前回関連ストーリー⇒ 森での出来事(17)中2の私
私は野々村美沙。
こちらの世界で、中2の私は、
幼稚で、のんきで、成績の悪い、ダサ~イ女の子だと思っていましたが、
現実には、この子も色んな悩みや問題を抱えていたようです。
大の泣き虫ですが、性格は優しくて思いやりもあります。
全然強くはありませんが、
片山さんのお家での、歌やピアノには、私も感心させられました。
そして、
美香ちゃんを思う気持ちは、中2の私も高2の私も同じでした。
中間テストタイマンが開始されようとしています。
—————————- 中間テスト当日
いよいよ中間テストが始まります。
国語・数学・英語・理科・社会
保健体育・美術・技術家庭・音楽 全9教科
内の学校は5教科以外にも4教科が実施されます。
校内での順位は5教科で決まりますが、
美香ちゃんと私のタイマンは全教科が対象です。
総合点900点 です。
教科書に書いている内容は、全て頭にインプットしました。
凡ミスが無いように要注意です。
今回の試験は美香ちゃんとの対決です。タイマンです。
勝たなければ意味がありません。
勝か負けるかです。
引き分けはありません。
「中間テストタイマン」
美沙vs美香、
バカと秀才の対決!
試験日は、木、金の2日間で、
試験後の土、日、月(祝)で3連休です。
1日目の今日の試験科目は
数学・英語・国語・美術・技術家庭の5教科です。
何故か、
高2の定期テストよりも緊張しました。
一次方程式、連立方程式、スペル、熟語、英訳、
リスニング、文章問題読み取り、漢字、、、等々
試験内容は教科書の内容とほぼ同じ正当な問題ばかりです。
ひねくり問題は一切ありません。
全てが定期テストらしい問題です。
私は、慎重に解答していきましたが、直ぐに終わり
時間をギリギリまで使って、念入りに何度も
チェックしました。
完璧だと思いました。
ですが、
この試験結果を先生が見て、一体ど~思うんだろう~
赤点の私が、どの教科も満点か、きっとそれに近い点数ばっかりです。
間違いなく驚くはずです。
私の隣で缶コーヒーが必死で試験に取り組んでいます。
消しゴムで何度も消しては、又書き直しています。
私に刺激され今までになく、
親がビックリする程、頑張っていると言っていました。
・・・
試験は平穏にどんどん進んで行きます。
特に何事も起きません。
・・・
1日目の試験が終わりました。
放課後、
缶コーヒーがいつも通り私の後を追っかけてきました。
校舎の入り口の靴置き場にバタバタバタと走ってきて、
真剣な顔で私に聞きました。
おい! 美沙!
ど~だった!
・・・・ ジロ~
私の顔を食い入る様に覗き込みます。
・・・
私は、う~ん、、、と言って首をかしげました。
・・・
やっぱ、ダメか~
これが現実なんだな~ う~む、、、
・・・
缶コーヒーと私は、いつもの土手道の坂に並んで座り、
河辺で遊んでいる子供たちを黙って見つめていました。
缶コーヒーが、子供たちを見て、ポツリと言いました。
試験が無い頃が良かったな~
・・・
しばらく2人は黙ったままでした。
・・・
すると急に、
缶コーヒーがその場にサッ!と立ち上がりました。
美沙、
心配するな!
俺が、金は何とかする! な! だから、
もう気を落とすんじゃない! いいな!
・・・
え? あなたが、お金を?
マサキ君、一体、なに考えてんのよ。
10万円なんだよ! ど~するって言うの~?
・・・
10万円が何だよ!
たかが紙っ切れ10枚じゃんか!
そんな物で気を落としてたら、損するだけだぜ!
ど~せ、そんな金を払っても、あいつらは変わらんよ!
図に乗って、ず~っと、いじめられ続けられるだけさ!
俺が新聞配達の金を前借してさ、いくらかあいつらに払って
10万の残り分は俺が殴られてやるさ!
だから、もう、、くよくよすんじゃない!
・・・
マサキ君~
なんで、私のためにそこまでしてくれるの?
ダメだよ! そんなの、
あなたが殴られちゃうなんて!
私、耐えられない!
・・・
俺の事は気にしなくていい!
俺は殴られてるのって、慣れっこになってるからさ!
それにさ、
タンポポ!
え? タンポポ?
そ~だ! 美沙が、ここで俺にくれたタンポポさ!
あのタンポポは10万円じゃ買えね~
それ以上の価値だ!
え?
見上げると、
スカッとした爽やかな男子が腕を組んで遠くを見つめています。
私は缶コーヒーのその横顔を、じ~っと見つめていました。
自分の鼓動を感じました。
・・・
缶コーヒーが私の事を、こんなにも思ってくれているんだと
その時、つくづく思いました。(ありがとう缶コーヒー)
私の胸の中が、
じ~んと熱くなっていくのを抑えきれませんでした。
これって、、、、なに?
・・・
私は今日の試験の出来具合は話しませんでした。
まだ途中なのです。
明日の4教科が残っています。
美香ちゃんの試験結果だって、まだ分かりません。
缶コーヒーは、私が試験が出来なかったと思って、
私を慰め、私のために次の事を考えてくれているのです。
缶コーヒーが言いました。
よ~し、明日もテストだ!
美沙、今日も遅くまで勉強頑張るんだろう~?
え? 遅くまで?
・・・
出来るだけ早く寝ちゃうよ、私。
昨日も、そ~だった!
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
お前な~ 今は試験中なんだぞ!
試験中くらい、遅くまでやんなきゃダメじゃんか!
初めっからあきらめてど~すんだ!
缶コーヒーが、あきれ顔で私を見つめます。
・・・ ?
あの~? 試験中だから早く寝てるんだけど、私。
は~~~~あ?
俺、お前の言ってる事、全然わからんわ!
お前と俺、どこか歯車がズレてるって言うか、
脳内の分泌物の種類が違ってるって言うか、
お前の思考回路、何処かに変な異物でも詰まってるのか~?
分からん!
そ~なの~? それはそ~と、
マサキ君は昨夜、何時まで勉強しちゃったの?
俺か? 聞いて驚くなよ!
俺は真夜中までやったぜ! 9時までもな!
いや、9時10分までだ!
すっごいだろ、親がビックリしてたよ!
ふ~ん そ~なんだ!
じゃあ、今日も頑張ってね! 応援してるわ、私。
あのな~ 美沙、
お前、俺の事よりさ、忘れたんじゃないだろな?
お前、今、中間テストタイマン中なんだぜ!
分かってんのか~?
うん! 分かってる!
マサキ君!
今日はここで別れようか。あなたも勉強があるもんね!
もう、ここまで来ちゃったら心配いらないよ!
本当に、毎日、ありがとう。
・・・
そ、そ~か。
美沙、最後まであきらめんなよ!
例え負けても悔いが残らなきゃ
それで、いいじゃんか!
・・・
そ、それに俺がいる! いいな!
・・・
うん! ありがとう、じゃあ!
・・・
私は、缶コーヒーと別れて家路へと急ぎました。
しばらく土手道を自転車で走って、
土手の坂道を両足を伸ばして降りて行きます。
わ~い
あ~ 楽ちんだ~ 風を切って髪がなびきます。
坂道を降りた処は広場になっています。
その広場に自転車を進めます。
・・・
え! なに?
5~6人の男の人が立っています。
中学生ではありません。全員が大人の人です。
あの人たち何やってんのかしら?
私の通り道です。
若い2人の男の人が、
4人の体の大きい大人に囲まれています。
え?
何だかヤバーイ雰囲気です。
明らかに若い2人が柄の悪い大人に、いじめられてる感じです。
大人の世界でもいじめがあるんだな~
なんでみんな、そんなに弱い者いじめをしたがるのでしょう?
困ったな~ ど~しよう? なんだか怖そう!
今のままでは通れないわ。
私は自転車を停めて、来た道を引き返そうかな~っと思いました。
大回りしても家には帰れます。
と、その時、
若い1人が胸を掴まれて、ぐ~っと顔を引き寄せられました。
え! あれは!
私は、心底驚きました。
茫然として、
その場に立ったまま、若い1人の顔を見つめました。
ピーナツバター!
もう1人の若い男は、 でっぷりパンダ! です。
間違いありません!
私が小5の時の、南高の空手部に居た2人です。
高2の時の勇気と愛の会のメンバーです。
私よりは年上ですが、向こうでは私の大切なダチです。
良く見ると2人伴顔を腫らしています。
ズボンも土で汚れています。
事情は分かりませんが、人相の悪い4人の大男たちに囲まれて
フクロにされているのです。
と、その時、
悪そうな男たちがみんな、2人に向かって拳を上げました。
あ! ヤバイ! 2人が殴られちゃう!
私はとっさに、自転車のハンドルをグッ!と握りました。
すると、悪そうな4人は一気に10mほど先まで吹き飛んで、
気を失ってしまいました。
一瞬の事でした。
あ~ しまった! やっちゃった!
私は、
自転車にまたがって、その場所を通り過ぎて家に帰りました。
———————- 部屋で
私は、明日の試験勉強を全て終わらせました。
と、言うより、もう数日前から完了していました。
ですが、念のため何通りかやっただけです。
もうこれ以上やっても同じです。
時計を見ると、夜9時過ぎでした。
今頃、缶コーヒーも終わる頃かな~
寝~ちゃおっと!
私は、ベッドに入って今までの事を考えていました。
やはり頭に浮かんで来るのは、美香ちゃんの事でした。
あの川での水の事故の事です。
片山さんから聞いた話の内容や、その娘さんの事もです。
缶コーヒーのことも頭に浮かんで来ました。
・・・
それと、今日の
ピーナツバターと、でっぷりパンダの事も考えていました。
本当は2人に話しかけたくて仕方ありませんでしたが、
私の方からはしませんでした。
何故って、2人は私の顔を知らない風だったからです。
知ってたら、私に声を掛けたはずです。
ですが、それはありませんでした。
分かったことは、
私と関係が有る無しに関わらず、
向こうで存在している人間は、こちらでも存在しているってことです。
全員かどうかは分かりません。
新たな出会いだってあります。片山さんのように、、、
・・・
今日、私は
こちらの世界で初めて
波動の術を使いました。
自分でも、恐ろしい程の強烈な技だと思いました。
向こうの世界よりも、パワーアップしている。
もう先を読むとか、
気を合わせるとかの問題ではありません。
頭の中で念じただけで波動が生まれるのです。
理由なんて分かりっこありません。
今いる自分が、
時間のねじれの中に存在しているためでしょうか?
自分でも恐ろしくなります。
今日の場合は、とっさの事です。
ダチが殴られるのを見て見ぬ振りはできませんでした。
無条件に体が反応してしまいました。
ですが、結局は知らない人だったのです。
軽はずみだったかのかもしれません。
やはり、
こんな恐ろしい技は、こちらでは封印しなければなりません。
・・・
・・・ 私は、うとうとしながら考えていました、、、
。。
今井師範もこちらの世界のどこかに居るのかな~
今井先生に、お会いしたい、、、
クー クー クー クー むにゃ むにゃ、、、クー クー
いつの間にか眠っていました。
————————– 翌朝
朝日が窓から差し込んでいます。
あ~ まぶしい~!
私は、手を目にかざして光を遮りました。
さあ~ 起きよう よし!
私は、
登校の準備をして、カバンを持って階段を走り降りました。
バタバタ、、バタン、、ドン!
おはよ~ お父さん、お母さん
お父さんが新聞を広げています。
お母さんが、味噌汁を継いでいます。
・・・
いっただきま~す!
パクパクパクパク、、、、ムシャ、ムシャ、、ぱくぱく
お父さんの卵焼きを、素早く取っちゃいます。
いっただき~ パク! あ~ うま~い
お母さん、お代わり~
お父さんが、呆れた顔で私を見つめます。
そして私に何かを言おうとしました。
すかさず、言いました。
待って! 言わなくても分かってる!
女の子らしくでしょう~
でも、
腹が減っては戦は出来ないもん!
・・・
パクパクパク、、、ガバッ! ガバッ! パクパク
お母さん、お代わり~!
お父さんとお母さんが顔を見合わせています。
そして、急にお父さんが大声で笑い始めました。
わっはっはっ、、ハッハッハ! わっはっはっ!
お母さんも、くすくす笑っています。
よ~し、美沙! お父さんの納豆も食え!
このハムもやる! しっかり食って大きくなれ!
・・・
大きくなれ?
中間テスト頑張れって、言わないの~?
なんて親なんだーーーーーーーーあ! ま~いっか!
——————- テスト2日目
さ~ いよいよ中間テスト2日目、
最終日です。
試験科目は、
理科・社会・保健体育・音楽の4教科です。
今日の試験で決着がつく!
私はチラッ!と美香ちゃんを見ました。
気など全く感じられません。
姿勢を正して前を向き、じ~っと目を閉じているようです。
試験に集中しようとしているのでしょうか。。。
結局、昨日と同じように、4教科とも
時間いっぱいを掛けて念入りに、ミスが無いように
何度も何度もチェックしました。
理科で1か所、凡ミスを発見しました。
あっ! 危ない処だったわ!
ですが、4教科とも完璧でした。
中間テストは無事終了しました。
私は全力を尽くしました。
缶コーヒーが言うように、負けても悔いが残らなければいい!
そ~思いました。
「中間テストタイマン」
美沙vs美香、
バカと秀才の対決!はあと、結果を待つばかりです。
———————— 帰りの土手道の坂で
缶コーヒーと私は
いつもの土手の坂に並んで座りました。
河辺ではいつも通り、ちっこい子供たちがはしゃいでいます。
この河辺で美香ちゃんと私は、水の事故に合ったのです。
そして、この河辺を美香ちゃんと私は夕陽に向かって
笑顔で走ったのです。
向こうの世界で、小5の時、
夕陽に向かって走るぞ~!
そ~言って2人で笑いながら走ったのです。
・・・
・・・・ 悲しいな~
缶コーヒーが、小さな声で言いました。
終わったな! テスト!
うん!
・・・ し~ん
美沙、絶対に俺が何とかする!
・・・
お金を取られて、殴られちゃうの?
私のために?
おう!
・・・ し~ん
いやよ、そんなの!
美香ちゃんの狙いは、私なんだから、、、
マサキ君が殴られるなんて耐えられない!
もう、ヤメテ!
私はそ~言って、缶コーヒーの目を見つめました。
・・・
美沙、
俺って、その目
私の目?
お前の、その目だ!
その目で、今回俺は初めて見つめられた。
今の様に!
・・・
だが、
1年生の時から今まで、お前は1度として俺を見てくれなかった。
お前の席の直ぐ横に、ず~っといつも俺は居たのにな。
俺は、度胸がないから、思ってることなんて言えない。
お前は、野々村美沙だ!
その野々村美沙が、俺を見つめてくれた! その目で
それで、充分だ!
・・・
マサキ君!
・・・ し~ん
私は試験の出来具合は話しませんでした。
自信はあっても、まだ結果が出ない以上は話せません。
・・・
よし! 美沙、じゃあ、そろそろ行こうか!
俺が、家まで送ってやる! 帰ろう!
うん!
そ~言って2人は立ち上がりました。
私は缶コーヒーに言いました。
ここまで来たらもう大丈夫!
私、一人で帰れちゃうから。。。
・・・
そ、そっか、分かった!
私は、土手道で缶コーヒーと別れ、自転車を走らせました。
私の胸の中から何かが込み上げてきました。
熱い、あつ~い何かです。
・・・ だから
私は自転車を停め、缶コーヒーを振り返りました。
缶コーヒーがサドルに立つようにして、自転車をこいで行きます。
私は道の真ん中に大きく脚を開いて、その背中に向かって
両手を口に当てて大きな声で叫びました。
・・・
マサキ君-------------------ん!
・・・
すると、
缶コーヒーは、自転車を停めて私の方を振り返りました。
かなり距離はあります。
・・・ 思いっきりの声で言いました。
好きだよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!
・・・
缶コーヒーが白い歯で、にっこり笑うのが見えました。
私は、直ぐに自転車に飛び乗り家路に着きました。
胸が熱いのが冷めませんでした。
もしかして、私、、、、、
土手道からいつもの坂道を下って行きます。
昨日、ピーナツバターとでっぷりパンダが変な奴らに
絡まれていた広場が近づいて来ました。
・・・
缶コーヒーと土手の道で別れたのは、昨日の事が
あったからです。
缶コーヒーを、これ以上変な事に巻き込めません。
私は用心をしながら広場に近づいて行きました。
もう軽はずみな事は出来ません。
・・・・ 広場をじ~っと見渡しながら進みます。。。
・・・
あっ! 人が居る!
1人のスラっとした背の高い男の人が、広場の横に立っています。
まさか!
昨日の事で私を待ち伏せしている?
ど~しよう?
もう軽はずみに、技なんて使いたくない!
少しづつ自転車が男の人に近づいて行きます。
・・・・
・・
私は次の瞬間、
自転車を投げ捨てて、男の人に全速で走って行きました!
・・・ タッ、タッ、タッ、タッ、タタタ
お兄ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
私は、お兄ちゃん飛びついて抱き着きました。
いっぱい、いっぱい抱き着いてお兄ちゃんの体を
離しませんでした。
お兄ちゃんに両腕を絡め、両脚で挟んでしっかりと
抱き着きました。
そして、
わ~ん、わ~ん、わ~ん といっぱい涙を出して泣きました。
こっちの泣き虫の私がバーンと出てきます。
・・・
お兄ちゃんはビックリして、
おい、美沙、一体、ど~したんだ? そ~言って
優しく両腕で私を包んでくれました。
あ~ お兄ちゃんの匂いがする。。。。
さわやかで、すっきりしてて、清潔ないい匂い、、、嬉しい~!
お兄ちゃんに会えて嬉しくて泣いちゃった~
はははは、、、、
美沙は、いつまで経っても泣き虫だな~
さあ、美沙、帰ろう!
父さんと母さんとが、待ってる!
うん!
—————————– 家族で夕食
うっわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
すき焼きーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
嬉しいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
わ~ いい匂い
めちゃ幸せ過ぎて、気絶しそう!
なんだ、美沙、相変わらず大げさな奴だな~ (兄)
健一、お帰り、(父)
よし、これで家族全員が揃ったな! じゃあ食べようか!
いっただきまーーーーーーす!
パクパクパク、、、美味しい~ ぱくぱく、、
兄は私を見て、にこにこと優しく笑っています。
これが、こっちの世界の、お兄ちゃん!
向こうのお兄ちゃんと一緒です。
お兄ちゃんが言います。
美沙、今日まで中間テストだったんだって?
随分と頑張ってたらしいな、母さんから聞いたよ!
でも、あんまり勉強を頑張り過ぎるとバカになっちゃうぞ!
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ?
(一体、この家族ってど~なっちゃってるの~?)
パクパクパク、、、美味しい~ ぱくぱく、、最高
お兄ちゃん、私、自慢じゃないけど、赤点なんだよ!
もっと勉強しろ!とか、頑張れ!とか言ってよ!
もっと叱るとかさ! このバカーー!っとかさ!
パクパクパク、、、ぱくぱく、、
お母さん、お代わり~
・・・
ハハハハハ、、、、お前はバカじゃない!(兄)
叱る必要なんってないじゃないか?
健康で優しくて勇気のある人間になればそれでいい。(父)
そ~よ、美沙ちゃん、(母)
あなたはとっても優しくて勇敢な子でしょう、それで十分よ
も~う、この家族には付いて行けなさそう!
ハイ、ハイ! 分かりましたっ!
でも私、
今回の中間テストは全教科伴、満点か、それに近いよ!
そ~か、、、 シラ~
・・・ ? あれれれ~ なに、この反応~?
全然、驚かない? なんで~?
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、
あの~? 聞こえちゃった~ 今の?
全教科伴、満点か、それに近いって、言ったのよ!私。
・・・ み~んな 食べるのに集中、、
お兄ちゃん、聞いてた~?
なにを?
私、全教科伴、満点か、それに近いって、言ったのよ!
おう! そ~か、、、それがど~した?(兄)
え、えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
信じられない?
もう、中間テストの事はいいじゃないか。。。(兄)
お前が、満点取れるのは当たり前だろう!
お前は天才なんだから、満点は当然だ!
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
私が、天才ーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
一体、何を言ってんの~?
私が天才って、ど~いうこと?
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、
お母さん、お代わり~
お兄ちゃん、からかわないでよ、、
変な事言わないでよ~ まったく、、、
美沙、お前、ど~かしてるぞ!(兄)
今更、何言ってんだ! お前は稀にみる天才だろう!
自分で気が付かないのか?
勉強なんて、お前にとっては簡単だろう、、
それ以上に、歌とか楽器とか、、、
自分で歌ってて分かんないのか?
え! 歌?
う~む、、確かに、 てことは
・・・
え?
まさか、私、本当に?
大変だーーーーーーあ! 私、きっと本当に天才なんだ~!
だから、
片山さんの家で歌とかピアノが、あんなに上手だったんだ!
こっちの私って天才!
ただな、、、、ウフフフッ!(兄)
ただ運動は今一だがな! ケラケラ
美沙、
お兄ちゃんだって、自分で言うのもなんだけどさ、
お前にはかなわないが、俺も勉強は天才だと思ってる。
お兄ちゃん、自分で言ってるじゃん。。(私)
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、
ただお兄ちゃんは、お前と違って、
運動は天才かな~ 多分? イヤ絶対に!
だから、今、大学で武道の新分野を開拓中なんだ。
お兄ちゃんだから出来るんだ!
えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!
武道ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!
私は立ち上がって、大きな声を上げてしまいました。
皆がビックリして引きました。
・・・
お兄ちゃん、武道って、何やってんの~?(私)
あ~ビックリした~!(兄)
何だよ! 美沙、急にど~したんだよ!
私はこっちの世界のお兄ちゃんの事も、自分の事も
全く分かっていません。
一体、この家族ってどんな人たちなの?
・・・
少し興奮気味です。抑えなくっちゃ!
何か私の知らない、すっごい事があるみたいです。
・・・ 落ち着くのよ
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、
処で、お兄ちゃん、
武道の新分野を開拓って、どこまで進んでいるの?
・・・ 聞き出さなくっちゃ
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、
ああ、まあまあかな、、
今回、家に帰って来たのも、先生がこの近くの山で修行を
したいって言うもんで、お兄ちゃんも一緒に来たんだ。
家も近くだし、それで帰って来たんだけどさ、
そしたら、
昨日この近くで、変な事件が起こったらしくてさ、
それで、心配だからお前を迎えに出てたんだ。
で、さっき、あそこで、お前と会えたんだよ!
・・・
・・・ ゆっくりと聞き出さなくっちゃ
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、美味しい
お母さん、お代わり~ 卵も~
ふ~ん そ~だったの、、、
それで、その変な事件ってどんな事件なの?
ああ、、、良く分かんないんだがな、
信じられない程強い2人の大学年生が
ヤクザ4人を一瞬でぶちのめし、半殺しにしたために、
組員たちが、この周りを躍起になって探してるらしい。
・・・ え、嘘! それって私じゃん
パクパクパク、、、むしゃむしゃ ぱくぱく、、
それはそ~と美沙、今、お前、何杯目なんだ?
は~? 分かんない? だって美味しいんだもん!
そっか~ まあいい。。(兄)
あんな処をうろうろしてると、お兄ちゃん、間違えられちゃうよ、(私)
お兄ちゃんだって大学生じゃん!
あ~ そ~かもしれんな、でもお前の方が心配だったんだ!(兄)
女の子1人だしな。。
それにお兄ちゃんは大丈夫だ!
ふ~ん 武道やってるから~?(私)
ああ(兄)
健一、合気道もいいが、(父)
お前の将来の進路大丈夫だろうな!
あ~ 父さん、俺、もう決めてあるから!(兄)
そ~だったな。(父)
え!
合気道!
お兄ちゃんの武道は合気道なんだ!
向こうの世界のお兄ちゃんと同じだわ!
健一、今日はゆっくりしていってね。(母)
2階のお前の部屋、窓を開けて空気の入れ替えしてるから、
上がったら適当に閉めてくださいね。
ごちそうさまでした~あ!
お兄ちゃん、お風呂が済んだら部屋に行ってもいい?
おお! 来いよ! 抱っこして欲しいんだろ!
それとも、おんぶか~?
楽しい夕食の時間でした。
———————— お兄ちゃんの部屋で
トントン!
お兄ちゃん、美沙だよ、入っていい?
いいぞーーーーーーーーーーーお!
お兄ちゃんが部屋の真ん中に立っていました。
私は、走って、お兄ちゃんに飛びつき
抱っこしてもらいました。
美沙、お前は、いつまで経っても赤ちゃんだな~!
お前、覚えているか?
母さんが忙しい時に、
お兄ちゃんは、お前をず~っと抱っこや、おんぶで
家の中や近所を子守して回ってたんだぞ!
お前は泣き虫で、よく大きな声で、わ~ん わ~んと
泣いたもんだ。
今も、そ~だがな、、、ハッ、ハッ、ハッ!
私、覚えてないもんね~
そっか~ まあいいや
美沙、何か聞きたいことが有るんだろう?
言ってみろ! 今日の話か?
お兄ちゃん、
私、天才なの?
ああ、、お前も俺も勉強面では一般に言う天才だろうな。
でも、お前の場合は、稀に見る天才だ!
勉強だけじゃない、
音感には、ずば抜けて敏感みたいだな!
だから、どんな楽器も聞くだけで弾けるようになるし、
歌も天才だ!
分かってるはずだ!
う、、、うん (私)
お兄ちゃんは、音楽ではお前にはかなわないが、
運動では天才的な能力があるみたいだ。
お前よりはな。
でもな、美沙、父さんも母さんも俺たちを天才として
育てようとしていないんだ。
何故だか分かるかい?
世の中で天才として生きるより、平凡な人間でいいから
健康で優しくて勇気を持って、少しでも人の役立つ人間に
なる方が幸せになれるって思ってるからだ。
天才は必ず誰かに利用される。最悪の場合は悪用されて
人を不幸にしかねない。自分の意思に関わらずだ!
また、
天才的な能力で地位や名誉やお金が手に入っても、
そんなものでは決して人は幸せになれない。
下手をすると不幸になってしまうかもしれない。
それを
父さんも母さんも、よ~く知ってるんだ!
だから、
父さんも母さんも、俺たちが天才だってことを
世間に伏せているんだ。
ふ~ん そ~なんだ。。
(私は今までの両親の態度に納得できた気がしました。)
お兄ちゃん、ありがとう、私、分かった!
そっか、良かったよ!
・・・
・・・
まだ聞いてもいい?
ああ、、、時間はいくらでもある。
ところで美沙、
抱っこしてるの、降ろしていいか?
手がだるくなって来たぞ!
よし、じゃあ、そこに座れ!
うん!
お兄ちゃん、合気道のこと教えて。
新分野の開拓って何?
お~~ぉ、、、、今度は合気道か?
だが、これは、かなり専門的で難しい話になるぞ。
美沙が理解できるかな~?
難しくてもいいから、聞きたい! お願い、話して!
ね! ね! 話して、お願い!
・・・
そ~だな~
・・・ 私はお兄ちゃんの顔を見つめました。
よし、お兄ちゃんの得意分野だ!
今、研究してることを少し話してやるよ。
美沙、お前の体温は何度ある?
え? 私の体温? 多分だけど36℃位だよ。
お前、恋をしたことってあるかい?
う~ん よく分かんない、、、
そ~か じゃあ、胸の中が誰かと居る時にじ~んと
熱く感じる時ってあるかい?
何か熱い物が込み上げて来る感じだよ?
最近、何度かあった?
そ~か
その時は、実際に体の一部の温度が上がっているんだ。
相手も同じだ! 互いに程度の差はあっても
基本的には同じなんだ。
人間は体の温度が上がると、何かが変化する。
科学的には、
人間の意思や思考は温度と電磁波とエネルギーで出来ている。
意思や思考は脳の働きだよね。当然それは肉体に直結している。
分かるかい?
・・・ ふ~ん? なんとなく分かる(私)
温度について話すと、
相手の体温を上げれば、相手は動かされる。
自分が相手を動かすことになるんだ。
具体的には、
美沙のために何かを必死でやろうして動いたり、
美沙を守ろうと動いたり、
美沙のために自分を犠牲にして動いたりするとかだ。
美沙も、相手のために何かを必死でやろうとして動く。
その典型的なものが、恋だ!
逆に、憎しみの場合は、相手を傷つける動きもする。
ただ、それらの動きは緩やかな場合が殆どだ!
でも実際には、さまざまな形で動きを見せる。
・・・
そして、ここからがお兄ちゃんが、今やってる
合気道の新分野の開拓だ!
お兄ちゃんが、大学で習ってる合気道の先生に、
武道の天才と言われる、今井先生と言う方がいらっしゃる。
今井先生は、相手を技を使うことなく倒す方法を
研究されてる。
つまり、自分が持ってるエネルギーで自分の電磁波を
相手に飛ばし、相手の体の温度を変化させ相手を動かし
投げ飛ばす方法なんだ。
それは、恋とか愛、憎しみで相手や自分が動くのと、
全く同じなんだよ。体内温度の変化の利用だ!
今井先生は合気道に、それを取り込もうとしている。
そしてお兄ちゃんも先生と一緒になって、
今必死で開拓に取り組んでいるところなんだ。
難しい話で分かり辛らかったかもしれないが、
ま~ そんな処だよ。
お兄ちゃん、で、開拓はどこまで進んでるの?
今井先生は一通り完成されているよ。
夕食の時にも話した様に、
自然界の中で自分のパワーをアップしようとしているんだ。
自然界には色んな強いエネルギーが満ち溢れているからね、
それを体の中に取り込もうとしている。
明日、山小屋で合流することになってる。
それで、お兄ちゃんも、その技出来ちゃうの?
あ~ お兄ちゃんのは、まだまだなんだけど、
少しは出来る!
お兄ちゃん、私にお兄ちゃんの、その技をやって!
おい、おい、美沙!
一体、お前、ど~したんだ? そんなに興味を持つなんて
意外だな!
ね~ 早く! 早く! やって、やって、
美沙、この技は使っちゃいけないことになってるんだ!
秘密なんだ! 門外不出っていうか、ダメなんだ!
お兄ちゃん、そこまで話してズルいよ!
やってくれなきゃ分かんないもん!
お願い、見せて! ね~ おにいちゃん! 早く 早く
ね~ 早く! 早く! やって、やって、お願い
・・・
ふ~む 仕方ない奴だな~ 美沙は、、、
よし、じゃあ、少しだけだぞ!
そこに立ってろ!
お兄ちゃんは、ここに座ってるからな! いいか
少しだけだ!
うん!
私は部屋の中央に立ちました。
お兄ちゃんは、少し離れた処に正座して座りました。
美沙、本当にいいのか?
うん!
じゃあ、行くぞ!
そ~言って、
お兄ちゃんは、座った状態から私を、一瞬見つめました。
あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~あ!
くるくるくるくる 、、 くるくるくる、、、
私の体が宙に浮き上がり回転し始めました。
わ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~あ~
あ あ ああ あ~
目が回る~~~~~~~~~~~~~~~~~う~
ど~なってるの~~~~~~~~お~ くるくるくる、、、
バサッ!
お兄ちゃんの膝の上に、お尻から落っこちて、抱っこされました。
うへ~
・・・
おい! 美沙、 おい! 美沙ってば!
大丈夫か? 美沙!
お兄ちゃん、私、目が回ってる~
ゴメン! ゴメン! 美沙! 少し回し過ぎた! 悪かった!
美沙、本当にゴメン、大丈夫か?
うん! まだ目がくるくる回ってる。。。。
お兄ちゃん、すっごい!
私は本当にビックリしました。すっごい技です。
信じられない程の驚きでした。
これって、波動の術? イヤ、そんなんじゃない!
私の技でも、これに近い事は出来ちゃうけど
、
何かが違ってる。 別の物だわ! とにかくスッゴイ!
・・・
ねえ! お兄ちゃん、
明日、私もお兄ちゃんと一緒に行くーーーーーーーーーう!
は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~あ~?
私、今井先生に会いたい!
え~~~~~~~~~~~~~~~~え!
美沙、お前、何言ってんだよ。
お兄ちゃんたちは、遊びでやってんじゃないんだぞ!
ダメだよ!
・・・ 私は必死でせがみました。
開発の研究って1日中やってんの?
ず~っと難しいことばっかしてるの?
山小屋でお昼休憩なんてしないの?
お弁当食べちゃうとか、作っちゃうとか
風景を見学して楽しむことなんてしないの?
散歩しちゃうとか、自然の中で遊んじゃうとか、、、
。。。
それは、先生は明るくて楽しい人だから、
傍に居てても、わいわいと賑やかだし、
ケーキのおやつを食べるのが大好きだし、
子供っぽい性格してて、
とに角、楽しいのが大好きな性格してるからさ、
だから、み~んなからも好かれてるよ。
だったら、いいじゃない!
私、絶対に開発の邪魔なんてしないから。
山小屋で食事のお手伝いなんかもしちゃうから。
ねえ、お願い!
会いたい! 会いたい! 会いたい!
合わせて、、、合わせて、お願い、お願い!
私も連れてって、連れてって、連れてって、
私、3連休なの、だからいいでしょう! お願い!
この近くなんだから、いいでしょう、、、ねえ~お兄ちゃん
ふ~む また、だだをこねるのか~?
じゃあ、先生に電話して、聞くだけ聞いてみるか~
ダメだったら、あきらめるんだぞ~
・・・
そ~言って、お兄ちゃんは、机の上のスマホを取りました。
・・・ し~ん
・・・
、、、 あ、健一です。 今よろしいでしょうか?
あのですね、実は、、、僕の中2の妹が明日ロッジに
一緒に行きたいと言って、だだをこねられてて、、、、
いいよ! いいよ! 連れて来なさい!
みんなで、楽しくやろうじゃないか!
紀子君の話相手にもなるしね! いいじゃないか!
携帯の向こうの声が微かに聞こえます。
え! 本当にいいんですか~?
君の妹さんなんだろう、、いいに決まってるよ!
ありがとうございます。
ご迷惑おかけするかもしれませんが、
よろしくお願いいたします。
じゃあ、現地で会おう!
あ、はい! 失礼いたします!
やったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
嬉しいーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!
めちゃめちゃ、楽しみ、
お兄ちゃん、大~~~~~~~~~~~い好き!
私はお兄ちゃんに抱き着いちゃいました。
・・・
私は、お兄ちゃんの顔を見つめて言いました。
お兄ちゃん、本当にありがとう!
あ~ いいさ!
紀子さんって誰?
お兄ちゃんの好きな人~?
う! (兄)
ジロ~~~ッ、、、(私)
、、、何見てるんだ? (兄)
彼女はお兄ちゃんと同じ今回のメンバーだ!
ふ~ん (私)
でも、お兄ちゃん、顔が赤いよ!
顔の体温が上がっちゃってる!
私、さっきのお兄ちゃんの難しい話、これで納得!
夢と幻想の森