでやり合ったことは
あっても、本気でやり合ったことなんて1度もない。

きっと、こちらの世界でも美香ちゃんは、
合気道流空手を使ってるんだわ!
もしそうなら、缶コーヒーが言ってたように、
10人の男が一度に掛かっても一瞬にしてやられちゃう!

実際に、向こうの世界で、
20人の空手部員を一瞬にして美香ちゃんは倒しちゃったし、
巨体のプロレスラーだって簡単に倒したわ!
こちらの美香ちゃんに、その能力があるとすれば、
美香ちゃんの敵なんて存在するはずがない!

美香ちゃんと私の合気道流空手が互角としても
私には波動の術がある。
それを使えば美香ちゃんが、いくら強くても私が勝つ!

でも、その時は美香ちゃんは、私の前から
姿を消してしまうかもしれない。
私を憎んだままで終わってしまう!
そんなのってイヤだ!
だって私は美香ちゃんが大好きだもん!

難しいな~ 一体、ど~すればいいんだろう?

どんな時でも、合気道や空手なんて使ってはダメ!
まして波動の術なんて全てを滅茶滅茶にしかねないわ!
それに、武道の技を1度でも使えば、
美香ちゃんが、それにチャレンジして来ちゃう!

美香ちゃんについての情報がもっと知りたいな~
何かがあるような気がするわ。

・・・

それにしても、
缶コーヒーって、めちゃめちゃいい奴じゃん。

向こうの世界で、
私はあいつに冷たく接していたな~
本当の事を言うと、
私は向こうでも、あいつがスッゴイいい奴だと思ってた。
あいつ、頼りなさそうだけど、こちらの世界でも
やっぱ、めちゃいい奴!

ムシ子の事が好きで、
ムシ子の中のお市の方様を必死で守ろうとしていたわ。

その缶コーヒーが今、
この世界で私を何故か一生懸命に守ろうとしてくれてる。
私の中に、ムシ子とお市様を感じ取っているのだろうか?
本人は知らなくても、見えない糸で繋がっているのかもしれないな!

明日30分早く来いって言ってたな~
あいつをどこまで巻き込んでいいんだろう?

あいつには何故か心惹かれるのは確かだわ!
でも、
あいつが良い奴で、私にどんな思いを抱いても、
彼に対して私が好きなんて感情は持ってはいけない!
私はムシ子ではないし、お市様でもないんだから。。。

・・・・

あ~ 頭がまとまらないな~
明日ど~なっちゃうんだろう?
とに角、
缶コーヒーが言ってたように30分前に学校に行ってみよう。

よ~し、勉強をしなくっちゃ~ 頑張るぞ~
中2の私の成績を上げなくっちゃ!

それにしても、
こっちの中2の私って歌が上手なんだな~
向こうの高2の私は音痴でモゲモゲ!


夢と幻想の森