高木先生! 見てください! 来ましたよ! あのバス!

来たか! 水城サキ!

今日こそ決着をつけてやる!

あの高慢チキな女の鼻をわかしてやる!
必ずぶっつぶす!

 

高木先生! かなり水城サキを恨んでるんですね。
それって個人的にですか?それとも昨年の試合でですか?

うっ! 高木は一瞬ドキッとした表情で向井を振り返った。

 

キ、決まってるだろう、昨年の試合のことだ! 試合!
向井は高木の表情を詮索するように覗きこみ、
そうなんですかね~え? てっきり個人的なことだとばっかり、、、?

 

何、なにを言うんです!
私は彼女に個人的な恨みなど一切ありませんよ!
変なこと言わないでください。 向井先生! いいですか!

はい! はい!、、、、、、わかりました。
すみません。

 

2年前のこと、高木は社会人ソフトテニスで水城サキと知り合い交際を
申し込んだのだ。
だが、その場でピシャリと断られた経緯がある。

何でも、
高木の言葉が終わらないうちの「イヤです!」の返事だったらしい。

 

又、昨年の秋のソフトテニス地区大会で高木が顧問を務める名門の
日の出丘高校と水城サキ率いる無名の秋日山高校がシングルスの
決勝戦で激突した。

 

思ってもみない無名高校が決勝戦に躍り出たことに皆が驚いたのでした。

しかも、
高木は何とか優勝したものの、名もなき1選手によって優勝が脅かされたのです。
そればかりか自分の高校の優勝より、相手方の高校が大きく評価されたのでした。
それにはプレー終盤に起きた副審のライン判定が疑問視された問題も絡んでいました。

 

カウントが3対3で7試合目、デュース7回でどちらも譲らない白熱の試合展開の中、
野々村真紀がバックで返した高速のボールがネットをはじきサイドライン近くに落ちたのです。
一見、セーフと誰もが思ったのですが、副審はアウトと判定したのです。

 

副審も迷ったのか、一瞬、判定が遅れたのですがアウト判定は変わらず、
高木の日の出丘高校/公古谷奈々の勝利になったのです。
水城先生は強硬に抗議したものの判定は変わらなかったそうです。
周囲の多くの人からセーフ、セーフだとブーイングもあって会場は騒然となったそうです。

 

この判定で両校の勝敗が決まったのは間違いありません。

 

つまり、高木にしてみれば試合に勝ったものの、判定に関わる疑問視の噂があまりにも大き過ぎて、
試合に負けたも同然で、内心大きく自尊心を傷つけられ憤慨してきたのです。
それは高木だけでなく昨年選手としてプレーした公古谷奈々も同様でした。

 

高木にしてみれば、水城サキに交際を拒否され、試合に勝っても負けたかのように思われるという
ダブルのストレスでこの1年間頭を過ごしてきたのです。

ですから、今年の試合で決着をつける! 水城サキをぶっ潰ぶす!
これが高木の1年間の全てでした。

 

今年の大会で真紀と理恵がダブルスに出場することを知って
高木も古谷奈々も当然のごとくダブルス出場を決めて来たのです。
何としても決着をつけるためにです。

高木先生! それにしても水城サキってキレイですね!
高木先生が惚れるわけだ!

 

やめてください向井先生! それは関係ないですから!

上がって来いよ! 勝ち進んで決勝まで来い! 昨年の屈辱を絶体に晴らす!
決勝で思い知らせてやる!水城サキ 高慢チキ女め!

 
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真紀先輩! すごい大勢の選手団がいるよ!あれってどこの高校ですか?
あ~、、、あれは日の出丘高校よ!
ふ~ん、、うちの高校は12名、あそこって何十人いるのかな~?

 
試合が開始され、
どんどんプレーが進んでいきます、、、、、

真紀/理恵(組)は勝ち進んでいきます。

それも、
すごい試合が展開しています。
ストレート勝ちもあります。

期待通りなのか、予想外なのか、、、、

 

秋日山高校の
野々村真紀/葉山理恵(組)がダブルスで奮闘してます。
どんどん勝ち進んでいきます。

 

一方、日の出丘高校の公古谷奈々/水戸静香(組)もその強さには目をみはるものがあります。
全く他を寄せ付けない強さです。

 

真紀先輩!  予選! 通過したわ! 信じられない! わーーあ!
ばんざーーーーい! きゃは~ 嬉しい!

さあ! 理恵いくよ! 次の試合、、、、はい! 真紀先輩!

よし! また勝った! その調子! 次の試合!

 

勝ち進んでいく真紀と理恵はもう誰にも止められません!
応援団もドンドン増えていきます。

真紀と理恵(組)がこれほどにスムースに勝ち進むとは
誰も予想しなかったことです。
真紀は昨年のヒロインですから、多くの人がその強さを知っています。

 

ですが、
理恵はこの大会で初めてのデビューです。
理恵の存在を知るのは同高校のソフトテニス部員のみで、母校の応援団ですらほとんど知りません。
そんな中で、理恵は本当によく頑張っています。

 

ですが、理恵としては真紀先輩にかなりフォローされていることを
知っています。

真紀先輩!ごめんなさい! 私の弱みが色んな所で出てて
先輩にかなり負担がかかってしまって!

 

私のせいでポイントも落としてるし。
あっ! またアウト! 先輩! ゴメン!
よし! 今度は!

セーフ! セーフ! いいよ理恵!その調子!
、、、、、、、やったー! また勝った、、、!

 

試合がどんどん流れていきます。
真紀も理恵も必死でボールを追います。

・・・・・・

・・・・・・

え! 今の試合が準決勝戦だったの! と言うことは、、、、

ウソ! 次の試合が決勝戦!
信じられない!
私が地区大会で決勝戦まで進んだ!
まるで夢のようだわ!私が決勝戦なんて!
信じられない!

高木が望む通りの対戦が展開しようとしています。

 

日の出丘高校  公古谷奈々/水戸静香(組)
秋日山高校   野々村真紀/葉山理恵(組)

 

観客がコートの周りに集まってきます。応援団もいっぱいです。
観客の男子生徒が話しています。
おいおい、大変な試合になりそうだぞ!
1年越しの因縁の対戦が本当に実現するぞ!
もうすぐ始まるぞ!
何だかすげーーえ雰囲気じゃん! ど~なるんだ! 一体!

 

公古谷奈々と野々村真紀の決着試合だ! こりゃすげーーーーーえ!

高木は向井に向かって拳を握りしめて言いました。
来たか! 水城サキ! 待ってたぞ! ぶっつぶす!
この1年間どんなにこの時を待っていたことか!

 

高木先生! あまり興奮してはダメですよ!
リラックスして下さい。高木先生、、、!リラックス!

 

いよいよ因縁の試合が始まります。

ネット際でのあいさつで古谷奈々は真紀先輩に言いました。

ぶっつぶす!
高木が思っている言葉です。

理恵はその言葉の迫力にドキっ!としました。

 

プレー開始です。

 

いよいよ因縁の両校が激突します。
周りは異常とも思えるスゴイ空気が流れています。
コートは多くの人の目に見えない張り詰めた緊張感で包まれています。

 

マッチは7回で先に4ゲーム先取した方が勝ちです。

 

真紀先輩!私、怖い!
理恵は急にそれまで経験のないような緊張感を感じています。
何故か全身が震えて心臓がドキドキして止まらないのです。
先輩! どうしよう! 私! 動けそうにない!

 

数えきれない程の観客がコートに立つ理恵達を注目しています。
多くの視線が集中しています。かすかに声も聞こえてきます。
理恵のちょっとした動きも何もかもが見られています。

 

理恵! よく聞いて!

 

これが決勝戦なの!

 

昨年、私も全く同じだったのよ!
緊張して鼓動が高鳴って足がガタガタ震えていたわ!

 

あなただけじゃあない! 相手だってそうなのよ!
実は私も今もそう。
理恵は驚いて真紀の顔を見直しました。
先輩が!先輩が震えてる?先輩もドキドキしている?
ええ、そうよ! 真紀は軽くうなずきました。

 

理恵!水城先生の言葉を思い出して!真紀先輩がいいました。

 

「勝たなくてもいいです! 負けないようにして下さい!」
「ソフトテニスを思いっ切り楽しみましょう!」

 
・・・・・・

 
・・・・・・
 

あっ!
あの矛盾してて分からなかった言葉!
あの時の水城先生の言葉はこの時のために!
コート横の水城先生に目をやると、何も言わず首でうなずいてくれました。

 
先生! 水城先生!

 
理恵もうなずいて先生に返事を返しました。
真紀先輩も同じように先生にうなずき返しました。

 

さ~あ! 試合開始です!

 

真紀と理恵はハンドタッチで軽やかに走って前後に分かれました。

 
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