前回関連ストーリー⇒ 森での出来事(15)中2の私


私は野々村美沙。

私がこちらの世界で、
中2の女子中学生として初めて登校した朝、
自転車置き場で、ショッキングな事件が起こりました。

親友の美香ちゃんが、こちらでは、めちゃ強い不良番長になってて、
いっぱい子分を従えて私を恐喝しています。
私は、お金をゆすられ、お腹も美香ちゃんに殴られました。

缶コーヒーは私を守ろうとして殴られっぱなしです。
それでも彼は、新聞配達で貯めたお金を私のために
不良たちに払ってくれることになっちゃって、缶コーヒーと私は
今日の朝、
30分早く自転車置き場で待ち合わせしています。

でも、
私はど~しても美香ちゃんを憎めません!
私は美香ちゃんが大好きです。私の大切な親友だからです。



———————— 朝


母が、朝食を30分早く作ってくれました。
私が早く学校に行くってことで、それに合わせての
朝食です。

お父さん、お母さん、ごめんね~
お友達と30分早出で約束しちゃったの、、、

パクパクパクパク、、、、モグモグ、、パクパク

食欲旺盛です。
ご飯も3杯食べました。

美沙、学校の方はど~なんだ?
母さんから聞いたんだけどさ、お前、
勉強をする気になったんだって?

そ~だよ、私、もっと成績上げたいの!
お父さんと、お母さんの子供だもん!
私ね、
未だ何のために勉強をするのか分かんないけど、
成績を上げたら分かるかもしれないって思ってるの。

だから、やってみる!

お父さんと、お母さんが顔を見合わせています。

そ~か、でも
あまり無理すんじゃないぞ!

うん!

じゃあ、いってきま~す。



———————— 学校で

私は、風を切る様に自転車をこいで学校に向かいました。
通い慣れた土手道の両端にタンポポが咲いています。

あ~ タンポポが きれい
さすがに30分早いと、人は少な目です。
校門を通過して自転車置き場に向かいました。

缶コーヒーとの待ち合わせの時間通りの到着です。
きっとあいつが五千円を私のために用意してくれてるんだと
思いました。

今の私は、
缶コーヒーのその行為に甘えるしかありません。
彼が必死で貯めた大切なお金です。
でも今回は何とかそのお金で、この難局を乗り切る他はありません。
ゴメンね! 缶コーヒー!

お金は必ず少しづつ返していくからね。
月に500円づつ返して10ヵ月間の返済で缶コーヒーに
お願いしちゃおっと。

自転車置き場が見えてきました。

・・・・ ?

え? なに?

ど~なっちゃってるの?

10人位の男女が、私のいつもの自転車置き場にたむろしています。
その男女の少し離れた手前の地面に人が倒れています。

え、嘘!

缶コーヒーが!

缶コーヒーが私に来るな~って手で合図しています。
私は、自転車をその場に転がして、缶コーヒーの倒れている処に
必死で駆け寄りました。

ひど~い

缶コーヒーが鼻血を出して倒れています。
私はピンクのハンカチで直ぐにその鼻を押さえました。

缶コーヒーが言います。
こいつらはまともじゃね~
五千円出したけど殴られちまった!

美沙、逃げろ! 早く!

・・・

私は、そこに居る男女に向かって大きな声で叫びました。

止めて下さ~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!

お願い、止めて~!

止めてーーーーーーーーーーえ!

何故、こんなひどい事をするんですか~?
もう止めて! お願いです。
止めてください。

美沙、いいんだ、お前は逃げろ! 早く!
俺の事はいい! ここは俺が何とかする。
だから逃げるんだ!

・・・

缶コーヒーが、そ~言うと男が私の肩を押して
缶コーヒーから引き離し、彼の腹を足のつま先で
蹴り込みました!

ドスッ!

生言ってんじゃね~ぞ! このバカ野郎が!
女を逃がして自分が犠牲になるってのか、、格好つけんじゃね!

ドスッ!

止めて~~~~え! お願いします。
もう止めて!
この人は関係ないんです。
だから、この人にひどい事をしないで、、、お願い!
やるなら私をやって!

そ~言って、
私は缶コーヒーの前に、手を広げて立ち塞がりました。

そ~かよ、ならお前を殴ってやる!
覚悟しな!

ビュー!

男の拳が私のお腹をめがけて飛んで来ます。
次の瞬間、

ドン! ぎゃーーーーーーーーーーーーーーあ!

男は3m程離れたところに吹っ飛んでいきました。
投げ飛ばされたのです。

周囲に居る人間が、思わず、
うわ~~~~~~~っと言う声を発しました。
そこに居る全員が、その光景に息を飲み愕然とした
表情をしています。

え?

美香ちゃんが私の前に立っていました。

そして、吹っ飛んだ男に対して言葉を吐きました。

てめ~ なに出しゃばってんだ!
誰が美沙を殴れって言ったんだよ!
これ以上、出しゃばった真似したら、殺すぞ!
いいか!

は、はい!

吹っ飛んだ男は腰を片手で押さえてやっと立ち上がり、
美香さん、どうもすみませんでした。
そ~言って、深~く美香ちゃんに頭を下げて、
大きな体で、びっこを引きながら後ろに退きました。

美香ちゃんが私を真正面から見つめます。

・・・

美沙!
私が怖いか?

怖い?
私は美香ちゃんが怖いなんて、1度も思ったことはないわ!
怖くなっんてないよ!

ドボっ! うっ!
美香ちゃんの拳が私のお腹にめり込みました。

う~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~う~

私は足元の缶コーヒーの体の上に、かぶさる様に倒れました。
一瞬のパンチ!
すっごいシャープなパンチです。
その動きは目に見えない!

私と同じか、それ以上かもしれない!

向こうの世界の美香ちゃんじゃない!

美沙!
大丈夫か?
缶コーヒーの声が私の体の下から聞こえます。

美香! 頼む!
美沙を殴るのは止めてくれ!
金も渡しただろ、もう許してくれ!
やるなら俺をやれ、美沙は見逃してくれ、頼む!

美香ちゃんが私たちを見下げて、ケラケラと笑っています。
そして片手で子分を呼び寄せて、
お~い、お前らこっちに来てこいつら2人を見てみな!

仲良し恋愛ごっこしてや~がんの~
互いに相手をかばって、
2人伴殴られてりゃいい、、ケラケラ
美香ちゃんの笑いで、皆も一斉に笑い始めました。

・・・

美沙!
まあ、金ももらったし、そこのバカ男の顔に免じて
今日の処はこれで許してやら~
だかな私は、お前みて~な裏切り女は、で~嫌いだ!
絶対に許さね~ 覚えときな! このクソ女!

そ~言うと、
私たち2人に向かって唾を吐き捨てました。

プッ!
おい、行くぞ!

美香ちゃんと10人程の子分は、ぞろぞろと去って行きます。

・・・

私は立ち上がり、大きな声で連中の背中に向かって言いました。

待って!

卑怯だわ! 美香ちゃん!

美香ちゃんが立ち止まり、ゆっくりと私の方を見ました。

・・・

何が言いたい、美沙!
言ってみや~がれ!

缶コーヒーが苦しそうな声で私に言いました。
止めろ!美沙!
まともな相手じゃね~ 構うな!

私は手で止める缶コーヒーを振り切って
立ち上がり、2~3歩前に歩いて行きました。

・・・

あんたは卑怯者だわ!
弱い者いじめしてる!
弱い者いじめをする人は卑劣な人間よ!
あんたはただ喧嘩が強いだけじゃない!
皆から怖がられてるだけじゃない!
本当は弱虫よ!

 

子分の男が言います。
なんだと~~~~お!
美香さんに向かって、何てことや~がるんだ!
子分の男の何人かが私に向かって走り出そうとしました。
それを美香ちゃんが止めます。

待ちな! お前らはじっとしてろ!(美香)

美沙!
何がいいて~え! 言ってみろ!

美香ちゃん! 私と勝負して!

。。。

・・・ し~ん

・・・

次の瞬間、全員が噴き出すように笑い始めました。

きゃっははははは、、、ハハハハハ、、、、

お前、気でも狂ったのか?
美香さんと勝負するって、お前、アホか~?
美香さんはな~ よ~く聞けよ、、、
俺ら男が30人掛かっても勝てっこね~強さなんだぜ!
その美香さんと勝負するってんのか~ バ~カ!

・・・

あんたたちの勝負って喧嘩しかないの?

・・・

美沙、
お前が思ってる勝負ってなんだ?

・・・

勉強よ!

・・・ ?

・・・

次の中間テストの総合点で勝負よ!

美香ちゃん、あんたにタイマンを申し込む!
あんたと私の中間テストタイマンよ!
ど~なの? 受ける?

・・・

。。。 し~ん

・・・

又、全員が噴き出すように笑い始めました。

きゃっははははは、、、ハハハハハ、、、、ハハ
うわっははは~

お前な~ 美香さんは毎回試験ではトップなんだぜ!
トップの席を譲ったことは1度としてね~
俺らの自慢の人だ!
お前、分かってんのか?
聞くところによると、
お前はよく赤点取ってるらしいじゃんか、、、
お前なんかに勉強で美香さんに勝てるわけね~だろう!
お前って、予想以上のバカなんだな!

ははははは、、、ハハハハハ、、、、ははは、、、

・・・

美沙、
お前が負けたら10万円払うか?

美香ちゃん、
私が勝ったら、もういじめは止めて!

美沙、
そりゃ~甘~え!
ただし、そこのバカ男を殴るのは止めてやる!
金も返してやる、五千円な!

・・・

美香ちゃん、
勝負がつくまで私たち2人に手を出さないで!
約束して!

よかろ~ 受ける! じゃあな!(美香)

連中は美香ちゃんを先頭にして、校舎の方へ立ち去って行きました。

私は、缶コーヒーの処へ走り寄り、背中を摩りました。
大丈夫ですか? マサキ君、

・・・

大丈夫じゃね~よ! お前がな!
お前、美香とあんな勝負して勝てると思ってんのか?
あいつは、ずば抜けた秀才なんだぞ!
負けたら10万じゃ済まね~
美香は増々図に乗って暴れ放題だ!
とんでもね~勝負を張ったもんだ!
中間テストまで、あと5日しかね~
お前、本当に自信あんのかよ~

・・・ う~ん ど~かな~?(私)

この前返してもらった数学の点数、何点だったんだ?

この前の数学?

そ~だ! 何点だったか教えろよ!
今は、も~俺にも無関係じゃね~んだからな!

36点

はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

嘘だろう~~~~~~~~~う! 俺、気絶しそう!
俺より悪いじゃんか~ 俺でも38点だ!

美沙、
お前って、稀にみる、とんでもない性格だよ!

 

マサキ君、私、頑張るから、元気を出してください!
きっと良いことだってあるかもしれないじゃない、、、
現に、
中間テストタイマンの決着までは、私たち少しは安心でしょう!

安心なんて甘い、奴らを信用なんて出来ね~
用心しね~と、何されるか分かったもんじゃね~よ!
あいつらは約束を守る奴らじゃない! いいな美沙!


————————— 昼休み


パクパク、、、パクパク、、、あ~美味しい。。。
お母さんの手弁当って最高だわ~

いつも同じ感じのお弁当だけど、だ~い好き、、、
卵焼きめちゃ美味しいし、
あっ、これ昨日のコロッケだわ!
ポテトサラダも、、、残り物だけど最高~

と、その時です。

缶コーヒーが、
バタバタッと走って私の処にやって来ました。

おい、美沙、大変だ!

パクパクパクパク、、、あ~美味しい~

何をのんきに弁当なんて食ってるんだよ!
大変だぞ! めちゃ大変!

一体、何なの?
お弁当の邪魔しないで、、、
私、お弁当を食べに学校に来てるんだからね!

お前さ~ 今大変なことになってるんだぞ?
とんでもね~ことに!

だから、なにが?

なにがって、、、
あのな~ 今朝の美香とお前との中間テストタイマンの事が
掲示板に張り出されてんだ!

・・・

「中間テストタイマン」
美沙vs美香、
バカと秀才の対決!ってな!

・・・

それをみ~んなが面白がって見てんだぞ~
ど~せ、あいつらの仕業に違いないが、

一体、ど~するんだよ!

ふ~ん、、、そ~なんだ いいじゃん。
タダで宣伝してくれてんでしょう、、、助かるわ!

はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ?

お前、やっぱアホか~?
お前が負けると分かってて広めてんだぞ!
やつらの汚ね~やり方だ!
とことんお前に恥をかかせようって美香の魂胆だ!

マサキ君!
美香ちゃんはそんな小細工はしない!
やってるのは子分たちよ。
それに私は負けない!

う! (缶コーヒー)

私はマサキ君の五千円を取り戻し、
あいつらが、あなたに手出ししないようにするのっ!

・・・・

美沙、お前、どっからそんな自信が出てくるんだよ!
それとも、やけっぱちか~?

・・・・

パクパクパクパク、、、ごくごく、、、むしゃむしゃ

あ~ 美味しい~ 私、お弁当食べてる時って最高に幸せ!

パクパク、、、モグモグ、、、パクパク

美沙~ お前~ テストは気力だけじゃ点取れないぞ!
数学36点のお前がどんなにして、
あの秀才に勝てるって言うんだよ~

マサキ君!

なんだよ!

私、36点の前は、9点で赤点だった!

ウッソーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!
こっわ~

お前な~
俺の知らない何かの恐ろしい感染症にかかってるとか、
現状認識欠乏症とか強度楽天症とか、何か
恐ろしい脳の病気を患ってんのか~?

それとも、単なるバカ?
俺って、
どんなにしてお前を守ってやればいいのか将来が真っ暗だ!

・・・

缶コーヒーが私をジロジロと見つめています。

う~む、、、分からん?
でもさ、今朝、俺が逃げろって言うのに、わざわざ来てくれてさ
俺の前に体を張って立ちはだかってくれたよな、お前!
その結果、美香に腹を殴られてさ、
俺的には嬉しかったけどさ、
でも腹、痛かっただろう!

う、うん 全然痛くなかった! 気持ちよかった!

は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~あ~?
お前、体もバカなん?

 

校内では美香ちゃんと私の中間テストタイマンの話で
持ちっきりです。

クラスのみんなが私の顔をチラチラと見ています。
色んな処で何人かが寄ってコソコソと話をしています。
廊下を歩いてても、お手洗いですれ違っても、
自販機でも、、、、み~んな面白がって
私を見ているようです。

たった1日の内に、
瞬く間に私たちの中間テストタイマンの話は
学校中に広がって行きました。

「中間テストタイマン」
美沙vs美香、
バカと秀才の対決!

放課後、
缶コーヒーが念のために私を家まで送ると言ってくれましたが、
私は断りました。

美香ちゃんを信じたからです。

私は一人で、
靴置き場から校舎へ出て自転車置き場に向かいました。
自転車置き場までは少し距離があります。

私が歩いていると前方に1人の少女が立っていました。
スラリとした美しい少女です。
美香ちゃんです。
私は気を殺して無にして歩きました。
美香ちゃんは強い気を発しています。きっとわざとです。
すでに何かを私に感じているのかもしれません。
悟られるわけにはいきません。

美香ちゃん、信じてるからね!
あなたは私の大切な親友だもん。

美香ちゃんが歩いて来ます。
私もそのまま歩き続けます。
もう少しですれ違います。

3m

もう少しで、、、

1m

真横です。

すれ違いました。

1m後ろ、

3m後ろです。

5m後ろです。

その時です。

美沙、待ちな!

私は美香ちゃんの方にゆっくりと振り返りました。

美香ちゃんが、じ~っと私の目を見つめています。
私はうつむき気味に美香ちゃんを見ました。

・・・

頑張りな! じゃ~な、、、、(美香)

そ~言って美香ちゃんは離れて行きました。

悟られたのか?
私の何かを確かめようとしているのか?
高2の向こうの世界の私でも
今の美香ちゃんの気にはぞっとする程でした。
向こう側の美香ちゃんもすっごいけど、こちらでの
美香ちゃんは、その数倍かも知れないと思いました。

今朝の自転車置き場でもそ~でした。
私を殴ろうとした男と美香ちゃんとの距離は5m。
その距離を一瞬にして移動し、
しかも男を3m投げ飛ばしたのです。

・・・・

想像以上の技を持っているに違いないわ!
どんな技を使うんだろう?
あれは合気道の技だわ!

やはり合気道流空手なんでしょうか。

私は、足を止めて空を見上げました。
一体、美香ちゃんと私はど~なるのだろう、、?

う!

まさか、、、イヤ、 間違いない

見られている!

しかも3階屋上からだわ!
気を殺して私の背を見つめている。

私は、そのまま歩いて自転車置き場に向かいました。
歩いていると、後ろから缶コーヒーが走ってやって来ました。

美沙、やっぱり家まで送ってやるよ。
心配なんだ! お前が!

・・・

缶コーヒーは私を守ろうと必死です。
きっと缶コーヒーは私の事が好きだから守りたいんだと思います。
向こうでムシ子が好きだったように、
こちらでは今の私が好きなんでしょう。
その思いは分かっています。

私たち2人は一緒に自転車置き場に向かいました。

自転車置き場には、
美香ちゃんの子分たちが5~6人たむろしています。
まるで私たちを待っていたかのようです。

私を見てニヤニヤと笑っています。
異様な空気です。

いいか美沙!
何かあったらお前は逃げろ!
俺が何とか引き留めておく、いいな!

・・・

でも、特に何もなく私たち2人は学校を離れることが出来ました。
美香ちゃんの指示なんでしょう。そ~思いました。

もしあそこで、子分の誰かが私たちに手を出せば、
出しゃばった真似をしたとして、美香ちゃんが許さない!
だから指一本も出せない。
美香ちゃんの怖さは並大抵のものではないようです。

 

私たちは下校の道を並んで自転車を走らせました。
土手道を風を切って走ります。

私は道の少し広くなっている処で自転車を停めました。

ど~したんだ急に?(缶コーヒー)
少し休んでいかない?
あ~ いいけどさ、、、
マサキ君、少し話をしようよ!

私たちは土手の坂に並んで座りました。
地面にはタンポポが咲いています。
私はそのタンポポを1つ採って、

これ、あげる

そ~言って缶コーヒーに差し出しました。

・・・

缶コーヒーは、何故か照れくさそうな素振りです。モジモジ

・・・

いらないの、じゃあ捨てちゃおっと!
そ~言ってタンポポを坂の下に投げようとしました。

と、その時です。

私の手を缶コーヒーが急に掴みました。

待て!

一瞬二人の手が重なり合って、タンポポが空に向かって静止しました。
缶コーヒーの手の温もりが伝わってきます。
あ~ あったか~い、、、

・・・

もらう!

そ~ よかった!

・・・

缶コーヒーはポケットからハンカチを取り出そうとしましたが、
ありません。キョロキョロ

これでしょう。ブルーのハンカチ!
洗ったから返すわね。はい!

缶コーヒーはハンカチを受け取って、
タンポポを丁寧にハンカチに二つ折にして
照れ臭そうにポケットに入れました。

・・・ し~ん

私は、小さい声でクスクスっと笑いました。

土手の下の河原からちっちゃい子供の声が聞こえます。
無邪気な声で追っかけごっこをしています。

ね~ マサキ君!
なぜ私にそんなに親切にしてくれるの?

・・・ し~ん (モジモジ、、、缶コーヒー)

・・・

マサキ君の事、もっと知りたいわ。
何でもいいから教えてくれない?

え? 俺の事?

・・・
そ~ 私、マサキ君のこと何も知らないもん。
そ~だな~、、
俺はお前と同じで、あまり勉強が好きじゃない。
それと、お前ほどは大食いじゃないかな、、、
この学校には1年生の途中で転校して来たんだ。

え! マサキ君って転校生だったの?
ふ~ん、、、転校生か~

転校した時、お前の横の席だった。
お前は俺の方を1度も振り向いたことはなかったがな。
2年生になっても偶然にお前の横の席だ。
でもさ、
お前が俺の名前をフルネームで知っててくれて嬉しかったよ。

ふ~ん なんで~?

・・・ し~ん

・・・

私ね、遠いい世界から来ちゃった~

は~?

・・・

マサキ君、
美香ちゃんが私の事を裏切り女って言ってたでしょう。
あれって、ど~いう意味なんだろうね?

う~む、、、?
俺は転校生だから詳しくは知らね~
でも以前に連れから聞いた話があるにはあるけどさ~

でもさ、お前に話していいのかどうか、、、、?

・・・・ し~ん

え? どんなこと?

・・・

ね~ 話してよ お願いだから、、、

聞かせて!

マサキ君、お願い!

・・・

じゃあ話すけどさ、
俺の話、正確かどうかわかんないぞ、
股聞きなんだから、
そのつもりで聞いてくれ、いいな!

うん!

私は缶コーヒーの話に集中しました。何かがある!
そ~思いました。

小5の時、美香とお前は仲良しだった。
幼馴染だもんな。

以前、3年程前の事らしんだが、
当時この土手の下の川で監視付きで、
この川の一部の水辺の浅瀬に水遊び場があったらしいよ。
その浅瀬からお前たち2人は本流に流されて溺れたらしんだ。

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!

私は目を見開いて缶コーヒーの顔を見つめました!

私、そんな記憶はないわ!
そう!お前は覚えていない。
でも美香は覚えているらしくてさ、
それもお前にやられたって勘違いしている。

何ですってーーーーーーーーーーーえ!
私が美香ちゃんを溺れさせたって言うのーーーーーーーお!
私がそんなひどい事を美香ちゃんにしたの~~~~~~お!

だから美香ちゃんが私を憎んでるってわけ!

そ、そんな~

それが原因で美香ちゃんがあんなになっちゃったって事!

私は、その場に立ち上がって、両手で顔を覆い思いっきり泣きました。
涙が後から後から溢れ出し止まりません。

美沙、だから何かの間違いだってば!
気にするな!
そんな訳ないだろう!

だって、現に、美香ちゃんは私を憎んでるし、
あんなに淋しそうな1人ぽっちになってるじゃん!

私が、美香ちゃんに、そんなひどい事をしたからよ!

まあ待てよ! 美沙! 何かの間違いだって!

私はひどい裏切り女なんだ!

私のせいだったんだ、私が悪いんだわ! 私が原因なんだ!

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!

こんなにつらい思いをしたのは生まれて初めての事です。
向こうの世界でもありません。
あまりのショックで気が狂ってしまいそうです。

私なんだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
私が美香ちゃんを、あんな風にしちゃったんだ!

わ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!
体から力がす~っと抜けて行きます。

私はそのまま気を失ってしまいました。

 

・・・

・・・

気が付くと私の部屋のベッドでした。
お父さんとお母さんが心配そうに私の顔を覗き込んでいます。

美沙、美沙! 大丈夫か?
お父さんの声が聞こえるかい? お母さんもいるぞ!
もう安心しなさい! 大丈夫だ!
お母さんの優しい温かい手が私のほっぺをなでなでしてくれています。
お父さんの手が私の髪をなでてくれます。
私は大声で泣きました。
涙をいっぱい出しました。

目の中にある涙を全~部出し切りました。

・・・

そして、起き上がり階段を降りて食卓に座りました。
両親も慌てて食卓に着きました。

私は両親に向かって背を真っすぐに正して聞きました。

お父さん、お母さん、
私が小5の時、あの川で何があったのか教えて!
本当の事を知りたいの。
お願い!

・・・ 両親は顔を見合わせました。

お父さんが言いました。

マサキ君がお前を背負って家まで運んでくれたんだ。
お前の自転車も後で届けてくれた。
彼から、おおよその事は聞いたよ。
本当に申し訳ないと、何度も頭を下げていたよ。

川で溺れた件んをそのまま話す。
山口さんの娘さんの美香ちゃんと美沙は、
お前たちが11歳の7月28日に2人であの川へ遊びに行ったんだ。
2人はとっても仲良しだったからね。

川の浅瀬に設けられた遊び場はちっちゃい子でも安全なように
作られていたし、監視委員の大人も3~4人居ててね、
以前から夏場の良い遊び場になってたんだ。

だから、
山口さんのご両親と電話でお話をしてね、
お父さんもお母さんも、お前を1人で出してしまったんだ。
本当に申し訳なかったと思ってる。

ここからは監視員から聞いた話をそのまま話すから。いいね!

その時、
浅瀬の遊び場と本流の境になっている石垣が有ったんだが、
美香ちゃんは、その上に登って歩いていたそうだ。

美沙もその石垣を登ろうとしていたらしい。

だから、それを見つけた近くの監視員が
大きな声で2人に注意をしたらしい。

すると、それが裏目に出たのか、美香ちゃんはビックリして
本流に落ちて流され始めたらしい。
お前は、美香ちゃんの後を追って石垣をそのまま登って行き
直ぐに後を追って本流に飛び込んだ。

きっと美香ちゃんを助けようとしたんだね。

でも結局は2人伴、川の水に流されて溺れてしまった。
監視員は直ぐに浮き輪をお前たちの方へ投げたらしい。
でもその浮き輪はお前の近くに落ちたものの、
美香ちゃんはそのまま流されてしまったんだよ。

結局、美香ちゃんは下流まで流されたものの、
監視員によって助けられた。
でも、一時は心肺停止状態でね、危なかった。
監視員の河辺での人工呼吸と救急車で病院に運ばれての処置が
速くて命は助かったんだよ。
美沙だって意識を失ってて救急車で病院に運ばれたんだが、
幸い大量の水を飲んだ位で済んだんだ。
でも美沙のその時の記憶は消えていた。
余程、辛いことだったんだろうね!

だから、
お父さんも、お母さんも、美沙のそんな辛い記憶を
あえて、引き出す必要もないと考えてね、
健一を入れた家族みんなで相談した結果
お前には、話さないことにしたんだ。だが、
隠したわけではないんだよ。
話さないと行けない時は話そうと思ってたんだ。
今がきっと、その時なんだろうね。

私、美香ちゃんを助けようとしたの?

そ~だ!

美沙は、勇気と愛のある子だ!

この話は山口さんのご両親もよ~く理解している。
何人もの監視員が見てたからね。間違いない!
今回の、
この話は、マサキ君にも大筋は話してある。
その方がいいと思ってね!
彼は礼儀正しいとても好感の持てる青年だ。

彼に学校の事について少し聞いたが、何も話してくれなかった。
美沙、何か学校で困ったことがあるんじゃないのか?

お父さん、お母さん
話してくれてありがとう。

私ね!

何だ? 何でも話してみろ!

私ね、お腹がペコペコ! ご飯まだなの?

父と母が、ギューっと私を抱きしめました。

・・・

夢と幻想の森