私は、ふと、気が付くと畑の中に居ました。
顔の横には緑の茎がいっぱい並んでいます。
両手を地面に広げて、しばらくそのまま
じ~っとしていたのですが、
何がど~なっているのか分かりませんでした。

え?

ここは、どこ?

私、どうしちゃったの?
なんでこんなところに寝っ転がっているの?
そのままの状態で少し首を上げて、あたりを
キョロキョロと見回すと、
背の高いピンクと白と赤の花が見えます。

花だ! コスモス!

コスモスだわ!

私は今コスモス畑に寝っ転がっているんだわ。
でも、なんで?

いつからなんだろう?

空は晴れてて、風もなく気持ちがいい。

草っぽい匂いに混じって、コスモスの花の香りが
辺り一面に漂っています。

あっ、赤いランドセル!

私の足元にランドセルが転がって中から筆筒が半分
覗いています。

ランドセルの名札には私の名前があり、
大きな文字で、5年C組と書いています。

私はしばらく、うつ伏せのままで考えていました。
顔の横の地面にパーに広げた手は、とてもちっちゃい可愛い手です。

私の手

・・・ ?

5年C組

・・・ そっか~

私は小学生なんだ!
小学校5年生!

ランドセルや服装も、、、特にブラウスが子どもそのものです。

・・・

・・・

うそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!

そんな、バカな!

私は高2だーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

なんで私が小学生なの!
ちょっと待ってよ! そんなはず絶対ない!
冗談じゃないないわ!
あり得ない!
何かの間違いよ! 悪い夢、見てるんだわ!
これは、夢なんだわ!

あれ?

なんだこれ?

お腹の処に硬い何かがある。
体を少しずらすと、
石がごろっと転がってお腹の横に出て来ました。
え、、え、 え、、これって何?

石だ! 大きな石だ。。。。
しかも、先が尖ってる。

・・・? え?

私は、
この石の上にず~っと、うつ伏せで寝っ転がってたわけ?
しかも、お腹に石の先を食い込ませた状態で、、、、

・・・ ?

なんで?

私、なにしてるの?
私、私、ここでなにしてたんだろう。。。

・・・ ?

わかんない!

頭がすごい勢いでパニクッて来ます。
落ち着くのよ!
こんな時には、とにかく冷静に考えなくっちゃ、、、
そうよ、
冷静になるのよ! 冷静に!
でも、冷静になんてなれない!

なにこれ、私ど~しちゃったの?

一体、何が起こっているの?
いくら考えても意識は16歳の私です。
私は高2で2学期の期末テストに向けて勉強していた。
そんな私がなんで小5の子供になっちゃったの?
勉強し過ぎて子どもになったとか、、、
あり得ない!

・・・ じゃあ、どうして?

わかんない! どうしよう?

・・・

私は、とにかく、
最初の元の状態に戻ってみました。
大きな尖った石をお腹に戻し、両手を地面につけて
その状態でじ~っと考えました。
体重で石の先がお腹の中に食い込んでくるのが分かります。
お腹の中で腸がぬるぬるっと動きました。
おへその奥の方で、鼓動を感じます。
この状態でどれくらい時間が経ったんだろう?

・・・

自分が、ど~なったのか考えました。

私は高2の女子高生だよね!
16歳だよね!
こんなチビじゃあないよね!

小学生なんかじゃないよね!

あれ? お腹が、、、、私のお腹、、、

え? 、、、、、、な、なに、、、なんで?

ど~しちゃったの、、、、?

お腹が、、、、お腹の中が変!

お腹の、おへその処に尖った石の先が食い込んでるのに。。。
痛くない! なんで?

あ、、、、、あ、、、、、、いい、、、

気持ちが、、、、、気持ちがいい、、、
とってもいいわ、、、、

あああああああ、、、、、、、、我慢できない!

お腹の奥の方が、じ~んと熱くなって来る。。。

あああ、、、、、ぁ~ これって、これって、、、

いい、、、、私は?

・・・ ?

あっ! そうだ!

私は、お腹に感じるんだった!
それが、私の誰にも話せない秘密なんだ!

私は、中2の時から学校の帰りに自転車で寄り道をして、
あの森の中を、
お腹責めを求めて1人で冒険してきたんだった。
高校生になってもそうだった。

そうだわ、
だからこんなにお腹が気持ちいいんだ!

私はお腹に感じるんだ。
自分のお腹の内臓にとっても敏感な女の子だった。
それも極端に感じる。。。。。
これって私の性癖なんだわ。
確か、小5の頃から自分の性癖に芽生え始めたんだった。。。
そ~だ。。。。。私は内臓フェチなんだ。

ふ~ん、、、、でも、、、どうなってるの?

なんで? なんで私が小学生なの?
私は高2のはずなのに、、、、、やっぱしこれって夢?

周囲の様子を見てみよう。
私は、膝と両手で立ち上がり周囲を見渡しました。

キョロキョロ、、、、、、、

辺り一面がコスモスの花でいっぱいです。
わ~あ、、、すっごい!

なんてキレイなコスモスの花なの、、、、、
コスモスの花に囲まれています。
私の背よりはるかに高いコスモスもいっぱいあります。

あ、あれは?

離れたところに3階建ての白っぽい学校の校舎が見えます。
あれは私が通ってる小学校だ!
間違いないわ。

てことは、私は今下校の途中ってこと? そ~なの?

きっとそうだ! だってランドセルがあるし、
服だって、時刻も朝じゃないわ。

じゃあなんで、こんなところにいるのだろう?

コスモスのお花畑、、、、

・・・? お花畑、、、、?  お花?

・・・

そ~だ、、、わかった~ 私はお花が好きなんだ!

私の趣味は、
色んなお花を見たり、母のお手伝いでお花を作るのが
大好きなんだ!

だから、私はここに居る。

一瞬、母と私が一緒に花の苗床を作っている姿が
頭の中に浮かんできました。
お母さん。。。。。。

私は、一生懸命に頭をまとめました。

その結果は、
私は小学校5年生の女の子で、
授業が終わって、下校の途中でコスモスの花が
めちゃキレイだったので畑に1人で入って来た。
きっとお花を摘んで帰ろうと思ったんだわ。
ところが、畑の中で足元を取られてこけちゃって、
運悪く石でお腹を打ち付けて気絶してしまった。
でも、私のお腹は普通ではないので、全然痛くなんてなくって、
逆に、とっても気持ちよかったのかも。  以上。

うん、うん、つじつまが合ってる。

・・・?

う!
でも、肝心なことが抜けてる!
じゃあ、なんで私は小学5年生なの?
小5って確か10歳位だったわよね。

私は今、本当は高2の16歳だ!

じゃあ、、なんで? ど~して? ど~なってるの?

足元を見ると、どう見ても小学生としか思えない
白色のスニーカーを履いています。ダサいガキの靴じゃん。

・・・ はっ!

体を触ってみます。

はあぁ~ 小っちゃすぎる。

このちっこい体はどう見ても子どもじゃん!
一瞬、私は、ハッとして、慌てて両手で胸を掴みました。

あっ! ない!

胸が、、、、ない! 胸が板じゃん!

うそーーーーーーーーーーーーーーーーーお!

私の胸が~ 、、、、、、、ない! ちょっとだけあるか。。。

そんな~ 、、、、 ブラもしてない!

私は大慌てでランドセルを開き中の物を取り出しました。
何冊かのカラフルな本が出て来ました。

幼稚な絵の表紙に、
新しい算数と書いています。

 

算数の教科書です。
私は恐る恐る教科書をゆっくりと開いてみました。
大きな文字で書かれた問題がありました。

問題1
1m30円のリボンがあります。1.2m買いました。
代金は、いくらですか。

問題2
1mの重さが50 gのパイプがあります。
このパイプ1 .8mの重さは何gになりますか。

うわ~ 嘘でしょう!
こ、これって、少数の掛け算じゃん!

慌てて、その横にある国語の教科書を開きます。

ていねい語
「です」「ます」「ございます」などのことばを使います。
尊敬語
「いらっしゃる」「おっしゃる」などのことばを使います。

わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
助けてーーーーーーーーーーーーーーーえ!

悪夢だ! なんなのよ、これっ!

私が今、学校で習ってる内容ってこれなのーーーーお!
大変だ~!
覚めて! 覚めて! 早く! 悪夢から覚めろーーーーー!
覚めません。。
いくら復習だと言っても、こ、こんなのあんまりだわ!
今の私は高2で猛勉強しているのよ!
成績は気にしてなかったけど、
でも結果は学年でトップクラスまでアップしちゃってる。
私に一体何をさせたいの?
この内容をもう一度勉強しろっていうの?

あ! なんだろう?
ランドセルの奥に折りたたんだ紙が見えます。
これは、、、テストの採点用紙だわ!
ゆっくりと、開いてみます。

はあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

うそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!

大きな赤い色で、64点

算数です。  まさか、 まさか、

こんな問題で64点なんて、私ってバカなんだ!
それに、、この汚い文字!
消しゴムで消しまくって、答案用紙が真っ黒じゃん。
かなりあがいた跡、最悪だわ!

おい! 小5の私! しっかりしろ!

でも小5の時の私って、こ~だったかもしれない、、、
イヤ、これが現実なんだ!
もう随分と昔で忘れちゃったな~

きっとお母さんやお父さんは、このテストの結果を見て
ガッカリするだろうな~
すっごい叱られるのかもしれない、、、?

その時、
私はもう一度、頭を整理するために考えました。

なぜ高2の私が小学生5年になったのか?

・・・ わかりません

全然わからない!
私の体が突然変異で急にちっちゃくなったとか。
そんなバカなこと起こるはずない!
体は小さくなったけど、精神年齢は16だわ。。。
矛盾している。

・・・ なぜ?
・・・ なんで?
・・・ どうして?

考えるだけムダか~
いくら考えても結論は出そうにありません!

これからど~しよう?
とりあえずは、
見かけは小5でチビだけど、中身は高2だから、
高2の私でやって行くしかないか~。
いくら頑張っても、中身まで小2になれっこない。
この状況でしばらくは、
その場に応じて臨機応変に対応していこう。

よし!

私は教科書をランドセルに戻して腕を通して、
しっかりと背負いました。
ここにいつまで居ても仕方ないわ。 よし! 行こう!
1本のコスモスを摘んで畑から道に出ていきました。
私がランドセルを背負って下校してるなんて。あ~ 最悪!

私の家は? え~っと、、、、

そ~だ、あっちだ! 帰~えろっと!

土手道を歩いていると、
後ろから子供の声ががやがやと聞こえて来ます。
5人の女の子が手を振って走っています。
あ~ 今の私は、あれと同じなんだ!

うるさいガキども!

早く行け!

そのガキたちが近づいてきます。
そして私の処で止まって、

ねえ、ねえ、今日返してもらった算数どうだった~?

え! 算数?

そうそう、算数のテストの点数だよ!
どうだった? 良かったの? ね、ね、
教えてよ! 点数! 何点だった!

なんだこのチビども私のクラスメイトか、、、
でも、私の点数を聞いてどうするっていうんだろう?

はは~ こいつら、ひょっとして私の点数を知って
自信をつけようってこんたんか~
近頃のガキどもは、あさましい、、、

点数教え合いこしようよ!
絶体に言わないからさ! 私たちの秘密事! ね、ね、
ね~ 何点だった?

私は素直に言いました。

64点だったよ!

5人は一瞬、顔を見合わせると、
明らかに嬉しそうな表情になって言いました。

私ね76点、私は78点、82点、80点、76点

やったーー! これからも私たちは親友だネ!

くそ~ なんてガキどもだ~

じゃあ、これから塾があるから、私たち行くね!
そう言って走っていきました。。。
その中の一人が立ち止まって後ろを振り向いて
私に言いました。
あなたは、可愛いから点数気にしなくっていいもんね!

はあ~?

なによ、あのガキども! 感じ悪る~
なにが親友なんだ! 優越感にしたってるだけじゃん。
それに、
塾いってて、あの点数、めちゃめちゃ最悪じゃん!
こら~ガキども!
一体どんな勉強をしてるんだ!
きっと家に帰って親に私の点数を言って、
弁解しようと思ってるだ! あいつら、ぶっ飛ばす!

でも、現実には私は64点だし、、、、、人のことは言えないか~

そ~か、思い出したわ、私は小学校の時は
コミ症で、あまり友達も多くなかったわ。
勉強もしなかったし、点数だって悪かった!
今思えば、勉強嫌いというよりは、
その必要性を考えたことがなかったのかもしれない。

それに、
成績がいい子はみんなから嫌われたり、陰口を言われたり、
先生から褒められてたりで、そんなのイヤだなと
思っていたのかもしれません。
まあ、それは私の言い訳に過ぎません。

私的には、
どちらかというと1人で居る方が気が楽で
安心できたし、1人で母のガーデニングを見たり、
一緒になって花や自然と接していたかったみたいです。

そんな私が中学生になって、あの森を知って
そこで、お腹責めを求めて一人でさ迷うようになった。。。
あの森は、
そんな私を優しく包み込んでくれたように思います。

でも、
今は未だ、あの森の存在すら知らない小学生です。

昔の自分の体の中に16歳の高2の私が入ってるなんて。
なぜ? わからない? だから、考えない!

帰~ろっと!

——————————————–

ただいまーーーーーーーーあ!

ここは、間違いなく私の家です。
庭の様子はかなり違っていましたが、間違いありません。

おかえりーーーーーーーーーーーい!

母の声が台所の奥から聞こえました。
私は早く母に会いたくて仕方ありませんでした。
ランドセルを廊下に置いて直ぐに
台所の母の処に走っていきました。

おかあさーーーーーーーーん!

母が夕飯の支度をしながら、
私に振り向いて、にっこりと笑いました。

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーえ!

うそ! なんてキレイなの! お母さん!
(そう思いました。)

おかあさん!

私はお母さんに走って抱きついてしまいました。
6年前の私の母がそこに居ます。
高2の時のお母さんもキレイだけど、
もっと若くて綺麗な母が居ました。
スラリとした母は背が高く、
ちっこい私の体を上から抱きしめてくれました。
母のとてもいい匂いがしました。

ど~したの? 学校で何かあったの?

母の優しい声に、私は首を横に振ってこたえました。

おかあさん!
お母さんて、最高に綺麗だよ!
本当だよ! あのね! おかあさん!
いつもありがとう!

私は、ピンクのコスモスの花を母に渡しました。

母は一瞬、私の顔を見つめて、そして優しい声で言いました。

ありがとう!

早く、部屋に戻って着替えなさい!

あのね、おかあさん! 算数のテスト64点だった。
ごめんなさい!
あ~ 叱られちゃう。。。

・・・

そう! よく頑張ったんだネ!

前は56点だったから、随分がんばったじゃない!

えーーーーーーーーえ! 56点! うそ!

私、私、今の私って本当にバカじゃん!
私はつい独り言をつぶやいてしまいました。

母が言います。
ううん! そんなことないわよ!
あなたはとても賢い子だよ、いい!
どんな点数だって頑張ったんだったら、それでいいじゃない。
おかあさんはね、あなたが、元気に育ってくれればそれでいいの。。。
そして優しい人になってくれればいいの! わかった!

そうだ、これが私の母だ。
間違いないわ、母はず~っと私にそ~言ってきた。

私は、しっかりと母に抱きついて、
おかあさん、ありがとう!
ありがとう、、、、少し涙が滲んで来ました。

うがいと手洗いするのよ!
はーーーーーーい!

洗面所へ行くと、
私の姿が映っていましたいました。

うっワ!
こ、これが今の私!
当然、良く知っている以前の私の顔です。
でも、現実にその顔を見るとショックでした。
紛れもない、あどけない小学生の顔です。
子どもだわ! 大人じゃない!
勿論、高2も大人じゃないかもしれませんが、鏡の顔は
正しく子ども以外の何者でもありませんでした。
幼過ぎる。

うがいと手洗いを済ませ、
私は2階の自分の部屋に階段を駆け上がりました。
ドアを開けて自分の部屋に入りました。

はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!

なんなのーーーーーーーーーーーーーーーお! これ~

勘弁してよ~

まるで小学生の部屋じゃん!
そ~です。私は小学生なんだから。。。
それは分かっているはずでした。
ですが、
幼稚、幼稚、幼稚のかたまりが溢れてる部屋です。
子ども用勉強机、可愛すぎるベッド、本棚には絵本がいっぱい。
ガキ好みの、ぬいぐるみがベッドの上に5つ、
は~ぁ! アンパンマン! これって幼稚園じゃない!
下手な絵がべたべたと貼ってて、カーテンもピンクのイチゴ模様、
だめだこりゃあ、、、!
5年生でも幼稚すぎじゃん。

私の部屋、こんなんだったかな~あ?
私は今、高2、でも6年前の自分の部屋がそこありました。
仕方ないっか!
ここでは小5だから!
でもなんで私が小5なの?
なぜ? わからない? だから、考えない!
我慢しなくっちゃね!

私、これからど~なるんだろう?
ここまで来るともう逃げれない、これは夢なんかじゃない!
現実なんだわ!
だとすると、今この小5の私のことを早く思い出さなくっちゃ、、、

う~ 例えば、私の人間関係とか、、、友達や先生、、、

でも、一体どうすれば、、、、
そ~言えば、
今日のあのガキどもは、私と同じクラスのC組だったわ!
そうだ! アルバムを見よう!
以前の行事なんかも分かるし、それを見ればきっと思い出す。

忘れている名前なんかも全て覚えればいいんだ!

よし! 集中力だ! 私の得意技! go!

・・・ 約2時間半 バッチリです。

な~るほど、、、、うん、うん、、

大体は思い出してきたわ! よ~し!

その時、ご飯ですよーーーーーーお!

母の声が下から聞こえました。

あ~ お腹空いちゃったな~
今日のご飯は何だろう?

階段を駆け足で降りていきます。

あ~ この匂いオムライスだーーーー!
母のオムライスは特別に美味しい。
やったーーーあ!

お母さん! 私お腹空きすぎて、もう気絶しそう!
そ~言えば、今日コスモス畑で気絶してました。!
でも、それを話すとヤバイに決まってるし、
混乱させちゃうし心配させるだけだ。
だから、私の中身が高2って言うのは話さないでおこう!
そう決めました。

あ~ お腹 空いちゃったよ~

父が、テーブルに座って新聞を広げています。

お父さん! おかえりなさ~い!
以前と変わらない格好の父がそこに居ます。
でも、6年前の父の顔ってどんなんだろう。
やっぱし、違っているのだろうか?
思い出させそうで、実際にはピンと来ません。

お父さん! 早く私の方を向いてよ!
(心の中でそう思いました。)

すると、
父が、新聞の向こうから、
お前!算数のテスト64点だったって!
よく頑張ったな~ お母さんから聞いたよ!

はあ~ また、それ? 64点 とほほ、、、

私は、その時、2人に言いました。
真面目に言いました。

あの、あの、、、

おとうさん! おかあさん! ごめんなさい!
私、成績悪くって!本当にごめんなさい!
真剣な姿勢で、そ~言ってテーブルに座ったまま、
うつむきました。すると、

なんだか急に、し~んとした空気が流れました。

おとうさんが、急に新聞をバサバサと折りたたんで

・・・

お前! 学校で何かあったのか?
お父さんとお母さんに話しなさい!
お父さんとお母さんは、いつもお前の味方なんだから。
一体、ど~しったんだ? 言ってごらん?

・・・

私は、ゆっくりと顔を上げて、お父さんの顔を見つめました。

お父さん!

なんだ? さあ言ってごらん!
父が真剣に私を見つめています。
母が心配そうにこちらを見ているのが分かりました。

お父さん!

うん!

お父さんて格好いいね!
めちゃめちゃ格好いいじゃん!
お母さんも超キレイだし、お父さんも素敵だし、
お父さん! 聞かせて!

なにを?
お母さんにどんな言葉でプロポーズしたの?
私ね! 絶体知りたい! 教えてよ。

は~?

お父さんは、私の顔をじ~っと見つめてたのですが、
お母さんと目を合わせました。
お母さんが優しく微笑んでいます。

わっ! は、は、は、は、は、は、は、は、は、は

大きな声でお父さんが笑いだしました。

ちょっと、こっちへ来い! そう言って、
お父さんは私の体を抱っこしてくれました。
お父さんの温もりと匂いがしました。

みんなで手を合わせて、
いただきまーーーーす。

あ~

おいしーーーーーーーーーーーーーい!

そ~言って私は、大きな口でパクパクと食べました。

お母さん、このオムライスと貝柱のアヒージョ最高だわ!
めちゃめちゃ美味しい。
お父さん! サラダもっと食べなきゃ!
野菜はね、1日350g食べないとだめなの!

野菜を食べないと、腸内環境を悪化させて、
大腸がんになりやすくなっちゃうのよ。
また、ビタミンもいっぱい含んでるし、
特に野菜にはβカロテンがいっぱいあって抗酸化作用があるから、
体内に溜まった活性酸素を除去してくれるの。

病気の約90%が活性酸素が原因だって言われちゃってるから、
しっかり食べてね。

で、お父さん! いつまでも健康でいてね!

はい! どうぞ!

・・・

・・・

お父さんが、ぽか~んと口を開けて私の顔を見つめています。

・・・ お前、、、良く知ってるな~
なんで、そんなに良く知ってるんだ~、、、、?

え?

あ~ しまった!

小5が知ってるわけないか~

あ、あ、 学校で先生が、菊池先生が言ってた!

そっか~ 最近の先生は良いこと教えてるんだな!

わっ! は、は、は、は、は、は、は、、、、、父が大きな声で笑いました。

3人で楽しく食事をしながら、私は言いました。

あのね!
私、これからの5教科のテスト、ぜ~んぶ100点取っちゃうよ!

・・・ !

・・・ お父さんとお母さんは顔を見合わせました。

どうしたの急に、、、(母)

お父さんが言います。
100点を取らなくってもいいんだよ!
お前が元気に育ってくれたらそれだけで100点なんだ!
母と同じ様なことを言っています。

お父さんとお母さんの考えは分かってるよ!
私が元気で優しい人に育って欲しいって思っているんでしょう?
本当にありがとう!
私は、頑張ってそんな人になりたいな~
それにしても、私は幸せだわ!
お父さんとお母さんの子どもで良かった!
生まれて来て良かった!

・・・ お父さんとお母さんは、又、顔を見合わせています。

あのね、実は、今日学校の帰りにね
クラスのお友達と点数見せ合いをしちゃったんだ~
そしたらね、
私の64点が一番悪い点数だった。。。。
めちゃめちゃショックだったんだ~
だからね、
私、決めたの!

これからの5教科ぜ~んぶ100点取っちゃおうって!

・・・

・・・

そ~かあ~ そんなことがあったのか?
でもな、何度も言ってる様に、お父さんとお母さんは
お前が元気に正しく育ってくれたらそれだけでいいんだよ。
100点なんて取らなくてもいいんだ!
いいね! 無理しなくてもいいんだぞ!

はーーーーーーーーーい!

よしよし! いい子だ!

ところで、お前の将来の夢はなんだ?
父が笑いながら私に聞きました。

私の将来の夢?

私はその場に立ち上がって手を胸に当てて大きな声で
言いました。

正義を愛する「セーラムーン」月野うさぎ だーーーーーあ!

・・・ お父さんとお母さんは、又、顔を見合わせました。

わっ! は、は、は、は、は、は、は、、

父は又大きな声で笑いました。
母も口に手を当てて声を出して笑いました。

・・・

お兄ちゃんも居たらみんな揃ってたのにね。
早くお兄ちゃんに会いたいな~あ、、、、

そ~だな、また直ぐに会えるさ、今忙しいみたいだからな!(父)

あ~ お腹いっぱいだわ~

ごちそうさまでしたーーーーーーーーーーあ!

じゃあ私、勉強してくるね!
明日から、毎日テストがあるみたいなの!
お父さんが言います。
悪いな!
お前の友達のように、お前を塾に行かせてやれなくて、すまん!

私は言いました。
お父さん!
まさか、そんなこと気にしてたんだ!

私は塾には行きたくないの!
塾に行く時間がもったいわ。
そんなとこ行かなくっても勉強は出来ちゃう。
勉強は集中力と反復の回数なんだから。

・・・

お! そっか! お父さんもそ~思ってた。

・・・

じゃあ、勉強してきま~す!

・・・

私は、部屋に戻ると直ぐに教科書を広げました。
小5の教科書です。
私にとっては、簡単すぎる内容です。
ですが、
それでもテストでミスしないように何度も何度も繰り返し勉強をしました。
教科書は丸暗記です。
あくまでも小5で習ったやり方で解かないとダメだし、
その意味では高2のやり方は通用しない面があります。

明日はまた、算数のテストです。
一体、菊池先生はどんな問題を出すのだろう?
その問題で、先生の性格が分かるはずだわ。
教科書通りの正道な問題なのか、ひっかけ問題なのか?
その中間なのか?

塾で習ってる児童を前提にしてくるのか?
学力レベルをどこに置いてくるのだろう?
落ちこぼれを突き放すやり方なのか? その逆なのか?
どちらにしても楽しみだわ!

私は、色々思いを巡らせながら、当面の目標である
テストの勉強に集中しました。
深夜12時頃まで勉強をしました。
高2の私ならもっと遅くまで毎日やるのですが、
眠ることにしました。

小さなベットに横になって少しすると、
軽いノックの音がして、ほんの少し部屋のドアが開きました。
ドアの外から、私をそっと見つめています。
私にはそれが分かりました。

母です。

母は、私が勉強をしていることを知ってて、ず~っと
起きていてくれていました。

私は、小さな声で母に言いました。

おやすみなさい。 おかあさん。

よく頑張ったわね。
私の大好きな、セーラムーンちゃん、おやすみ!(母)

——————————–

朝です。

私はランドセルを持って台所に走って行きました。

父が、テーブルに座って新聞を開いています。
母がご飯をついでいます。

おはよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーお!

私は大きな声で元気よく挨拶をしました。

2人が私を同時に見て、ビックリした表情をしています。

父が言います。
ど、ど~したんだ、その髪!

あっ! これね!
昨日言ったでしょう。
私は今日からセーラムーンを目指して頑張っちゃうの!
このツインテールは気持ちの表れってとこかな!

ちょっぴり短めだけどね~

ふ~ん けど、なかなか可愛いじゃないか、な! お母さん!

そうね、とっても似合ってて、可愛いわよ!まるで天使の様だわ!

よかった~ これで頑張れちゃう! ありがとう。

私はご飯を3ハイ食べました。
ごちそうさまでしたーーーーーーーーーーーーーーーーーーあ!
お母さんのご飯て最高に美味しいね!
元気と勇気と優しさのエネルギーがいっぱい詰まってるご飯だわ。

じゃあ、お父さんお母さん!
いってきまーーーーーーーーーーーす。

そう言って走って玄関を飛び出していきました。

夢と幻想の森